魔法少女はロジカルでマジカルに
ラストバトル その②
世間話。かつての僕らのように、まるで学校の帰り道のように―――
普通に歩きながら会話を重ねていく。
今、学校の誰それが付き合っているとか
学校じゃ、これが流行っているとか
そんな他愛のない話。それもやがて終わる。
「さて、それじゃどうしようか?戦う?」
そんな軽い感じで、彼女は言う。
そんな軽さで、戦闘に身を寄せれる彼女は、やはり――――
「そうだね。戦って、僕が勝ったら一緒に〈日本〉へ帰ろう」
「ん~ それは無理かな?」
「難しいの?」
「うん、私の中に魔が溜まっているから、同じように見えても、やっぱり別人なんだ。うん、君の知ってる尾形真理と今の尾形真理は違うの」
「いや、違わないさ。君は君だよ」
「そうかな?」「そうだよ」
「じゃ、戦って決めよう」「うん、戦って決めよう」
そんな軽い感じで戦いは始める。
(なるほど)と僕は心の中で唸る。
対峙してみて初めてわかるプレッシャー。威圧感。
普段の僕なら恐れおののき、敗走の準備を開始するのだろうけれども、今は違う。
モチベーション?テンション?これが『上がる』ってやつなのか?
気分がハイになっているみたいだ。
この状況に酔いしれている僕がいる。
尾形真理の背後に光が集まっていく。
まるで後光の如く。
そして、光は人の形を形成していく。
光人形。
最初にこれを見た時、僕はこれに追いかけられていたなぁ。
そんな思い出に浸っていたが、自分の記憶と違う光人形のフォルムに「おや」と声と漏らす。
黒い。尾形真理の光人形は、黒一色に染まっていた。
「―――ッッッ!?」
速い。思考する間もなく、黒い光人形は目前にいた。
振りかぶられている右腕、モーションが大きいテレフォンパンチ。
いくら速くても、攻撃の予備動を消さず、タイミングが読めるなら簡単に避けれ・・・・・・
当たった。大振りのパンチが、僕の頬にぶち込まれる。
拳から伝わる重量感。そして硬さは規格外。予想外の想定外。
意識が途切れるよりも記憶が飛ぶ感触。
いや、実際に飛んでいるのは僕の体か。
背後に壁を感じながら、体を反転させ、足から垂直な壁に着地する。
「痛ッ!!」
しかし、それでも衝撃を吸収しきれず、足首に一瞬の痛みが走る。
いや、痛みは無視だ。無理やり知覚の外へ捨てさる。
そのまま、攻撃に転じる。
壁を蹴り、真理に向かって飛ぶ。
途中で体を反転。十分に両足を引き付け、体を縮ませ、タメを作る。
加速、タメ、限界。このタイミング。
一気に―――爆発させるが如く、両足を真っ直ぐ伸ばす。
真理本体にむけた全力のドロップキック。
空中、両足で放つ蹴り技。
しかし、真理の光人形が2人の間に割り込んでいた。
渾身の一撃は塞がれる。
・・・・・・あれ?
次の瞬間に感じたものは違和感なんてものじゃない。
普通、ドロップキックを放った後はどうするか?
重力に従って、そのまま落ちるわけではない。
空中で体を捻り、体の正面から落ちていくのが基本だ。
柔道で言う前受身を取って安全に地面へ落ちていくものなのだが・・・・・・
僕は落ちなかった。
両足が光人形にくっついたまま、地面と平行に立っている。
まるで重力が光人形に―――否。
『まるで』ではない。僕は瞬時に理解した。
あの光人形が黒い理由。それは、自ら放射している光を押し留めているからであり・・・・・・
それは、つまり―――
今の尾形真理の魔法が重力を操るものだという事なのだろう。
光人形が僕の足を掴みに来る。それを蹴り払う。
もう一度、光人形が足を掴みにくる。また払う。
今度は逆の腕で、また払う。
まるでタップダンス。光人形の上で踊っているかのような錯覚。
視線の隅で尾形真理の笑顔が見える。
ご満悦。楽しそうでなによりだ。
僕は、光人形の重力から逃げるため横へ大きく跳ぶ。
今度は正常なる地球の重力にそって、地面に着地した。
しかし、吸われた。光人形の重力は、地面に着地した僕の体を持ち上げ、吸い寄せてくる。
光人形の重力には逆らえず、そのまま捕縛される。
背後から、僕の胴体を両足で締め付けてくる。いわゆるバックマウント。
両足の締め付けだけでギブアップが取れると言われたカリスマ的な格闘家がいたらしいが
たぶん、本当なのだろう。
口を大開にして、肺から酸素を放出したくなるほどの締め付けが僕を襲う。
しかし、本命はもちろん、背後からのスリーパーホールド。
僕の首に、光人形の腕が絡んでくる。
それを自身の腕で押さえガードする。幸いな事だが光人形は、重力を操れても、異常な硬さを誇っても、腕力という点では、普通の人間以上のパワーがあるわけではないようだ。
僕は後頭部を光人形の顔面に預けて、体を一気に捻らせる。
バックマウント脱出。ガードポジションへ移行する。
あれ?なんだかデジャブががが。
予測どおりに光人形の両足が蛇のように変化して、僕の首に襲い掛かる。
三角締め
嗚呼、あの時の・・・・・・。
普通に歩きながら会話を重ねていく。
今、学校の誰それが付き合っているとか
学校じゃ、これが流行っているとか
そんな他愛のない話。それもやがて終わる。
「さて、それじゃどうしようか?戦う?」
そんな軽い感じで、彼女は言う。
そんな軽さで、戦闘に身を寄せれる彼女は、やはり――――
「そうだね。戦って、僕が勝ったら一緒に〈日本〉へ帰ろう」
「ん~ それは無理かな?」
「難しいの?」
「うん、私の中に魔が溜まっているから、同じように見えても、やっぱり別人なんだ。うん、君の知ってる尾形真理と今の尾形真理は違うの」
「いや、違わないさ。君は君だよ」
「そうかな?」「そうだよ」
「じゃ、戦って決めよう」「うん、戦って決めよう」
そんな軽い感じで戦いは始める。
(なるほど)と僕は心の中で唸る。
対峙してみて初めてわかるプレッシャー。威圧感。
普段の僕なら恐れおののき、敗走の準備を開始するのだろうけれども、今は違う。
モチベーション?テンション?これが『上がる』ってやつなのか?
気分がハイになっているみたいだ。
この状況に酔いしれている僕がいる。
尾形真理の背後に光が集まっていく。
まるで後光の如く。
そして、光は人の形を形成していく。
光人形。
最初にこれを見た時、僕はこれに追いかけられていたなぁ。
そんな思い出に浸っていたが、自分の記憶と違う光人形のフォルムに「おや」と声と漏らす。
黒い。尾形真理の光人形は、黒一色に染まっていた。
「―――ッッッ!?」
速い。思考する間もなく、黒い光人形は目前にいた。
振りかぶられている右腕、モーションが大きいテレフォンパンチ。
いくら速くても、攻撃の予備動を消さず、タイミングが読めるなら簡単に避けれ・・・・・・
当たった。大振りのパンチが、僕の頬にぶち込まれる。
拳から伝わる重量感。そして硬さは規格外。予想外の想定外。
意識が途切れるよりも記憶が飛ぶ感触。
いや、実際に飛んでいるのは僕の体か。
背後に壁を感じながら、体を反転させ、足から垂直な壁に着地する。
「痛ッ!!」
しかし、それでも衝撃を吸収しきれず、足首に一瞬の痛みが走る。
いや、痛みは無視だ。無理やり知覚の外へ捨てさる。
そのまま、攻撃に転じる。
壁を蹴り、真理に向かって飛ぶ。
途中で体を反転。十分に両足を引き付け、体を縮ませ、タメを作る。
加速、タメ、限界。このタイミング。
一気に―――爆発させるが如く、両足を真っ直ぐ伸ばす。
真理本体にむけた全力のドロップキック。
空中、両足で放つ蹴り技。
しかし、真理の光人形が2人の間に割り込んでいた。
渾身の一撃は塞がれる。
・・・・・・あれ?
次の瞬間に感じたものは違和感なんてものじゃない。
普通、ドロップキックを放った後はどうするか?
重力に従って、そのまま落ちるわけではない。
空中で体を捻り、体の正面から落ちていくのが基本だ。
柔道で言う前受身を取って安全に地面へ落ちていくものなのだが・・・・・・
僕は落ちなかった。
両足が光人形にくっついたまま、地面と平行に立っている。
まるで重力が光人形に―――否。
『まるで』ではない。僕は瞬時に理解した。
あの光人形が黒い理由。それは、自ら放射している光を押し留めているからであり・・・・・・
それは、つまり―――
今の尾形真理の魔法が重力を操るものだという事なのだろう。
光人形が僕の足を掴みに来る。それを蹴り払う。
もう一度、光人形が足を掴みにくる。また払う。
今度は逆の腕で、また払う。
まるでタップダンス。光人形の上で踊っているかのような錯覚。
視線の隅で尾形真理の笑顔が見える。
ご満悦。楽しそうでなによりだ。
僕は、光人形の重力から逃げるため横へ大きく跳ぶ。
今度は正常なる地球の重力にそって、地面に着地した。
しかし、吸われた。光人形の重力は、地面に着地した僕の体を持ち上げ、吸い寄せてくる。
光人形の重力には逆らえず、そのまま捕縛される。
背後から、僕の胴体を両足で締め付けてくる。いわゆるバックマウント。
両足の締め付けだけでギブアップが取れると言われたカリスマ的な格闘家がいたらしいが
たぶん、本当なのだろう。
口を大開にして、肺から酸素を放出したくなるほどの締め付けが僕を襲う。
しかし、本命はもちろん、背後からのスリーパーホールド。
僕の首に、光人形の腕が絡んでくる。
それを自身の腕で押さえガードする。幸いな事だが光人形は、重力を操れても、異常な硬さを誇っても、腕力という点では、普通の人間以上のパワーがあるわけではないようだ。
僕は後頭部を光人形の顔面に預けて、体を一気に捻らせる。
バックマウント脱出。ガードポジションへ移行する。
あれ?なんだかデジャブががが。
予測どおりに光人形の両足が蛇のように変化して、僕の首に襲い掛かる。
三角締め
嗚呼、あの時の・・・・・・。
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