今日お姫様始めました

りょう

第40話 君を守る為の力

   第40話 君を守る為の力
1
私はとにかく走った。息が絶え絶えになりながらも、とにかく走った。私は決めたんだ。ユウさんを守りたいって。彼が私を守ってくれるなら、私も彼を守る。
「邪魔です!」
守る為ならどんな力を使ってでも…。
どんな力でも?
ドクン
(でも、それを使ったら…)
ずっと封印し続けた力。
でもそれだけは…。
ドクン
「うっ…」
でも守りたい。この力を使ってでも。守る為に使いたいこの力。
ドクン ドクン
「う、うわぁぁ」
2
俺は今まさに殺されそうで、覚悟を決めようとしていた。そんな時、ある知らせが入った。
「マルーシャ様、大変です。敵が屋上付近に接近しています」
「もうここまで来たの? それにしては早すぎる! 敵の数は?」
「それがたった一人なんです」
「一人? 何で止められない!」
「それが、あまりに強すぎてこちらも歯が立たないんです」
誰かがもうここまで来てくれたのだろうか?
いや待て、一人? まさか…
「へこたれてるんじゃないわよ! さっさと戦いなさい!」
「無理です。あれはもう、鬼です。我々には歯が立ちません」
「鬼? そんな馬鹿な! もう覚醒したというの?」
ミッシェルだ。あいつ、こんな時に力を呼び覚ましたら、いくら敵国といえど、命が危ない。
バーン
そんな俺の不安をよそに、屋上の扉が爆発した。
「なっ、もうここまで来たというの?」
俺は慌てて爆発先に目を向けた。そこには、いつもの優しい顔ではないミッシェルが立っていた。
「返せ…返せ…」
それはまるで鬼のようで、俺も思わず腰が引けてしまった。
「ま、待ちなさい。あなたが望むのは彼でしょ? か、返すから命だけは…」
マルーシャがミッシェルを静止しようとするが、彼女は止まろうともしない。むしろすごいスピードでマルーシャに突っ込んでくる。
「やめろミッシェル!」
手錠は繋がれたままだが、声は出せるので思いっきり彼女の名を叫んだ。
「誰も…私の…邪魔はさせない!」
駄目か!
「くそ、さっさとこの手錠を外せよ、マルハゲ」
「誰がマルハゲよ! それにあんたは殺されキャァァ」
ついにマルーシャを吹き飛ばしてしまう。馬鹿だろあの女。
「…はぁ…はぁ」
マルーシャを吹き飛ばしたミッシェルは、そのまま俺の元までやって来る。
「ミッシェル、聞こえてるか? 俺の声」
「邪魔……」
駄目だ、理性を失っている。俺の声も届きやしない。
「ちっ、仕方ねえな」
俺は無理やり手錠を外して、いつもの構えに入った。
「命を張っても、守るって決めちったからな」
                                         続く

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