異世界の村で始める獣人とのハーレム生活

りょう

第55話世界を変える一歩

「俺もまだ怪我が治ってないから、すぐにとはいかないけど協力する。だから一人で行こうとするな」

「で、でも私は」

「それにここで一人でモカを向かわせたら、雫に怒られる」

「シズクが……。私のせいで怪我だってしたのにどうして」

「誰もお前のせいだって思ってないからだよ」

 それは当たり前の事だった。だってモカは何も悪い事をしていないし、彼女はその責任を全て自分のせいにした。そんな彼女を誰が責めよう。むしろ俺達はそんな彼女を守ってやりたい。

「何でお前を責める必要があるんだよ。モカにはモカの理由があってこの島に来た。そもそも島に来たのって、誰かに助けてもらいたかったから来たんじゃないのか?」

「それは……」

「フォルナがそうしようとしたように、俺達もお前を守る。だから一人で戦おうとするな」

「カエデぇ」

 大粒の涙を流すモカ。ずっとここまで我慢してきたのだろう。俺そんな彼女を優しく抱き寄せた。

「助けてください……。私一人で戦い続けるのもう限界です……助けてください」

「ああ」

「う、うわぁぁん」

 こうして俺は、モカの為に彼女の国の奪還する作戦を考える事になったのだった。

 ■□■□■□
 その日の夜、いつもの集会場に全員を集めて、その事を話した。

「楓、それ本当なの?」

「何だ雫は反対か?」

「ううん。モカの為なら私も頑張るつもりだけど、戦うのは嫌だな」

「べつに奪還するすると言っても、戦うわけじゃないぞ。むしろ戦わないで済む方法を探す予定だ」

「私は戦う事にはべつに反対しないが、相手の数が底知れないよな」

「その辺りも調べる必要はありそうだな」

 それぞれが意見を出す。今も言ったけど、俺はそもそも戦うつもりはない。誰も傷つけないやり方で一つの国を取り戻そうと思っている。
 それが果たして可能なのか別としてだ。

「ねえカエデ、モカ様の国を奪還するのはいいけど、私達その国の事あまり知らないよね」

「そういえばそうだな。その辺はモカ教えてくれるか?」

「勿論ですよ。まずは皆さんに語らなければならない事がありますよね。そもそもどうして私の国がこうなってしまったのかを」

「確か国の体制に不満を持った国民が、反乱を起こしたんだっけ?」

「大まかにはそうです。そもそも私達の国ラビリンズ王国は、人と獣人との溝を埋める政策を取ろうとしていました。しかしその政策を良しとしない者達がいて、それが大きく膨らんだ結果反乱軍を生み出しました」

「モカは人が嫌いではなかったのか?」

「私は人も獣人も同じ生き物だと思っているんです。だからカエデやシズクとこうして接する事に何も抵抗を感じないんです」

「そういえば、初めて会った時から普通に接していたな。俺の事王子様とか言っていたし」

「そ、それは恥ずかしいのでやめてください。とにかく私の国は人と獣人の壁をなくそうとしていたのです。でもカエデや皆さんも知っての通り、未だにその溝が埋まっていない国の方が多いんです」

「何でそこまで区別する必要があるのか俺には分からないけどな」

「私もカエデやシズクちゃんが好きです。でもカエデも実際にあの遺跡で経験しているんじゃないですか。どこまで獣人が人を嫌っているのか」

「それは分かっているけど」

「他から見れば私達の方が異常に近いんです」

「異常……か」

 何でそこまで区別する必要なんてないのに。俺の母さんや父さんも人と獣人の壁を越えた。不慮の事故が起きてしまったとはいえ、一度でも分かりあおうとした。

「ラビリンズ王国を取り戻す鍵になるのは、その壁を壊すことだろうな。戦わないで尚且つ交渉するとなると、その壁が邪魔になってくる」

「でもそれって簡単な話ではないですよぉ」

「それは分かっている。でも俺の最終的な目的は、人と獣人の和睦。これはその一歩になるんだよ」

「和睦か。カエデもまた随分大きな夢を掲げているな」

「でも私はその意見に賛成だよポチ。だって私達はこうしてカエデと接してきて、何もおかしな事なんて起きなかったでしょう。むしろ私達は仲良くなれた。それはシズクちゃんも同等よ」

「それは分かっているよ。私もカエデやシズクが悪い人間でないのは知っている。だけど他は同じだと言えるか?」

「それはそうだけど……」

 ポチの言う事に一理あった。俺もそれは否定できないし、第一俺はこの世界の人間について詳しくは知らない。

「知らなければこれから知っていけばいいな。これはモカの為だけではなく、この世界を変えるための革命みたいなものだ。その第一段階として、ラビリンズ王国へ向かうぞ」

「カエデ、ありがとうございます」

「礼を言うのは全てが終わってからだな。皆も協力してほしいけどいいか?」

「ここまで話されて協力しないわけないでしょ? それにこれが一歩になってくれるなら、私達ポカルミ村は協力するわよ」

「カエデは元から私達が協力すると分かってて、話したんだろ? だったら当然協力するよ」

「私も頑張りますぅ」

「私もモカの為に頑張る。協力するねモカ、カエデ」

「皆ありがとう」

 こうして俺達は世界を変える大きな一歩を踏み出す事になったのであった。

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