今日お姫様始めました

りょう

第39話 非道の女王

               第39話 非道の女王
1
ユウさんを救出する為に出陣した私達は、敵国領内に入ってから激戦を繰り広げられていた。
「ステラさん、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。ミッシェルさんこそ、先程から休んでいませんよ?」
「私は…平気です」
ずっと戦うわけにはいかないので、馬車からは降りていない。一番安全な場所から離れなければ、いつだって休む事もできる。いわば私達がやっているのは、馬車の護衛。この馬車で突っ切るつもりでいる。
「それにしても無茶な作戦ですよねこれ」
「より安全にする為にアルクさんが考えた方法ですよ?」
「安全は安全ですけど、ステラさんはあまり戦えないんじゃないですか?」
「私も少しは護衛術を身につけていますから」
「相手は剣ですよ?」
「それはミッシェルさんにも言える事かと…」
私達はとにかく前へ突き進んでいる。ユウさんは私が必ず助けてみせる。
2
「はぁ…はぁ…」
「あの時よりは強くなったようだな、偽物のお姫様」
脱獄を成功はしたものの、俺は今絶体絶命の状況だ。
「くそっ!」
「さてと、このまま処刑台に連れていくとするか」
完敗だった。俺は全く強くなれていない。これで何がミッシェルを守ってみせるだよ、ちくしょう。
「さ、こっちへ来な」
手を鎖に繋がれ、引きずられた状態で連れていかれる。こいつ確か、この前対峙したやつか…。
「少し格闘術をかじったぐらいじゃ、プロには勝てないと覚えておくんだな」
俺は何もできずに処刑台へと連れてかれていく。場所は…
「ここは…」
城の最上階。この国全体が見渡せそうな場所。眼下ではウマンディアとラビダスが対決している。そこに微かだが、ミッシェルの姿が見える。
「ミッシェルー!」
俺は叫んだ。彼女の名前を。誰にでも聞こえるような声で…。
もう俺は姫の立場なんか忘れていた。
3
「ミッシェルー!」
声が聞こえた。彼の声だ。
「ユウさん?」
慌てて声が聞こえた方に目をやる。城の最上階だ、小さいがユウさんの影が見えた。 何であんな所に?
「まさか…」
ステラさんが不安そうな声をあげる。
「姫をあの場で殺す気なんでしょうか?」
「え?」
ユウさんが殺される?
「ふふっ、聞きなさいウマンディア王国の哀れな兵士たちよ」
そこに拡声器か何かを持った影がもう一人現れる。
「今からこの姫を、あなた達の目の前で殺そうと思いまーす」
「ステラさん、あそこに居るのは…」
「はい。ラビダス王国の現在の姫、マルーシャ。別名非道の女王」
「あれが…」
非道の女王
どんな者でも、自分が気に食わなければ殺すと言われている者。
「絶対に殺させない」
「あ、ミッシェルさん!」
私は走り出した。 
間に合って。
                                                                 続く

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品