魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

抱容力

 沈黙。誰も動かない。
 この後、何が起こるのか?誰も理解できる者はいなかった。

 「いつまで私に迷惑をかけるつもりなのかね?」
 「私の行動原理が、貴方への嫌がらせだと?本当に、そう考えているなら相当に頭が悪いのね」

 短い会話ながら、2人の関係性を感じられた。
 2人は知己の間柄だったのか?
 しかし、真理が発する敵愾心は尋常なものではない。
 それに対して、天堂任の反応は、敵愾心を受け流すように緩やかな立ち振る舞いだった。

 「とにかく、一度くらい家に帰りなさい。ママが心配してるよ」
 「母のことを口にしないで」

 ・・・・・・? え? えっと?
 僕の動揺を察したのか、ササッと黒服さんが近づき耳打ちをした。

 「真理さんと天堂任総理は親子ですが、ご存知なかったのですか?」
 「ないですよ!?それ!」

 物語の方向性を根本から揺さぶりかねない新事実だった。
 ここまで壮大に風呂敷を広げておいて、その実、私怨の親子ゲンカでしたって事ならシャレにならないだろう。
 僕の驚きに気をかけたのか、天堂任がこちらへ目をやる。

 「君が天王寺類くんかい?娘が世話になっていると聞いているよ」

  僕は何とか返事を返そうとしてみたが、あまりの動揺からか、うまくいかず曖昧な言葉になってしまった。
 そんな僕に見かねた・・・・・・ というわけでもないだろうが、真理が割って入る。

 「彼は関係ないでしょ?何をしに来たのか答えなさい」
 「父親が娘の様子を見に来るのがおかしいかね?ついでに娘のボーイフレンドがどんな男か気になるのは普通の親心のはずだがね」
 「貴方、自分が普通の父親だと思ってるの?」
 「私は、国の代表である前に、一人の父親だよ」
 「なんて白々しい。不愉快の極みだわ」

 真理は吐き捨てるように言う。確かに、彼女の言葉に含まれる怒気は本物だ。
 私怨だとしても、親子ゲンカの枠で収まる問題ではないということはわかった。
 しかし、混乱してるのも事実。どうすればいいんだろうか?
 まぁ、どうしようもないのだが。
 「ところで天王寺類くん」
 再び、天堂任がこちらへ向かって来る。

 「天王寺類くん。男にとって必要なものとは何かわかるかね?」

 急な謎かけ。真意が見えない。
 言いよどむ僕に、彼は言葉をつなぐ。

 「女性を許す包容力さ。娘と付き合うなら娘を許す紳士になりたまえ」

 そして、彼は右手を差し出す。政治家らしく握手慣れをしてるのだろう。
 両手が破壊されてるはずの僕が、なんら違和感なく右手を彼と同じように差し出していた。

 「娘を頼んだよ」
 「痛ッ!」

 力強く握られ、痛みがぶり返し、声が漏れる。
 しかし、それも一瞬。一瞬で痛み消えた。
 完全に消えた。
 一体、この瞬間でどんな魔法を使ったというのだろうか?
 僕の両手は完治していた。
 腕だけではない。コンカとの戦いで得たダメージの全てが消失していた。
 回復魔法? いや、復元魔法と言ったほうがいいのかもしれない。
 なぜなら、治っていたのは、僕の体だけではなく、身に纏っていた衣服も修復されていたのだ。

 

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