魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

ブラックアウト

 森の中を全力疾走で駆け抜ける。
 担いでいた『チェーンソフト』は、既に投げ捨てている。
 僕は草木を左右に飛ぶように避け、走り続けている。
 後ろを振り向くと、草木をなぎ倒しながら、濁流が追っかけてくる。
 その動きは、まるで意思を持った蛇のようだ。
 水が左右に広がらず、蛇の形状を維持した状況で真っ直ぐ、僕を追いかけてくる。
 これが自然現象なはずがない。
 おそらく、これは水系魔法使いからの攻撃。

 「くそッ どうするか?」

 走りながら対策を考える。
 しかし、シンプルな攻撃過ぎて対処方が思い浮かばない。
 現状を把握しよう。
 今、この悪路を走っている僕が濁流に飲まれずに済んでいる。
 という事は時速20キロ以下のスピードだろう。
 その考えると飲み込まれても、無事に済みそうだが、問題は質量だ。
 水1リットルが、およそ1キロと考えて・・・・・・
 あの量、数トンくらいか?
 時速20キロくらいでも、3tトラックと正面衝突したら死ぬだろうなぁ。
 あれ?ヤバイ。走りすぎて、頭の回転が鈍ってる。

 
 「クソがッ 蛇なら蛇行しろよ」

 悪態をついても、何も起こらない。
 策が思いつかない。
 だからと言って、運動能力で状況を打破できる状態でもない。
 気が付けば、完全に詰んでる。

 そして、それは突然にやってきた。
 まるで肺が消滅したかのように急に呼吸が困難になる。
 脳へ送る空気が途絶え、徐々に視界が白くぼやけていく。
 前に出す足が鉛のように重い。
 肉体は活動の限界を迎え、脳の命令を拒否していく。
 まるで自分の体じゃないみたいだ。
 背後から迫り来る轟音。振り向く余裕すら残っていない。

 僕はもう、すでに・・・・・・

 濁流へ飲み込まれる前に気を失っていた。  

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