異世界の村で始める獣人とのハーレム生活

りょう

第11話空腹の朝 ブラックな昼時

「おいポチ、本当にここで釣れるのか?」

「ここは絶好のポイントなんだよ。釣れることはまず間違いないぜ」

「そう言いながら、もう一時間が経つんだけどな」

 釣りの為に起こされてから一時間。一向に魚はヒットせず、早起きだった影響もあり俺の眠気は限界に来ていた。

「なあ、もう諦めようぜ。俺帰って寝たいんだけど」

「何を言っているんだ。昨日私の訓練をサボっておいて」

「それは本当に悪かったって。でも、あの家にいたらいつ死ぬか分からなかったんだぞ」

「そこは何とかするのが、カエデに任されたことだろ? 自分の命くらい守れないと、この先大変だぞ」

「言いたいことは分かるけどさ〜」

 眠い目をこすりながらポチと話をする。何でどいつもこいつも、若干俺を見放しているんだよ。

(ルチリアはああ言っていたけど、他の二人は果たしてどうなんだろ)

 今はポチと二人きりなわけだし、聞くには丁度いいかもしれない。

「なあポチ、一つ聞いてもいいか?」

「私に? エッチい事以外ならなんでも聞いていいぞ」

「エッチい事ってなんだよ。ちょっと昨日ルチリアとも話したんだけどさ、お前達獣人にとって俺みたいな普通の人間は敵なんだろ?」

「何を聞くと思ったら、そんなことか。確かにそうだな。この島の住人のほとんどが人間を憎んでいる。それは私達にも同じく言えることだよ」

「やっぱりそうなのか? ルチリアと同じ答えなのか?」

「ルチリアだけでなくても、この島の住人百人に聞いたら同じ答えが返ってくる。ここはそういう島だからな」

(この質問はやっぱり野暮だったか)

 ルチリアと同じ答えが返ってくるだろうなとは予想できていた。となると、頼れるのはカグヤくらいか。

「でもさ何で人間が嫌いなのに、俺の事は拒絶しなかったんだ?」

「またおかしな事聞くな。私に拒絶されたかったか? マゾなのか?」

「いや、そうじゃなくて」

 この世界にもマゾって言葉、存在してんだ。

「確かにルチリアがカエデを連れて来た時は、流石に気が狂ったのかと思ったよ。でもお前は、この世界の人間と違う何かがあるって感じたんだ」

「じゃあ俺が異世界から来ているのも?」

「ルチリアから勿論説明はあったけど、それよりも前に気づいてはいたよ。匂いがこの世界の人間の匂いじゃなかったし」

「匂い?」

「ほら、私達鼻がいいからさ」

「ああ、なるほど」

 まさに獣の嗅覚というやつか。

「とにかくカエデだけは違う感じがしたんだよ」

「なるほどな」

 思わず納得したしてしまったけど、別にいいよな? あとはこれをどうやって導いていくか、それだけだ。この好意が敵意に変わらないように、今後も気をつけないと。

「ところでさカエデ、竿が引いているけど」

「うお、マジか」

 話に集中していて忘れていたけど、俺達今釣りの最中だった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「それで、今日釣れたのはその一匹だけって事ね」

『不甲斐ない結果ですいませんでした!』

 結局今日の釣りの成果は、さっき引っかかった小魚一匹のみ。俺とポチは帰ってくるなり、ルチリアから説教されるのであった。

「罰として二人とも、朝食抜きね」

「そんな〜、そもそも俺は被害者なんだぞ。朝から何も聞かされずに、釣りに出されたんだから、俺は無実だろ」

「なっ、元はと言えばカエデがサボったりするから悪いんだろ」

「何をー」

「やめなさい二人とも、みっともない!」

『すいません』

 こうして散々な朝を迎えた俺は、昼時になるやいなや、今度は何故かミルフィーナに呼び出されていた。

「おじゃましまーす」

「どうぞ〜」

 彼女の家へと招き入れられた俺は、少し緊張しながら部屋に入る。

(ミルフィーナの家って、何か清楚そうだし、汚すとまずいよな)

 俺のミルフィーナの第一印象としては、喋りはすごく遅いけど、清楚で綺麗好きみたいなイメージがあった。なので、余計に緊張感が高まる。

 けどそんな緊張感は彼女の家のリビングに入った途端、どこかへ消えていった。

「好きな所へ座ってくださいねぇ」

「いや、そんな事言われても、場所が……」

「大丈夫ですよぉ。危ない物はおいてありませんから、今日は」

「今、今日はって言ったよね? 普段はもっと酷いのか?」

「さあ?」

「いやいや、さあ、じゃないでしょ!」

 何故俺が先ほどからこんなに焦っているのかというと、彼女の家ば外見は一見普通の家に見えて、中は床から壁まで一面全てが真っ黒。明かりは蝋燭が真ん中にいくつかあるのみ。錯覚かもしれないが、床には何か怪しげな魔法陣が書いてある。

(た、確かに黒魔術を教えようとしているだけあるけど)

 これはもう、ホラーの領域に達している。

「な、なあミルフィーナ、俺は今から何かされたりしないよな」

「何かってぇ?」

「ほ、ほら、何かの儀式とか、そういうの」

「儀式はしませんよぉ。ただぁ」

「た、ただ?」

「カエデさんにはぁ、少しぃ体験してもらおうかなって思ったんですぅ」

「た、体験って何を?」

(ま、まさかとは思うけど)

「黒魔術を、に決まっているじゃないですかやだぁ」

「ひ、ひぃぃ」

 笑顔ですごく怖いこと言うよこの人。いや、人ではないか。

 って、そうじゃなくて。

「ようこそぉカエデさん。黒魔術の世界へぇ」

「だ、誰かぁぁ」

 その後俺が地獄を見たのは他でもない。

 ただ、思い出したくないのでここでは伏しておく。

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