魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

『ソフトチェーン』の謎 その⑤

 男は語りだした。なぜ、僕に語り始めたのかわからない。
 でも、それは不気味な話し方だった。
 どこに真意が存在しているのかわからない不気味な話し方だった。
 それは『ソフトチェーン』というシステムの正体についての話。

 「この世の中には、数多くの魔法が存在している。その中で最弱と呼ばれている魔法はなんだと思う?」
  「・・・・・・」

 その質問は、僕にはわからない質問であり、当然ながら答えは沈黙で返すしかなかった。
 どうやら、それが男には楽しく愉快な事らしい。

 「答えは遠距離攻撃系の魔法だよ。つまり、私たちは最弱の存在なのさ。」

 男は笑い出す。
 それも、つい我慢できずに吹き出しかのような笑い方だった。
 本当におかしくて、泣いているみたいに笑い出していた。

 「固有の物体を飛ばすための推進力を有する魔法。そりゃ、物を遠くへ送ったりする物流には必要な魔法さ。だが戦闘に使用するにはコストパフォーマンスは最悪なのさ。何らかの物体に魔力を注入して固定、それから魔力の放出で推進力を得るわけだからな。あん?なんだって? なぜ、他の魔法を選択しなかったのかって?」

 僕の疑問。
 魔法は生まれつきの才能で決まるものではなく、後天的に得られる技術である事。
 なぜ彼らは、最弱と言われた技術を獲得して、自虐的に嘆いているのか?
 その疑問に対して、男は笑いを止めて、少し考えてから言葉を再開した。

 「言ってしまえば、才能の呪縛だ。我々には、その才能しかないんだ。それ以外がないんだ。いや、確かに他の事も人並みにはできる。だが、あるジャンルにおいて人並み外れてできてしまう人間の気持ちがわかるか?ほっておいても湯水の如く、新技術や新理論が湧いて出てくる人間が、それ以外の道を歩めると思うか? 我々には我々の道を極めるしか、自身の頭脳が許さなかったのだよ」

 僕には男の話が事実かどうか、判断はつかなかった。
 なぜなら、男の顔に浮かんでいるものは、すでに笑みではなく狂気へと変化していたからだ。

 「だから、我々は作ったのさ。遠距離攻撃系の魔法が、最弱を最強へと変換するシステム。それが、それこそが『ソフトチェーン』なのだよ。お前は、我々が何人いると思っている?」

 僕の返答に男は笑う。狂気を孕んだ笑いを見せる。否、意図的に見せつけている。

 「6人だ?少ない少ない。我々『ソフトチェーン』は11人だ。10人でも12人でもなく11人。お前らで言うサッカーの選手を同じ人数だよ」

 11人?今の僕にとって、その人数は絶望的なものに思えた。
 この状況を打破しても残り5人―――
 男は、そんな僕を見て満足そうに笑い続けている。 

 「『ソフトチェーン』の正体とは、11人もの人数が互いに微弱の魔力を放出して送り合い、魔力を強化している。そのシステムの名前というわけだ」

 

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品