魔法少女はロジカルでマジカルに

チョーカー

オーバーダメージ 

 凌いでいる。 次々に繰り出してくる打撃を凌ぎ続けている。
 まるで暴風に身を晒しているようにで、あらゆる方向から攻撃が飛んでくる。
 打撃が体にまとわりついているみたいだ。
 もう、自分の体で痛みを受けていない場所はないのではないか?
 それほどのダメージ。だが、それほどの攻撃を受けても、自分は立ち続けている。
 いや、立ち続けれている。

 昔、誰かが言っていた。

 『そんなに体を鍛えても銃には勝てないだろ』

 正直、意味がわからなかった。
 強くなるという事は銃に勝たなければいけないと言うことなのだろうか?
 相手が銃を持ってるなら、こちらも銃を持てば良いのではないか?
 おそらく、それを言った本人も深い考えがあったわけではないだろう。
 ただ、僕が気に入らなかったから出た言葉なのはわかっている。
 それが、どこかトゲのようなものになって引っ掛ていた。
 しかし、どうだろう?
 今、僕が相手をしてる少女は、拳銃なんて物より、何倍もスリリングで面白いじゃないか。


 どうやら意識がなくなっていたようだ。
 10秒や20秒と言うわけではないだろうが、数秒間は無意識のままで動き続けていたようだ。
 確か、僕の右ストレートをコンカがしゃがんで避けたところまで記憶がある。
 アゴに違和感。 おそらくは、しゃがみこんだコンカが、そのまま体を跳ね上げての頭突きを叩き込んだのだろう。
 意識が戻った時はコンカが攻めていた。僕の意識が戻るまで待っていたというわけではないだろう。
 よく漫画であるような無意識のままでの戦い。本当にありえるものなのだな。
 僕は両手をコンカの首に巻きつけ、首相撲を行う。
 腕から伝わる、圧倒的な力。だが、僕はその力をコントロールした。
 押さえつけを嫌がるコンカの動きに合わせて力を緩める。  
 コンカは力の消滅に、後ろに倒れるようにバランスを崩した。
 その一瞬で、再び力を入れコンカの体を引き寄せ、投げ飛ばした。

 そして、距離を取る。
 一歩、二歩と後ろに下がり、仕切り直しだ。
 改めて周囲を見回すと、凄まじい光景が広がっていた。
 路上駐車していたらしい車が2台、いや3台は横転している。
 電信柱も折れ、住宅の壁にいくつもの大穴が空いている。
 よく見ると、この付近の家々の窓ガラスは割れているようだった。
 全ては、目の前の小さな少女が繰り出すエネルギーによるもの。まるで、小さな体に竜巻を包含してるようなものだ。
 よく、ここまで無事に戦えていたものだ。
 無事? いや、過剰なアドレナリンの分泌で痛みを感じてないだけだ。
 たぶん肋骨は何本か、いかれてる。
 目は二重にボヤけていて、上下がうまく見えない。眼窩底骨折で眼球が支えを失ってるみたいだ。
 今まで殴り続けてきた両拳も無事ではない。さっきからうまく拳を握れないでいる。
 たぶん、指がいくつか折れているのだろう。
 体の全身から熱が放出されているのは、ダメージによる炎症だろうか?
 よくぞ、よくぞここまで戦えれた。
 自分の両拳を軽く、コツコツと合わせる。これで、握れなかった拳を整える。
 おそらく使えるのは、あと2発程度。
 僕は、この直後に起こるであろう、確かな決着を予感していた。

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