E.P.O〜エルフのパパになった俺~

りょう

第19話 方向音痴なお父さん

  第19話 方向音痴なお父さん
1
文化祭前日の夜、予報通り外は大嵐。
「雄一君、やっぱり私もついていくよ」
「いや、いい。風を引かれたら当日困るだけだし」
「雄一君も引く可能性だってあるよ?」
「馬鹿は風を引かないって言うから、心配すんな」
俺はルシアを引き連れて、屋台を死守する作戦を実行することにした。
「行きましょうパパ」
「お姉ちゃん…大丈夫?」
「大丈夫ですよローナ。お姉ちゃんは無事に帰ってきますから」
「…分かった」
「じゃあ行くぞルシア」
「はい」

外は想像よりもかなりの雨風だった。普段は大学まで面倒臭いから電車で行っているが、この嵐じゃ確実に止まると考えた俺は、第二の交通手段を使うことにした。
「パパ、車なんか持っていましたっけ?」
「車は陽介の家から借りてきた。免許は一年くらい前に取ってる」
「でも運転してませんよね?」
「大丈夫だ、問題ない」
「私すごく心配になりました」
とりあえず大学へGO!
2
「まあ予想はしていましたけど…」
一時間後、俺の車はまだ街中をさまよっていた。
「あれ、こっちであってるはずなんだけど」
「間違ってるから迷ってるんですよ!」
「すいません」
格好良く家を出てきたのはいいもののこの様だと、皆に会わせる顔がない。
途方に暮れながら運転していると、ルシアが指示を出し始めた。
「そこ右です」
ルシアに言われたとおり右へ曲がる。
「次はしばらく真っ直ぐ行って左に曲がってください」
ルシアの指示に従いながら運転する俺。
「お前、道分かってるなら先に教えてくれよ」
「私はパパを信じて何も言わなかっただけです、そこ左に曲がってください」
「はいよ」
しばらく従いながら運転していると、少し先に大学が見えた。
「おお、流石ルシアだな」
「エルフ族の記憶力を舐めてもらっては困ります」
大学付近の駐車場に車を停め、車を出る。
「よし急いで向かうぞ」
「はい」
3
急いでやって来た俺達の前に広がっていたのは、とにかく惨劇だった。
「これはちょっとまずいかもな。他の屋台も壊れてるし」
「これは酷い…ですね」
壊れてしまった屋台が地面に散らばっていたりして、もはや明日の文化祭ができないレベルにまでなっていた。
「二人じゃどうにかなるもんじゃないよなこれ…」
おそらく大学側も明日は中止にするだろうし、俺達が今なんとかしてもどうにかなるものじゃない。ここまで嵐が凄まじいとは思ってもいなかった。
「帰るかルシア」
諦めて帰ろうと歩き出すが、何故かルシアは動かない。
「おい、帰るぞルシア」
反応なし。そういえばこいつ、さっきから喋ってないような…。
「………」
というか何かをつぶやいてるような…。
「……荒ぶる天気よ…その怒りを沈めたまえ……」
「は?」
俺が頭に『?』を浮かべてると、降っていた雨が突然止んだ。
「あ、嵐が、収まった?!」
あまりに突然すぎる出来事に俺が驚いていると、隣で何かが倒れる音がした。倒れたのはルシアだった。
「ルシア!」
何だ、一体何が起こっているんだ?
普通ないだろ嵐が突然収まるなんて…
まさかルシアが…
とにかく今は彼女を何とかしないと。
 続く

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