魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

真相?

 病院の玄関付近。
 宝田十三雄の魔法が見境なしに牙をむく。
 1人倒しては、また別の1人が襲い掛かってくる。
 もはや、魔法の秘匿性など無関係なのだろう。
 もはや、犯行を外部へバレる事など問題にしていないのだろう。
 この異常事態を目撃すれば、普通の人は距離を取って、避難すると考えていたが―――
 事態の異常に対処できず、ほとんどの人が動かず棒立ちになっている。
 宝田十三雄にとって操る人材に困らない状態だ。
 まるで、俊敏なゾンビが敵として登場するゲームみたいだ。
 病院のロビーは、まるで死屍累々。ただし、死者どころか負傷者すら出さずに倒している。
 この短時間で、人間を傷つけずに失神させるスキルだけがレベルアップしてる気がする。
 もっとも、僕の倍は長谷川さんと天堂任が倒した相手だけれども。
 なんとか、周囲に動く人間は0になったようだ。
 代わりに尋常ではない疲労感が体に纏わりついてくる。
 一瞬、意識を失いそうにもなるが、なんとか持ち直し、病院の外へ・・・・・・。
 出ようとして、踏みとどまった。
 自動ドアの向うから、こちらを窺う視線。
 そもそも、どうして病院を出た方が良いなんて話になったのか?
 一切の遠慮もなく魔法を披露してくる相手。
 だったら、外という開かれた空間よりも、病院という閉ざされた空間の方が戦うのに適しているのではないか?
 そもそも、外へ出ようと言い出したの誰だったのか?

 「うむ。頃合いか」
 そう背後から呟いたのは天堂任だった。
 僕は振り向く。 天堂任の背後には巨大な光の人形が仁王立ちしている。
 それも、僕に対峙するように光人形が向かっている。
 「なんのつもり・・・・・・ですか?」
 「愚問だな。お前も気がついているだろ?我々の中で魔力の中継基地の役割を果たしている人間がいるという事を」
 「中継基地?」
 裏切り者でも、スパイでもなく、中継基地?
 その表現からは、どういう意味なのかはわからない。
 「我らが敵。宝田十三雄は周囲の人間を操る魔法。しかし、自らの肉眼で確認せず、こうも精密な攻撃を続けられるのか?本来、奴の魔法は複数の人間を操る事が可能だ。それを、なぜ1人1人を操って攻撃を仕掛けてくる?それを奴は我々の誰かに魔力を注入し、魔力の中継基地として利用。つまり・・・・・・

 本当に宝田十三雄が操っている人間は1人だけ。その1人が我々の中にいて、周囲の人間に襲わせている。それが、この攻撃の真相だ」
 「・・・・・・」
 天堂任はそう断言する。けれども、それが事実なのか僕には判断する方法がなく、何も答えようがなかった。


 


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