異世界の村で始める獣人とのハーレム生活
第48話十五年分の愛言葉 前編
『私を……殺してほしいの』
その言葉を聞いた時、俺は何を言いたいのか理解できなかった。ただ、ここまで聞いた話をまとめれば俺のしなければならない事は自然と見えてくる。
「それしか方法が……ないのか?」
『もうそれしかないの。そうしないと、私はあなたどころか……この島さえも壊してしまう事になる』
「でも俺にはそんな事を……」
できない。そんな事を俺じゃなくてもできない。自分の実の親をこの手で殺すことなんて、そんな事……。
「お願い……。私の理性がここに残っている内に、私があなたを殺してしまう前に……』
「できるわけないだろ!」
 『楓……お願い』
「ずっと、ずっと会いたかった。誰も母さんの事を話そうとしてくれなかったから、本当はどこかで生きているとさえ思っていたんだ! まさかこんな形で会えるなんて思っていなかったけど、それが叶ったのに……それなのにどうして……」
どうしてこんな事を俺がしなければならない。こんな酷な話、俺は受け止める事なんて……。
『あなたには辛い思いをさせてしまった……でも今その呪縛から解放してあげる……。さあ、そこの剣を取って』
「何も……何も知らないくせに……。俺がこの世界に来て、色々な事を知ってどれだけ苦しんだたと思っているんだよ。ここで母さんを殺したら、俺はまた……」
『あなたなら大丈夫……。何たってあの人と私の子供なんだから。さあ』
「そんなに俺は強くなんか」
『それにあなたには沢山の仲間がいる。支えてくれる人が。その人を守りたいんでしょ』
「ルチリア達を……守る?」
『あなたにはその力がある。だから』
「ちくしょう……。ちくしょう……」
涙で霞む視界の中から何とか剣を見つけて、俺はそれを手に取る。母さんはただ俺を見つめているだけで、来るその時を待っている。もう本当は理性を保っていられるのもギリギリなのだろう。
(本当はワガママを通したい。こんな結末、嫌だ)
でもそれ以外の選択肢が今の俺にはない。そしてそれを母さんも望んでいる。ルチリア達を守るためにも、俺はこの剣で母さんを。
『ごめんね楓……。ありがとう』
「ちくしょおお!」
そこから何があったのか思い出せない。でも気がついた時には、俺の目の前に母さんが倒れていた。
「う、うっ、うわぁぁぁ」
俺はこの日、初めて自分という人間が嫌になった。
■□■□■□
果たしてその選択が正しかったのかは俺には分からない。ただ、今を生きるルチリア達を守るためには、それ以外の答えはなかったのかもしれない。
でも確実に言えるのが、俺がこの手で母さんを殺してしまったという紛れもない事実。
「私は……カエデにはずっとここにいてほしいけど」
「俺は人殺しなんだよ? 理由はともあれこんな俺が、この島に、いや、この世界にいちゃいけないんだ……」
「そんな事ないよ。私だけじゃなくて、ポチやミルフィーナもカエデにこの場所にいてほしい」
「それはこの先起きてしまうかもしれない事を、俺が知っていてもか?」
「え?」
だから今ルチリアの側にいることすら怖くなった。人殺しだから、という理由もある。だが、それ以上に俺はある事が怖かった。
それはいつか、ルチリア達も同じような未来を迎えてしまうのではないかという恐怖。
今までそんな事考えもしなかったけど、母さんから聞いた話が事実なら、いづれ起きてしまうのではないかというそれに、ただ怖くなった。
「もしかしてカエデ、私達の秘密知っちゃったの?」
「母さんから聞いた。そして母さんもそれにかかってしまっていたから、あの場所に居続けてしまったんだよ」
「そっか。そうだったんだ」
「だから俺は、またいつその時が来てしまうかって考えると、怖くてこの島にもいられない。俺はルチリア達をこの手で殺すなんて、そんな事できない」
「カエデ……」
早くこの世界から出たかった。何とかしてこの世界から出る方法を見つけて、日常を取り戻したかった。カグヤさんの頼みは……今度説明すればきっと納得してくれると思う。
「私達は絶対にカエデをそんな目に合わせたりしないよ」
「何でそんな事を……言えるんだよ」
「約束する」
「だからどうして」
「絶対に約束する」
俺の言葉を無視して一歩ずつルチリアは近づいてくる。
「おい、答えろっ……」
そして三度目の言葉を言おうとした時、ふと彼女の顔が俺の目の前へやってきた。唇には温かい何かが触れる。
「っ!」
(これは……)
一瞬何が起きたのか理解できなかった。だけどそれをようやく理解した時には、ルチリアの顔が離れていた。
「ごめんねカエデ……。私気づいちゃったの」
「気づいたって、何が?」
「十五年以上前にカエデに出会ってから、今日この日までずっと、私は」
ルチリアはその次の言葉を話す前にしばらく間を置く。俺はあえて何も言わずに、彼女の次の言葉を待っていた。
「私は……カエデの事が好きだったの。それは今もずっと変わってない」
「え?」
そして彼女の口から紡がれた言葉は、十五年分の想いが込められた愛言葉だった。
その言葉を聞いた時、俺は何を言いたいのか理解できなかった。ただ、ここまで聞いた話をまとめれば俺のしなければならない事は自然と見えてくる。
「それしか方法が……ないのか?」
『もうそれしかないの。そうしないと、私はあなたどころか……この島さえも壊してしまう事になる』
「でも俺にはそんな事を……」
できない。そんな事を俺じゃなくてもできない。自分の実の親をこの手で殺すことなんて、そんな事……。
「お願い……。私の理性がここに残っている内に、私があなたを殺してしまう前に……』
「できるわけないだろ!」
 『楓……お願い』
「ずっと、ずっと会いたかった。誰も母さんの事を話そうとしてくれなかったから、本当はどこかで生きているとさえ思っていたんだ! まさかこんな形で会えるなんて思っていなかったけど、それが叶ったのに……それなのにどうして……」
どうしてこんな事を俺がしなければならない。こんな酷な話、俺は受け止める事なんて……。
『あなたには辛い思いをさせてしまった……でも今その呪縛から解放してあげる……。さあ、そこの剣を取って』
「何も……何も知らないくせに……。俺がこの世界に来て、色々な事を知ってどれだけ苦しんだたと思っているんだよ。ここで母さんを殺したら、俺はまた……」
『あなたなら大丈夫……。何たってあの人と私の子供なんだから。さあ』
「そんなに俺は強くなんか」
『それにあなたには沢山の仲間がいる。支えてくれる人が。その人を守りたいんでしょ』
「ルチリア達を……守る?」
『あなたにはその力がある。だから』
「ちくしょう……。ちくしょう……」
涙で霞む視界の中から何とか剣を見つけて、俺はそれを手に取る。母さんはただ俺を見つめているだけで、来るその時を待っている。もう本当は理性を保っていられるのもギリギリなのだろう。
(本当はワガママを通したい。こんな結末、嫌だ)
でもそれ以外の選択肢が今の俺にはない。そしてそれを母さんも望んでいる。ルチリア達を守るためにも、俺はこの剣で母さんを。
『ごめんね楓……。ありがとう』
「ちくしょおお!」
そこから何があったのか思い出せない。でも気がついた時には、俺の目の前に母さんが倒れていた。
「う、うっ、うわぁぁぁ」
俺はこの日、初めて自分という人間が嫌になった。
■□■□■□
果たしてその選択が正しかったのかは俺には分からない。ただ、今を生きるルチリア達を守るためには、それ以外の答えはなかったのかもしれない。
でも確実に言えるのが、俺がこの手で母さんを殺してしまったという紛れもない事実。
「私は……カエデにはずっとここにいてほしいけど」
「俺は人殺しなんだよ? 理由はともあれこんな俺が、この島に、いや、この世界にいちゃいけないんだ……」
「そんな事ないよ。私だけじゃなくて、ポチやミルフィーナもカエデにこの場所にいてほしい」
「それはこの先起きてしまうかもしれない事を、俺が知っていてもか?」
「え?」
だから今ルチリアの側にいることすら怖くなった。人殺しだから、という理由もある。だが、それ以上に俺はある事が怖かった。
それはいつか、ルチリア達も同じような未来を迎えてしまうのではないかという恐怖。
今までそんな事考えもしなかったけど、母さんから聞いた話が事実なら、いづれ起きてしまうのではないかというそれに、ただ怖くなった。
「もしかしてカエデ、私達の秘密知っちゃったの?」
「母さんから聞いた。そして母さんもそれにかかってしまっていたから、あの場所に居続けてしまったんだよ」
「そっか。そうだったんだ」
「だから俺は、またいつその時が来てしまうかって考えると、怖くてこの島にもいられない。俺はルチリア達をこの手で殺すなんて、そんな事できない」
「カエデ……」
早くこの世界から出たかった。何とかしてこの世界から出る方法を見つけて、日常を取り戻したかった。カグヤさんの頼みは……今度説明すればきっと納得してくれると思う。
「私達は絶対にカエデをそんな目に合わせたりしないよ」
「何でそんな事を……言えるんだよ」
「約束する」
「だからどうして」
「絶対に約束する」
俺の言葉を無視して一歩ずつルチリアは近づいてくる。
「おい、答えろっ……」
そして三度目の言葉を言おうとした時、ふと彼女の顔が俺の目の前へやってきた。唇には温かい何かが触れる。
「っ!」
(これは……)
一瞬何が起きたのか理解できなかった。だけどそれをようやく理解した時には、ルチリアの顔が離れていた。
「ごめんねカエデ……。私気づいちゃったの」
「気づいたって、何が?」
「十五年以上前にカエデに出会ってから、今日この日までずっと、私は」
ルチリアはその次の言葉を話す前にしばらく間を置く。俺はあえて何も言わずに、彼女の次の言葉を待っていた。
「私は……カエデの事が好きだったの。それは今もずっと変わってない」
「え?」
そして彼女の口から紡がれた言葉は、十五年分の想いが込められた愛言葉だった。
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