今日お姫様始めました

りょう

第46話 誓いは雪と共に

    第46話 誓いは雪と共に
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「何でそんな事言うんですか!」
突然ミッシェルが声を張り上げた。
「何でって、俺が来なければこんな事起きなかった。それが事実だからだろ?」
「違います! ユウさんは何も悪くありません!」
「何でだよ!」
「あなたが来なければ、この国は変わろうともしなかったんですよ? なのに…そんな事言わないで下さい!」
「あ…」
そうか…、偶然とはいえ俺はこの国の姫として呼ばれた。でもそれは、嫌がらせとかではない。誰かがこの国を変えたいという意志があったから。その想いの形は変な方向になってしまったけれど、俺はこの国を変えていってんだ。失うものばかりですっから忘れてた。それに俺にはまだたくさんやる事がある。簡単に消えようなんて考えている場合じゃない。
「そっか、俺がこの国を変えようとしてんだ」
「そうです。だから諦めちゃだめです!」
「そうだな。俺が間違っていたよミッシェル…」
何で忘れてんだよ俺。
「なあミッシェル、お前はこれから姫になろうとしているんだよな」
「はい。時間がかかるかもしれないですけど、ユウさんと一緒に頑張って行くつもりです」
「そうだよな。俺とミッシェルでこの国を変えるんだよな」
ここまで隠し続けたが、あの戦いの後、見事に男だとばれてしまった俺は、数日後に姫を辞任した。でも家がない俺は、未だにあの部屋を使っている。その部屋もいつかはミッシェルの物になるだろうけど。いや、一緒の部屋になるかもな。
「何変な事考えてるんですか? ユウさん」
「いや、お前との同棲生活楽しみだなって」
「な、な、何を言い出すんですか!」
「あれ? 違うっけ」
「ち、違くはありませんけど」
「じゃあいいじゃねえか」
「や、やめてください!」
「だが断る」
「何でですか!」
「さぁ? 幸せだからじゃね?」
「さ、さ、更に恥ずかしい事言わないでくださーい!」
雪の降りしきるある日。俺は誓った。
ミッシェルと共に、この国を変えようと。二人が生きられなかった分を、俺達が精一杯生きていこうと。
『お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう』
どこか遠くでサラの声が聞こえた気がした。お礼なんて言われる事、俺してないんだけどな…。
ま、気分がいいから、別に構わないか…。

そして俺とミッシェルの物語は、一年の時が進む。
「早くしろよミッシェル、お前全国民を待たせるのか?」
「い、急がせないでくださいよ」
今日は俺とミッシェルの結婚式。
そして、ウマンディア王国第16代姫の継承式。
                                        続く

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