異世界の村で始める獣人とのハーレム生活
第1話始まりはクリスマス
今年こそは彼女を作る!
そう決めた二十歳の春。
だけど彼女ができずに迎えた聖夜。
俺、山村楓は雪が降りしきる中を、一人寂しく歩いていた。
(うう、心が寂しい)
ルックスや頭の良さとかは、いたって普通の大学生である俺はこれといった特徴がなく、何かに秀でているわけでもない。今年も一人寂しく迎える聖夜は、今までのより何倍も悲しく思えた。
あれだけ気合を入れていた二十歳の春。それから冬まで時間はあったはずなのに、まだ時間があると先延ばしにしすぎた。それがこの有り様だ。
(折角の二十回目の聖夜なんだなら、面白いことの一つや二つ、起きたりしないかな。例えば女の子に沢山囲まれた生活とか)
いわゆるそれはハーレムというものなのだが、勿論そんなの起きてくれないと俺は分かっていた。きっと最近ライトノベルを読み過ぎて、それが影響したのだろう。
(二十歳の大学生、三次元より二次元、なんてそんなの悲しいよな)
もしそんな事を起こせるとしたら、
『お主は平凡を嫌うのか?』
こんな風に突然天の声が聞こえてきて、
「ああ嫌いだよ。普通すぎて何も起きない日々なんて、退屈ばかりだよ」
『ではそんなお主に、素敵なプレゼントを送ろうかのう』
突然そんな事を言い出す謎の人物。
「プレゼント? てか、誰だあんた」
『妾は世界と世界を繋ぐ者。お主のその願い、叶えてしんぜよう』
そう、一言で言えば神様くらいしかあり得ない。
「何だよその意味が分からない通り名。そんなのまずこの世に存在しないだろう」
『存在しているじゃろ、妾が』
「まさか本当に神様とでも言いたいのか?」
『神様……とはちょっと違うのう。まあその辺りは、お主の願いさえ叶えば分かることじゃ』
「願いって、俺はまだ何も……うわっ」
更に説明を求めようとする前に歩いていた道が、突如真っ白に染まる。別に雪が降ってきたとか、そんな事ではなく、全てが白に染まったのだ。
『さあ楽しんでくるがよい、新たなる住人よ。妾はいつでもお主を見守っているぞ』
   最後にそんな言葉が聞こえたきがする。
(見守っているって……)
   異世界?に行っても度々声が聞こえてくるのか?
(まあとにかく)
   どうやら俺は、神様らしき声によって異世界とやらに飛ばされる事になるらしい。
   これもサンタのプレゼント?
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
視界を覆っていた真っ白な何かが納まったのは、それから数分後の事だった。戻ってきた視界に映り込んでいたのは、先程までの普通の道ではなく、木々が生い茂る森の中だった。
「な、何だここはぁぁ」
グルルゥゥ
いきなりの事で何が何だか分からず叫んでいると、後ろから何やら怪しげな音が……。
「へ?」
恐る恐る後ろを振り向くと、
「え? え? ね、ネコ?」
体長三メートルにも及ぶ巨大な猫と思わしき何かが、俺の命を狙っていた。
「いや、もう猫でもなんでもないだろこれ!」
とツッコミを入れながらも、命の危険を感じた俺は咄嗟に逃げ出した。まずいぞこれは、絶対にいけないやつだ。
「計られた。完全に計られた。何が希望を叶えようだ。これのどこが……」
(何だよ世界を繋ぐものって)
あの天の声は神様でも何でもなかった。俺はあの声にまんまに騙されてしまったのだ。
「神様もあったもんじゃねえな、おい」
木々をなぎ倒しながら迫りくる巨大な猫。それからひたすら逃げる二十歳の大学生。普通の人が知っているあの愛くるしいようなものなら、良かったのにこれは完全に獣だ。俺の命を狙う獣だ。
「あ」
必死に逃げていたせいか、足元を見ておらず俺はつまずいて転んでしまう。
それを獣は見逃さず、一歩一歩俺に近づいてきて、その大きな口を開く。もう逃げられない。
(ああ、終わった俺の人生)
父さん、母さん。ごめん、俺死ぬわ。
「だぁぁぁ!」
死を覚悟した直後、誰かの声とともに頭上から何かが降ってくる。あれは、人?
降ってきたそれは、片手に槍を持っていて、それをあの巨大な獣の頭に刺した。
脳天に直撃を食らった獣(猫?)は、そのまま地面に倒れ伏した。どうやら一撃であれを倒してしまったらしい。
「森がざわついているから、何かあったのかと思ったけど、まだこんな生き物が生きているなんてね」
そんな事を呟きながら槍を抜く女性。声からして、間違いないと判断したのだが、俺はある事に気がついた。
「君、大丈夫? こんな危ないところを一人で歩いたりなんかして。というかもしかして人間の男?」
ヒョっと獣から降りると、彼女は俺を見つけるなり優しく話しかけてきてくれた。
「いや、えっと。俺が男なのはあっているけど。そ、その……」
「ん? 私の顔に何かついているの?」
「そ、そうじゃなくて、それはコスプレか何か?」
「こすぷれ? 何それ」
俺の発言に不審に思う彼女。俺が何故先程からおかしな事を言っているのかというと、彼女はどう見ても人間ではないからだ。大きな猫耳と、尻尾。そして毛皮。一応服らしきものは着ているが、それらは明らかに人間のものではなかった。しかもコスプレを知らないってことは、あれは本物……なのかもしれない。
でも言葉が通じている辺りは、人なのだろうか。
「もしかしてこの耳の事かな? これは獣人族である証なの。つまり私は普通の人間ではないって事だからね……って、そんな事も知らないの?」
彼女が何者なのかを認識しようとしていると、猫耳の少女は話を続ける。
「知らないも何も、まずここはどこ?」
「どこも何も、ここはユグナラ島よ」
「ユグラナ島?」
答えに更に疑問で俺は返す。さっきから日本では決して聞かない言葉ばかりが彼女の口から出ているので、疑問しか浮かんでこない。というか外国の島国みたいな名前だな。
「あなた本当に大丈夫?」
「いたって正常のつもりだけど」
「まあいっか。とりあえずここは危ないから、一気に戻るわよ」
そう言って彼女は、俺の腕を掴むと、
「戻るって、どうや……おわぁぁ」
飛んだ。五メートルくらい飛んだところで、近くの木の一番上に着陸するなり、すぐに次の木へと飛び移る。
「どう? 空の旅の気分は」
「こんな空の旅、あってたまるか! うわぁぁ。落ちる、落ちるって」
軽い絶叫マシーンを体験している俺は、ひたすら絶叫し続ける。それに比べてこの猫耳の少女は、そんなの全く気にもせずに空の散歩を楽しんでいる。
「大丈夫。落ちたりしないから」
「勘弁してくれぇぇ」
何だよこれ、なんなんだよ。なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ。ていうかこれのどこが俺の願いなんだよ。空を飛ぶこと? そんな訳がない。
「なあ、どこへ向かうんだよ。あとまだ名前聞いてないんだけどぉ」
劇的な空中散歩の中で、とりあえず聞けそうなことからどんどん聞いてみることにする。ただ、恐怖との戦いなので、まともな会話はできない。
「そういえば自己紹介まだだった。私はルチリア。この島にある、村の村長をやっているの」
「そ、村長?」
それはまあ、随分お偉い方だ事。
「そういうあなたは?」
「俺は山村楓。カエデでいい。女みたいな名前だけど、れっきとした男だからな」
「カエデね。で、カエデ君はどんな理由でこの島に?」
「分からない。気づいたらここにいたんだよぉ」
「気づいたらって、もしかしてカエデってこの世界の人間じゃないとか?」
「そんな感じだと思う。だからこんなの慣れてないし、普通に歩きたいから降ろしてくれぇ」
「それはできないよ。これの方が質問しやすいし、それに私異世界の人間に憧れているんだ。だから話し聞かせて」
「別にいいけど」
「やったー」
あまりの嬉しさに俺の手を放すルチリア。皆さんお気付きだろうか? 今我々は空を飛んでいることを。そのタイミングで、手なんか離したら……。
「あ」
「あ、じゃねえよ。馬鹿ぁぁぁ」
勿論落ちるわけで。
そう決めた二十歳の春。
だけど彼女ができずに迎えた聖夜。
俺、山村楓は雪が降りしきる中を、一人寂しく歩いていた。
(うう、心が寂しい)
ルックスや頭の良さとかは、いたって普通の大学生である俺はこれといった特徴がなく、何かに秀でているわけでもない。今年も一人寂しく迎える聖夜は、今までのより何倍も悲しく思えた。
あれだけ気合を入れていた二十歳の春。それから冬まで時間はあったはずなのに、まだ時間があると先延ばしにしすぎた。それがこの有り様だ。
(折角の二十回目の聖夜なんだなら、面白いことの一つや二つ、起きたりしないかな。例えば女の子に沢山囲まれた生活とか)
いわゆるそれはハーレムというものなのだが、勿論そんなの起きてくれないと俺は分かっていた。きっと最近ライトノベルを読み過ぎて、それが影響したのだろう。
(二十歳の大学生、三次元より二次元、なんてそんなの悲しいよな)
もしそんな事を起こせるとしたら、
『お主は平凡を嫌うのか?』
こんな風に突然天の声が聞こえてきて、
「ああ嫌いだよ。普通すぎて何も起きない日々なんて、退屈ばかりだよ」
『ではそんなお主に、素敵なプレゼントを送ろうかのう』
突然そんな事を言い出す謎の人物。
「プレゼント? てか、誰だあんた」
『妾は世界と世界を繋ぐ者。お主のその願い、叶えてしんぜよう』
そう、一言で言えば神様くらいしかあり得ない。
「何だよその意味が分からない通り名。そんなのまずこの世に存在しないだろう」
『存在しているじゃろ、妾が』
「まさか本当に神様とでも言いたいのか?」
『神様……とはちょっと違うのう。まあその辺りは、お主の願いさえ叶えば分かることじゃ』
「願いって、俺はまだ何も……うわっ」
更に説明を求めようとする前に歩いていた道が、突如真っ白に染まる。別に雪が降ってきたとか、そんな事ではなく、全てが白に染まったのだ。
『さあ楽しんでくるがよい、新たなる住人よ。妾はいつでもお主を見守っているぞ』
   最後にそんな言葉が聞こえたきがする。
(見守っているって……)
   異世界?に行っても度々声が聞こえてくるのか?
(まあとにかく)
   どうやら俺は、神様らしき声によって異世界とやらに飛ばされる事になるらしい。
   これもサンタのプレゼント?
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
視界を覆っていた真っ白な何かが納まったのは、それから数分後の事だった。戻ってきた視界に映り込んでいたのは、先程までの普通の道ではなく、木々が生い茂る森の中だった。
「な、何だここはぁぁ」
グルルゥゥ
いきなりの事で何が何だか分からず叫んでいると、後ろから何やら怪しげな音が……。
「へ?」
恐る恐る後ろを振り向くと、
「え? え? ね、ネコ?」
体長三メートルにも及ぶ巨大な猫と思わしき何かが、俺の命を狙っていた。
「いや、もう猫でもなんでもないだろこれ!」
とツッコミを入れながらも、命の危険を感じた俺は咄嗟に逃げ出した。まずいぞこれは、絶対にいけないやつだ。
「計られた。完全に計られた。何が希望を叶えようだ。これのどこが……」
(何だよ世界を繋ぐものって)
あの天の声は神様でも何でもなかった。俺はあの声にまんまに騙されてしまったのだ。
「神様もあったもんじゃねえな、おい」
木々をなぎ倒しながら迫りくる巨大な猫。それからひたすら逃げる二十歳の大学生。普通の人が知っているあの愛くるしいようなものなら、良かったのにこれは完全に獣だ。俺の命を狙う獣だ。
「あ」
必死に逃げていたせいか、足元を見ておらず俺はつまずいて転んでしまう。
それを獣は見逃さず、一歩一歩俺に近づいてきて、その大きな口を開く。もう逃げられない。
(ああ、終わった俺の人生)
父さん、母さん。ごめん、俺死ぬわ。
「だぁぁぁ!」
死を覚悟した直後、誰かの声とともに頭上から何かが降ってくる。あれは、人?
降ってきたそれは、片手に槍を持っていて、それをあの巨大な獣の頭に刺した。
脳天に直撃を食らった獣(猫?)は、そのまま地面に倒れ伏した。どうやら一撃であれを倒してしまったらしい。
「森がざわついているから、何かあったのかと思ったけど、まだこんな生き物が生きているなんてね」
そんな事を呟きながら槍を抜く女性。声からして、間違いないと判断したのだが、俺はある事に気がついた。
「君、大丈夫? こんな危ないところを一人で歩いたりなんかして。というかもしかして人間の男?」
ヒョっと獣から降りると、彼女は俺を見つけるなり優しく話しかけてきてくれた。
「いや、えっと。俺が男なのはあっているけど。そ、その……」
「ん? 私の顔に何かついているの?」
「そ、そうじゃなくて、それはコスプレか何か?」
「こすぷれ? 何それ」
俺の発言に不審に思う彼女。俺が何故先程からおかしな事を言っているのかというと、彼女はどう見ても人間ではないからだ。大きな猫耳と、尻尾。そして毛皮。一応服らしきものは着ているが、それらは明らかに人間のものではなかった。しかもコスプレを知らないってことは、あれは本物……なのかもしれない。
でも言葉が通じている辺りは、人なのだろうか。
「もしかしてこの耳の事かな? これは獣人族である証なの。つまり私は普通の人間ではないって事だからね……って、そんな事も知らないの?」
彼女が何者なのかを認識しようとしていると、猫耳の少女は話を続ける。
「知らないも何も、まずここはどこ?」
「どこも何も、ここはユグナラ島よ」
「ユグラナ島?」
答えに更に疑問で俺は返す。さっきから日本では決して聞かない言葉ばかりが彼女の口から出ているので、疑問しか浮かんでこない。というか外国の島国みたいな名前だな。
「あなた本当に大丈夫?」
「いたって正常のつもりだけど」
「まあいっか。とりあえずここは危ないから、一気に戻るわよ」
そう言って彼女は、俺の腕を掴むと、
「戻るって、どうや……おわぁぁ」
飛んだ。五メートルくらい飛んだところで、近くの木の一番上に着陸するなり、すぐに次の木へと飛び移る。
「どう? 空の旅の気分は」
「こんな空の旅、あってたまるか! うわぁぁ。落ちる、落ちるって」
軽い絶叫マシーンを体験している俺は、ひたすら絶叫し続ける。それに比べてこの猫耳の少女は、そんなの全く気にもせずに空の散歩を楽しんでいる。
「大丈夫。落ちたりしないから」
「勘弁してくれぇぇ」
何だよこれ、なんなんだよ。なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ。ていうかこれのどこが俺の願いなんだよ。空を飛ぶこと? そんな訳がない。
「なあ、どこへ向かうんだよ。あとまだ名前聞いてないんだけどぉ」
劇的な空中散歩の中で、とりあえず聞けそうなことからどんどん聞いてみることにする。ただ、恐怖との戦いなので、まともな会話はできない。
「そういえば自己紹介まだだった。私はルチリア。この島にある、村の村長をやっているの」
「そ、村長?」
それはまあ、随分お偉い方だ事。
「そういうあなたは?」
「俺は山村楓。カエデでいい。女みたいな名前だけど、れっきとした男だからな」
「カエデね。で、カエデ君はどんな理由でこの島に?」
「分からない。気づいたらここにいたんだよぉ」
「気づいたらって、もしかしてカエデってこの世界の人間じゃないとか?」
「そんな感じだと思う。だからこんなの慣れてないし、普通に歩きたいから降ろしてくれぇ」
「それはできないよ。これの方が質問しやすいし、それに私異世界の人間に憧れているんだ。だから話し聞かせて」
「別にいいけど」
「やったー」
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