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チョーカー

『ソフトチェーン』の謎 その③

 僕は視線を上空へと向ける。
 もう『ソフトチェーン』の閃光も、戦意を失った『ソフトチェーン』の姿も目に入らない。
 轟音の正体。それを目で確認するよりも速く脳が答えをはじき出した。
 全力で高く飛び上がる。視線の先には生い茂る木々の枝。
 それに片手が触れると一気に体を引き上げる。それでも止まらない。
 上へ上へと木登りを開始する。
 やがて来る轟音。それは予想通りの濁流だった。

 シンプルな答えだ。
 2人の人間がいる。その内、1人が別人になっている。
 だったら、3人の人間がいるというだけの話。
 風を操る魔法使い。水を操る魔法使い。そして、光を操る魔法使い。
 つまり、双子じゃなくて三つ子というわけか。
 木の上に避難し終えた僕は下の様子を伺った。
 咄嗟だった割には、結構な上まで登ったようだ。
 その結果、下の様子は見づらくなってしまった。
 いくら自然の巨木でも、濁流に耐えられず、倒れてしまう可能性も考えていたが、どうやら取り越し苦労だったみたいだ。
 濁流の持つ誘導性。それが、僕を追って上に進もうとしている。
 だが、僕へたどり着くためのルートは、上へ伸びている木々にしかない。
 自らの膨大な質量。真上へ向かおうとする推進力。木という狭い道。
 それらが、どう作用しているのかは僕にはわからない。
 ただ、やがて推進力を失った濁流は、地面に広がり、ただの巨大水たまりと変化していった。
 それを確認すると安堵の息が漏れた。
 僕は閃光の魔法に対して、連射が効かないと推測した。
 しかし、連射が効かないというのであれば、あの濁流こそ連射が効かないのだろう。
 おそらく、あの魔法は遠く離れた川か、何かから水分を補給して操っているのだと思う。
 無から水分を召喚して操る魔法ならば、上空から数トンの水でも召喚して圧殺したほう効率的だからな。
 やれやれと安堵もつかの間、僕の目前に閃光が放たれた。
 目と鼻の先を通過していく閃光。直撃しなかったのは、神様の思し召しとしか言い表せない。
 だが、これで戦いの勝ち筋がみえるようになった。
 風使いの『ソフトチェーン』は戦意喪失。水使いの『ソフトチェーン』は次弾補充に時間がかかる。
 今、僕が戦う『ソフトチェーン』は1人だけ。
 1対1なら、十分に勝機がある。 
 しかも、不用意に閃光を放射したために、次弾まで数秒のタイムラグだある。
 僕は、木から飛び降りるかのように下がって行った。 


 

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