魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

夜明け、再戦の開始

 夜が明けていく。
 僕はバックパックから全ての食料と飲料を取り出して並べる。
 残りの飲料は水が2リットル程度。
 食料は戦闘食。所謂、レーションだ。
 近代のレーションはバリエーションが増え、いろんな保存食が楽しめるようになっていると聞いている。だが、僕に用意されていたレーションは旧時代のブロック状の固形だ。
 なんだこりゃ? 硬いようで、柔らかいような・・・・・・
 口の中で溶けにくく、ベトベトした・・・・・・
 とにかく、甘くて食べにくい。
 1個食べるだけで十分過ぎるほどの満腹感に満たされていく。
 それを無理やり食べ続ける。口に含んでは、水で無理やり押し流していく。
 最後の体力回復の休憩時間。大量のカロリーを体内でエネルギーへ変換させていく。
 いっそ、野生の獣でも狩れればいいのだが、流石にそんなサバイバル技術は持っていない。
 まぁ、獣を捕まえれたところで、焼くだけで食べれるわけじゃないしなぁ。
 血抜きして、皮を剥いで、内蔵を取り出して・・・・・・
 いかん、想像しただけで吐き気が・・・・・・
 そのまま、横になって強制的に消化は早めさせる。
 このまま、仮眠でもできればいいのだが、高ぶった神経は収まらない。
 そして、夜の暗闇が消えていく。天然のライトが周囲を照らし出していく。
 僕の姿を隠して、僕を守ってくれていたものは何もなくなった。


 研ぎ澄まされた神経が教えてくれる。
 この感覚は『ソフトチェーン』が近づいてきている証拠。
 日が昇って、すぐにこの場所へ近づいている。
 やがて、雄生い茂る草木をかき分け、『ソフトチェーン』が目視できる場所まで来た。
 やはり、この付近に隠れているという痕跡が残っていたのだろうか?
 幸いにも、まだ居場所まで特定はされていないのようだ。奴は、警戒心を強めている様子で慎重に一歩一歩、足を踏み出して進んでくる。
 その動きが変化する。真っ直ぐ、走るように歩を早めていく。
 その先にある物。それは、僕が今朝食べていたレーションの包み。
 明らかに不自然なゴミが落ちていた。
 やはり・・・・・・やはり、見つけてくれたか。
 そのゴミは、その場所へ誘導するために置いた物。
 既に『ソフトチェーン』は攻撃射程圏内。
 覚悟を決めた僕は、身を隠していた木の上から飛び降りた。

 その音に気づき顔を跳ね上げる『ソフトチェーン』
 その顔面に目掛けて、空中で拳を叩き込んだ。
 そのまま、『ソフトチェーン』は打撃の衝撃で地面へと倒れ込んだ。
 拳から伝わって来る感覚。
 それは仕留め損なった事を嫌でも意識させる。
 初めて行った空中からの打撃。
 足場のない空中では足の踏ん張りが効かず、腰の回転が鈍る。
 落下の加速に任せて打ち込んだ拳は、相手とのインパクトの瞬間、自重に押し負けていた。
 本来、自分に帰ってくる衝撃をサスペンションの役割で吸収してくれる肘や肩を正確にコントロールできていなかった。

 予想通り、すぐに立ち上がってくる『ソフトチェーン』
 なんだか、その姿に不気味な違和感を感じさせる。
 その顔には、怪我の手当が施されていた。
 昨日、頭突きで叩きおってやった鼻の軟骨。その治療の跡がわかる。
 夜、彼を見た時は、そんな物はなかったはずなのに・・・・・・
 だが、混乱してる場合ではなかった。
 目の前の『ソフトチェーン』がいる方向以外からガサゴソと草木を押し分けてくる音。 
 『ソフトチェーン』から意識を外さず、そちらにも気を向ける。
 そして、姿を現した3人目の人物。
 そいつは・・・・・・
 いや、そいつもまた『ソフトチェーン』であった。

 「お前等、双子なのか?」

 僕の声に2人の『ソフトチェーン』は、何も答えない。

 

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