魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

黒服

 不意に病室のドアに目をやる。
 僅かな違和感を感じたが、やがて確かな圧迫感へと変わる。
 誰だ?
 僕は警戒心を強め、ドアを凝視した。
 コツンコツンを聞こえるはずのない足音が聞こえてくる。
 規則正しい、一定のリズムを刻む、心地のいい高音。
 そして、足音はドアの前に止まる。
 さてはて、鬼が出るか?蛇が出るか?
 やがて、予想に反して、控えめなノックが正式な訪問を告げてくる。
 僕は、内心、「やれやれ」とつぶやきながらも、「はい、どうぞ。お入りください」と常識とセオリーに則った返答を行った。
 ガラガラと当たり前の音を上げて開かれるドア。
 そして、病室は入ってくる人物を見た。

 黒服。
 普段、僕らをサポートする黒服のそれとは、明らかな別物。
 服自体に漆黒の烙印があしらわれているかの如く。つまりは上物。
 それを優雅に身にまとう男。
 年は50を越えているくらいか?
 白髪。顔にはシワが濃く刻まれている。
 だが、背すじを真っ直ぐに伸ばした姿勢の良さ。
 目の奥から感じられる精力さ。
 おそらく、個人のスペックは見た目の年齢よりも遥かに高いものが隠されているのだろう。

 人を見た目で判断するなというが---
 それを言うなら、世界一有名な名探偵に言ってもらいたいものだ。
 そんな考えが表情に出たのかもしれない。
 黒服の老紳士から、僅かな戸惑いに似た感情が表情に出ている。
 訝しがるとはこう言う事なのだろうか?
 うむ・・・・・・
 どうやら、見た目から情報を得ようとして、相手に情報を与えてしまっているな。

 「えおっと、どちら様でしょうか?」

 僕は老紳士へ用件を聞く。おそらく、敵ではない。
 殺意や敵意を言ったものは感じられないからだ。
 しかし---
 「黒服」と老紳士は一言だけ告げる。
 僕は意味がわからず、頭に疑問符を浮かべていたが

 「私は黒服の代表者でございます」と老紳士は言う。

 僕の脳内は、さらなら疑問符の追加。疑問符による波状攻撃で一杯一杯になっていくが・・・・・・
 ひとつだけ、とある可能性が思いついた。
 僕らをサポートしてくれる集団。僕は安易に黒服と呼んでいた。
 それは、僕よりも以前、尾形真理が「黒服」と呼んでいたからであるが---
 もしかして、ひょっとして
 『黒服』は愛称的な名前ではなく、正式な組織名だったりするのではなかろうか?

 

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