E.P.O〜エルフのパパになった俺~
第50話Goodbye days④
第50話Goodbye days④
1
ルシアが急に泣き出してしまったので、俺は彼女を落ち着かせるために部屋のベランダに彼女と出た。
「ったく、いきなり泣き出すから焦ったじゃねえか」
「パパがあんな質問をするからですよ」
「俺だって悪気があったわけじゃないっての」
「それくらい知ってますよ」
(まあ、気持ちは分からなくはないけどさ…)
ベランダの手すりに寄りかかりながら空を眺める。どうやら今日は満月らしい。
「綺麗ですね満月」
「ああ」
俺と同じように空を眺めているルシアが呟く。
そしてしばしの沈黙。
(何か話すことないか…二人で話せるのも今日で最後なんだし)
無理やり話題を切り出そうと必死に考えるが、なかなか出てこない。こういう時に限って話題が出てこないなんてすごく困るんだよな…。
「あの…パパ」
一人で悩んでいる中、ルシアがこっそり口を開いた。
「ん? どうした」
「私もパパに一つ聞いていいですか?」
「別にかまわないけど、何だ?」
「パパは…この三ヶ月、私とローナと暮らしてどう思いましたか?」
「それはまた突然の質問だな」
「パパもさっき私に同じような質問をしたんですから、その仕返しです!」
「はいはい分かったよ」
二人と暮らしてどう思ったか…。色々なことがあったけれども、二人と過ごした時間はとても貴重で、俺に家族という存在を教えてくれた。そんな彼女達と暮らせて幸せだったに決まって…。
「あれ? どうして涙が流れてくるんだ」
「あ、パパもまさか泣いていますね」
「ば、馬鹿そういうわけじゃ…」
どうしてだろう。色々思い出したら急に悲しくなってきた。めったな事がなければ泣かない自分が、どうして急にこんな…。
(そうか…、俺もそうなのか…)
「やっぱりパパも私と一緒で、別れるのが辛いんですね」
「ば、馬鹿そういうわけじゃ…」
「もう照れないでくださいよ」
「て、照れてなんか…」
チュッ
照れを必死に隠そうとしている俺の頬に、何か暖かくて柔らかい物が触れた。これって…。
「これは三ヶ月お世話になった私からのお礼です。大変貴重なものなんですから、忘れずにとっておいてくださいね」
「ルシア…」
満月に照らされながら笑顔でそう言う彼女は、とても美しく、まるで月へと去っていくかぐや姫のようだった。
「さて、そろそろ戻りましょうか」
「ああ」
ルシアがベランダの扉に手をかけ開こうとした時、ふと俺の頭の中にこんな言葉が浮かんだのでそれを口にする。
「ルシア」
「はい」
「ありがとうな」
それは三ヶ月分の感謝をこめたありがとうだった…。
続く
1
ルシアが急に泣き出してしまったので、俺は彼女を落ち着かせるために部屋のベランダに彼女と出た。
「ったく、いきなり泣き出すから焦ったじゃねえか」
「パパがあんな質問をするからですよ」
「俺だって悪気があったわけじゃないっての」
「それくらい知ってますよ」
(まあ、気持ちは分からなくはないけどさ…)
ベランダの手すりに寄りかかりながら空を眺める。どうやら今日は満月らしい。
「綺麗ですね満月」
「ああ」
俺と同じように空を眺めているルシアが呟く。
そしてしばしの沈黙。
(何か話すことないか…二人で話せるのも今日で最後なんだし)
無理やり話題を切り出そうと必死に考えるが、なかなか出てこない。こういう時に限って話題が出てこないなんてすごく困るんだよな…。
「あの…パパ」
一人で悩んでいる中、ルシアがこっそり口を開いた。
「ん? どうした」
「私もパパに一つ聞いていいですか?」
「別にかまわないけど、何だ?」
「パパは…この三ヶ月、私とローナと暮らしてどう思いましたか?」
「それはまた突然の質問だな」
「パパもさっき私に同じような質問をしたんですから、その仕返しです!」
「はいはい分かったよ」
二人と暮らしてどう思ったか…。色々なことがあったけれども、二人と過ごした時間はとても貴重で、俺に家族という存在を教えてくれた。そんな彼女達と暮らせて幸せだったに決まって…。
「あれ? どうして涙が流れてくるんだ」
「あ、パパもまさか泣いていますね」
「ば、馬鹿そういうわけじゃ…」
どうしてだろう。色々思い出したら急に悲しくなってきた。めったな事がなければ泣かない自分が、どうして急にこんな…。
(そうか…、俺もそうなのか…)
「やっぱりパパも私と一緒で、別れるのが辛いんですね」
「ば、馬鹿そういうわけじゃ…」
「もう照れないでくださいよ」
「て、照れてなんか…」
チュッ
照れを必死に隠そうとしている俺の頬に、何か暖かくて柔らかい物が触れた。これって…。
「これは三ヶ月お世話になった私からのお礼です。大変貴重なものなんですから、忘れずにとっておいてくださいね」
「ルシア…」
満月に照らされながら笑顔でそう言う彼女は、とても美しく、まるで月へと去っていくかぐや姫のようだった。
「さて、そろそろ戻りましょうか」
「ああ」
ルシアがベランダの扉に手をかけ開こうとした時、ふと俺の頭の中にこんな言葉が浮かんだのでそれを口にする。
「ルシア」
「はい」
「ありがとうな」
それは三ヶ月分の感謝をこめたありがとうだった…。
続く
「その他」の人気作品
書籍化作品
-
-
58
-
-
1
-
-
768
-
-
2
-
-
3
-
-
4
-
-
157
-
-
2
-
-
70810
コメント