異世界の村で始める獣人とのハーレム生活
第17話分かち合える仲
「こっちの世界にも存在したのじゃ。お主と同姓同名の山村楓という人物が」
それはあまりにも衝撃的な言葉だった。自分と同姓同名の人物がこの世界にいただなんて、少し信じられない。単なる偶然なのだろうか?
「信じられないかもしれぬが、これは事実なのじゃ」
「でも存在したってことは」
「そう。既にその人物は存在していない。しかも存在したのは昔の話。だからもし同一人物だとしても、色々矛盾が生まれる」
「既に死んでいる人物が、今生きているなんてあり得ないもんな」
だがここまで話を聞いて、余計に疑問が生まれる。それと俺を呼んだ理由と何の関係があるのだろうか。同姓同名だとしても、俺は全くの別人。関連性なんてないはずだ。
「ここまでなら普通はただの偶然で終わる。じゃが、まだ続きがある」
「続き?」
「実はその山村楓は、獣人の一人と結婚して、君の年齢と同じ二十年前に子も授かったという記録がある」
「それってまさか」
「そう。もしかしたらお主の両親がそれの可能性がある」
訳か分からなかった。カグヤが何を言っているのか。
「俺の両親がその要注意人物と、獣人だって? ふざけるな」
「別に妾だってふざけて言っているわけではない。ただ憶測で話しただけじゃ。だから……」
「帰ってくれ」
「気を悪くしたなら謝る。じゃから……」
「帰れ!」
 
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
最悪な気分だ。
カグヤを帰した後、俺は夕飯も食べずに布団に潜り込んでいた。何というか自分の親をバカにされたようなそんな気分で、イライラして誰にも言えずにこもっていた。
(ただの偶然なのに、どうしてこんなにイライラするんだろ)
確かに俺の父親は、何故か子供の名前と自分の名前を一緒にした。ただし漢字は違う。俺の母親は……。
(そういえば詳しく聞いたことなかったな)
俺を産んで少しした後に亡くなったと言っていたが、他に詳しくは聞いてない。この二十年、一度も聞いたことがなかった。聞けなかったと言った方が間違いないかもしれない。父も多くは語ろうとはしなかったし、その話題が一度も出ることはなかった。
(でもそれと、さっきの話に関係なんて……)
「カエデ君、起きてる?」
部屋の外からルチリアの声が聞こえる。どうやら夕食も終わって、俺の様子を見に来てくれたみたいだ。
「起きてはいる。けど、食欲はないから夕飯は用意しなくていいよ」
「食べないと明日までもたないよ?」
「いい」
適当な返事を返す。すると何も言わずに寝室にルチリアが入ってきた。
「食べなきゃ駄目だって!」
そして無理やり俺の布団を引き剥がした。どうやら意地でも夕飯を食べて欲しいらしい。
「何だよ。腹減ってないから別にいいだろ」
「全然よくない。島長さんと話をしてから様子が変だし、皆も心配してるんだよ? それを放っておけないでしょ」
「心配させているのは悪かったよ。でも今日だけは一人にさせてくれ」
「カエデ君……」
ルチリアや皆には悪い事をしたのは分かっている。だから今だけは一人にしてほしい。それが今の俺の気持ちだった。
「分かった。でも明日皆にちゃんと謝ってね」
「ああ」
ルチリアは最後に言うと、寝室を出て行った。
(ごめん、ルチリア)
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
寝室を出たルチリアは、その足でミルフィーナの家を尋ねていた。
「今は一人にしてほしい、ですか。きっと島長さんと
何かあったんでしょう」
「うん。私もそう思う。だから心配なんだけど、あれだと話してくれるようには思えないの」
先ほどカエデとしっかりと話せなかったことがルチリアは悔しかった。まだ一週間と少ししか共に過ごしていない仲だとしても、困った時は助け合うのが同じ村人としての仲だと思っていた。
それは今まで自分達が同じようにしてきたことだし、これからもきっと同じだと思っていた。だけど彼は少し違っていた。それが彼女にとっては、一番悔しかった。
「ねえミルフィーナ、私どうすればいいのかな」
「今までと何も変えなくていいと私は思いますよぉ。たとえ種族が違えど、私達は同じ人なんですから」
「そうだけど……。この前カエデ君に、自分と私達は違うって言われたから……」
「ああ、それは私も彼から聞きました。でも後悔していましたよ」
「知ってる。ちゃんと謝ってくれたから。でも」
「やっぱり気にしてしまいますか?」
「うん」
本人の前では全く気にしていない素振りを見せたけど、あの日はほとんど眠れなかった。
(もう慣れていたはずなのに)
やはりその言葉は、彼女にとって気にせずにはいられなかった。
「まあルチリアちゃんの場合は、しょうがない部分もありますよね」
「やめてよその話は」
「でも事実ではありませんか?  私達は同じように傷を抱えている、だからその痛みを分かち合える。いつか彼も、分かち合える日が来るのではないでしょうか?」
「そうだよね……」
「そうと分かれば、気を落とす必要はないですよ。カエデ君もきっと、明日には元気になっていますよ」
「うん」
「さてともう時間も遅いし、私の家に泊まっていきますか?」
「ううん大丈夫。というか家すぐ近くなんだからわざわざ泊まらなくてもいいでしょ」
「えー、折角実験に付き合ってもらおうと思ったのに」
「何の実験する気なの?! 余計に泊まりたくなくなったわよ」
「つまんないの」
「つまらなくていいのよ!」
シリアスな話をしていたのに、いつも通りに戻ったミルフィーナに、ルチリアは思わず苦笑いをしてしまうのであった。
それはあまりにも衝撃的な言葉だった。自分と同姓同名の人物がこの世界にいただなんて、少し信じられない。単なる偶然なのだろうか?
「信じられないかもしれぬが、これは事実なのじゃ」
「でも存在したってことは」
「そう。既にその人物は存在していない。しかも存在したのは昔の話。だからもし同一人物だとしても、色々矛盾が生まれる」
「既に死んでいる人物が、今生きているなんてあり得ないもんな」
だがここまで話を聞いて、余計に疑問が生まれる。それと俺を呼んだ理由と何の関係があるのだろうか。同姓同名だとしても、俺は全くの別人。関連性なんてないはずだ。
「ここまでなら普通はただの偶然で終わる。じゃが、まだ続きがある」
「続き?」
「実はその山村楓は、獣人の一人と結婚して、君の年齢と同じ二十年前に子も授かったという記録がある」
「それってまさか」
「そう。もしかしたらお主の両親がそれの可能性がある」
訳か分からなかった。カグヤが何を言っているのか。
「俺の両親がその要注意人物と、獣人だって? ふざけるな」
「別に妾だってふざけて言っているわけではない。ただ憶測で話しただけじゃ。だから……」
「帰ってくれ」
「気を悪くしたなら謝る。じゃから……」
「帰れ!」
 
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
最悪な気分だ。
カグヤを帰した後、俺は夕飯も食べずに布団に潜り込んでいた。何というか自分の親をバカにされたようなそんな気分で、イライラして誰にも言えずにこもっていた。
(ただの偶然なのに、どうしてこんなにイライラするんだろ)
確かに俺の父親は、何故か子供の名前と自分の名前を一緒にした。ただし漢字は違う。俺の母親は……。
(そういえば詳しく聞いたことなかったな)
俺を産んで少しした後に亡くなったと言っていたが、他に詳しくは聞いてない。この二十年、一度も聞いたことがなかった。聞けなかったと言った方が間違いないかもしれない。父も多くは語ろうとはしなかったし、その話題が一度も出ることはなかった。
(でもそれと、さっきの話に関係なんて……)
「カエデ君、起きてる?」
部屋の外からルチリアの声が聞こえる。どうやら夕食も終わって、俺の様子を見に来てくれたみたいだ。
「起きてはいる。けど、食欲はないから夕飯は用意しなくていいよ」
「食べないと明日までもたないよ?」
「いい」
適当な返事を返す。すると何も言わずに寝室にルチリアが入ってきた。
「食べなきゃ駄目だって!」
そして無理やり俺の布団を引き剥がした。どうやら意地でも夕飯を食べて欲しいらしい。
「何だよ。腹減ってないから別にいいだろ」
「全然よくない。島長さんと話をしてから様子が変だし、皆も心配してるんだよ? それを放っておけないでしょ」
「心配させているのは悪かったよ。でも今日だけは一人にさせてくれ」
「カエデ君……」
ルチリアや皆には悪い事をしたのは分かっている。だから今だけは一人にしてほしい。それが今の俺の気持ちだった。
「分かった。でも明日皆にちゃんと謝ってね」
「ああ」
ルチリアは最後に言うと、寝室を出て行った。
(ごめん、ルチリア)
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寝室を出たルチリアは、その足でミルフィーナの家を尋ねていた。
「今は一人にしてほしい、ですか。きっと島長さんと
何かあったんでしょう」
「うん。私もそう思う。だから心配なんだけど、あれだと話してくれるようには思えないの」
先ほどカエデとしっかりと話せなかったことがルチリアは悔しかった。まだ一週間と少ししか共に過ごしていない仲だとしても、困った時は助け合うのが同じ村人としての仲だと思っていた。
それは今まで自分達が同じようにしてきたことだし、これからもきっと同じだと思っていた。だけど彼は少し違っていた。それが彼女にとっては、一番悔しかった。
「ねえミルフィーナ、私どうすればいいのかな」
「今までと何も変えなくていいと私は思いますよぉ。たとえ種族が違えど、私達は同じ人なんですから」
「そうだけど……。この前カエデ君に、自分と私達は違うって言われたから……」
「ああ、それは私も彼から聞きました。でも後悔していましたよ」
「知ってる。ちゃんと謝ってくれたから。でも」
「やっぱり気にしてしまいますか?」
「うん」
本人の前では全く気にしていない素振りを見せたけど、あの日はほとんど眠れなかった。
(もう慣れていたはずなのに)
やはりその言葉は、彼女にとって気にせずにはいられなかった。
「まあルチリアちゃんの場合は、しょうがない部分もありますよね」
「やめてよその話は」
「でも事実ではありませんか?  私達は同じように傷を抱えている、だからその痛みを分かち合える。いつか彼も、分かち合える日が来るのではないでしょうか?」
「そうだよね……」
「そうと分かれば、気を落とす必要はないですよ。カエデ君もきっと、明日には元気になっていますよ」
「うん」
「さてともう時間も遅いし、私の家に泊まっていきますか?」
「ううん大丈夫。というか家すぐ近くなんだからわざわざ泊まらなくてもいいでしょ」
「えー、折角実験に付き合ってもらおうと思ったのに」
「何の実験する気なの?! 余計に泊まりたくなくなったわよ」
「つまんないの」
「つまらなくていいのよ!」
シリアスな話をしていたのに、いつも通りに戻ったミルフィーナに、ルチリアは思わず苦笑いをしてしまうのであった。
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