魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

『ソフトチェーン』の謎 その⑪

 残りの『ソフトチェーン』の居場所は特定しやすかった。
 フォーメーションとでも言えばいいのだろうか?
 全員が遠距離攻撃であるために、僕を中心に取り囲む布陣は取れない。
 単純なことだ。対象を中心に取り囲んで攻撃をした場合に対角線上に仲間がいる可能性が多くなってしまう。誤射の可能性がある以上、そんなフォーメーションはありえない。
 警察物のドラマで犯人確保の瞬間に大量の警察官が銃を構えて取り囲んでいるが、あれはフィクションでのみの演出だ。
 1人、1人の配置は一定の距離を守られていた。
 几帳面に正確にバカ正直に・・・・・・

 最後の1人は遠く、後方に待機していた。
 背後には大きめの川。たぶん、こいつが濁流を操っていた魔法使いだったのだろう。
 あの強力な魔法は『ソフトチェーン』の効果を失い、別の貧弱な魔法へと変化していた。
 当たれば痛い。その程度の威力まで落ちている。
 僕は、拳のひと振りで攻撃をかき消して進む。
 相手に浮かべる表情は恐怖と焦り。
 水の中に石でも混ぜれば、それなりの威力になるだろうに・・・・・・
 そんな事も考えつかないらしい。
 そもそも、システムに頼って、チームを組んでたから単独戦闘の経験値が低いのか?
 まぁ、どうでもいいか。
 最後の1人をあっさり眠らせて、決着を迎えた。

 「さて『ソフトチェーン』のリーダー格は、自分達をサッカーチームに例えていたが、だったらコイツがゴールキーパーで、僕がゴールを決めたって状況だな」

 ・・・・・・。
 自分で言ってて例えがうまくない事に気がついた。  

 
 さて、この11人をどうするか?
 全員、綺麗に失神はさせ、着ていた衣服を縄代わりに拘束してある。
 流石に殺すわけにはいかないからな。
 もう既に、迎えの合図に信号弾は飛ばしてある。 
 黒服達も『ソフトチェーン』が11人組とは知らなったわけで、こいつ等の移動ってどうするんだろう?
 そんな事を考えていた。
 決着直後、連戦の疲労感。それに僅かな達成感。
 それらを一言で言うならば・・・・・・
 油断。油断していたのだ。
 体に走る痛み。
 何が起きたのか?
 痛みから、攻撃を受けたという思考が遅れる。
 11人?11人って言ったのはリーダー格の男だ。
 そんな言葉を間に受けて12人目の可能性を見落としてたのか・・・・・・
 薄れていく意識を強引に奮い立たせて覚醒する。
 振り返り、最後の敵と向かい合う。

 そいつは、今までの『ソフトチェーン』と同じで長髪に迷彩服で―――
 虚ろな表情?
 いや、コイツは12人目じゃない。
 むしろ1人目じゃないか。
 最初に倒して、戦意喪失しているはずの風使い魔法使い。
 そいつは、そこにいた。

 「お初にお目にかかります。私が、私こそがソフトチェーンです」

 

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