魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

決意

 体が重い。酷く重い。
 まるで、まだ水面に沈められているかのように錯覚する。
 いや、違う。ここは、あのジャングルではない。
  嗚呼、記憶が混沌としている。
 ここはそう・・・・・・病院だ。
 目を覚ますと、白い天井。体を起こして周囲を確認する。
 白いカーテンで仕切られている。カーテンを開くと白い壁。
 どうして病院は白にこだわるのだろうか?
 おそらく、人の生死に関わる場所だから派手な色は避けているのだろう。
 どうでもいい・・・・・・
 僕は投げやりにつぶやいた。
 無駄な消費だ。時間は有限だ。
 そして、体時間と共に劣化して、体力は浪費されていく。
 限りある貴重な資源の無駄遣いだ。
 こんな事をしている場合ではないのに---
 なぜ僕がこんな事をやっているのか?
 思い出すのは彼女の姿。
 尾形真理。
 彼女は光の魔法使いであり、異世界の住民でもあった。
 異世界。
 こちら側の〈日本〉に対して、あちら側の〈ニホン〉。
 異世界と言っても、大差はない。
 強いて違いを言うならば---
 あちら側の〈ニホン〉は魔法と言われる技術が異常発達している精神文明である。
 こちら側の〈日本〉は機械など、物理法則を主軸としていく物質文化である。
 ただ、それだけの差。
 けれども、その僅かな差を特別視して、異質なものと誤認識する人が多い。
 大半は、2つの世界の歩み寄りが少なく、情報に制限があるためだが・・・・・・
 そのために、それらの事実を熟知したうえで妄信的とも言える信仰心を持つ人間も存在している。
 きっと、そういう人間は隣の芝は青く見えるのだろう。
 まぁ、いい。 そんなことはどうでもいい。
 僕の目的は尾形真理と再び会う事だ。
 あの日、さわられた彼女。
 実際は、父親に連れ戻されたわけはあるが・・・・・・。
 問題はその父親こそがラスボスであるという事だ。
 彼の姿を脳裏へ呼び起こす。それだけで寒気と一緒に恐怖が舞い戻ってくる。
 足りない。圧倒的に足りない実力差。
 実力差? 思わず笑いがこぼれてしまう。
 個人でありながら、その立場ゆえに圧倒的な戦力を保持する彼。
 それに比べて、僕は何者だ? ただだか、身体能力が平均より高いだけの学生に過ぎない。
 だから---
 何を持って、何を利用して
 圧倒的な実力差を穴埋めしていくのか?
 僕は考え続ければならない。
 再び、彼---
 〈ニホン〉内閣総理大臣 天堂任と対峙する日まで・・・・・・

 しかし、僕の決意も虚しく、事態は急変する。
 それも、予想外の方向へ。

 

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