魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

『ソフトチェーン』の謎 その⑩

 銃という名前の圧倒的な暴力。
 向けられるは殺意。放たれるのは確実な死。
 口内の水分が失わられ、喉が痛くなる。
 それに対して、男は一歩、一歩と軽い足取りで近づいてくる。
 まるで果実の収穫を楽しみように、僕の命を刈り取るのが目的で―――
 それに気づいた僕は―――

 「てめぇ、ぶっ殺す」

 その言葉を発したのが自分だとは思えなかった。
 銃に恐怖している僕、ブチ切れて相手に飛びかかろうとしている僕。
 2つの僕が同時に存在しているみたいな錯覚。
 そんな感覚に戸惑っていても相手は待ってくれなかった。
 僕に向かい弾丸が発射される。
 拳銃の弾速は秒速で300メートルほど。
 とても人間の肉眼でとらえる速度ではない。
 だが、今の僕の目には弾丸が止まって見える。
 ・・・・・・気がする。
 この弾丸は外れるという絶対の確信。
 根拠など何もない。でも、絶対外れる。

 「痛ッ―――」

 現実は甘くない。
 弾丸はこみかみの横を通過した。
 直撃ではないが頭部の肉がえぐり取られている。
 遅れて痛みがやってくる。だが、無視だ。
 痛みを嘆いている場合ではない。
 もう既に、僕は走り出しており―――
 もう既に、固く強く握った拳を拳銃の持つ腕に放っていた。
 打撃によって宙へ舞う拳銃。
 それを目で追う『ソフトチェーン』リーダー格の男。 慌てて、拳銃を拾おうと走っていた。
 馬鹿な。勝負を左右する大きなファクターだと思い込んでいるのか?
 武器に固執するあまり敵に背中を向けるなんて・・・・・・
 四つん這いになり、地面に転がった拳銃を拾い上げようとする動作。
 その状況の男に向かって、僕が行った行為は全力疾走だった。
 それは膝蹴りですらない。全力で走りきっただけだ。
 もし、走っている車に人間がぶつかったらどうなるか?
 それと同じことが起こっただけの話だ。


 僕は転がった拳銃を拾い上げ、失神した男を見る。
 さて、どうしたものか?
 残りの敵の数は4人。だが、ここでリーダーらしき人物を倒してしまった。
 それに、『ソフトチェーン』とは人が多ければ多いほど、強化されるシステム。
 残り仕事は戦後処理になってしまったわけだが・・・・・・
  

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