魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

ダメージ

 まるで万力で全身を捻じ曲げられ、そのままプレス機で押しつぶされたのような感覚。
 無事な箇所なんて一つもない。体の痛みが熱を帯びて熱くなっている。
 体中にこびりついた汚れ。その下から大量の汗が溢れ出て、泥と交じり合う。
 ドロドロとした感触ですら、今のメンタルでは不快感を感じる余裕が残っていない。
 壊れかけのブリキ人形のように左右のバランスを崩しながら、フラフラと前進を開始する。
 ここまで追い込まれても、僕は死んでいなかった。
 あの瞬間、完全に枯渇したと思っていた。完全に枯渇していた体力。
 でも、僅か一滴ほどに体を動かす体力が残っていたのだ。
 それが、失神しかけていた僕の意思を覚醒させて、体を動かせた。
 少しだけ、ほんの少しだけ跳ねるほどの動作。
 しかし、その僅かな動きが、濁流の直撃を避け、生存を可能とさせたのだ。

 一歩、一歩、体を騙し騙しで歩き続ける。
 僕に攻撃を仕掛けてきた何者か。おそらく、僕の生死は確認できていないはず。
 あの濁流の攻撃は、全てを洗い流さんとする火力重視の魔法攻撃。
 精密性の欠片もなく、ただ真っ直ぐ追いかけてくるというシンプルな攻撃。
 それを食らった人間が『どこで?どうしてるか?』そういう判断が可能という部類の攻撃ではあるまい。
 だから、少しでも距離を開け、隠れなければ・・・・・・
 今は戦える状態ではない。
 しかし、歩くだけの体力も残っておらず、すぐに動けなくなる。
 木の影に体を預けて、息を殺す。 
 休憩で体力の回復?
 馬鹿な。この全身のダメージが、休憩した程度で回復するわけもない。
 このまま目を閉じてしまえば、二度と開くことないのではないか?
 いつ、死んでもおかしくない状態にある。
 だからと言って、今の状況・・・・・・
 僕はどうすればいいのだろうか?

 日は落ち、夜となった森の中。僕は息を潜め、そこに居続けた。
 黒服達からの装備品、バックパックには食料や水分も入っている。
 食料をそのまま口へ含むと戻しそうになる。
 僅かな量を口に入れ、水で溶かしながら、ゆっくりと吸収していく。
 助けは期待するだけ無駄だろう。
 結局のところ、我一人。
 無理でも何でも、体力を回復せさ、戦う他に方法はない。
 だから・・・・・・
 だから、やる。やってやる。

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