今日お姫様始めました

りょう

第38話 ミッシェルとステラ

  第38話 ミッシェルとステラ
1
そんな可愛らしい彼女を私は信頼していた。この子なら安心してメイドを任せられると。自分の血なんか関係なく、彼女は接してくれると。だから信頼していた。
「姫、私あなたのメイドになれて良かったです」
私と彼女は二人でだいぶ幸せな時間を過ごす事ができ、この時がずっと続けばいいとさえ思った。なのに、世の中は残酷なもので…。
「ミッシェル、鬼の血を引いてるのを隠して、今の今まで過ごしてきたお前を今日をもって王室から追放する」
「そんな…」
「鬼の血なんか関係ないじゃないですか! 彼女は今まで姫としてしっかりと仕事をしていましたよ? それなのに…」
「お前には関係ない事だステラ! 文句あるなら今すぐお前も国から出ていけ!」
そういえばあの時も、必死に止めてくれたな…。けどそれも虚しく、私は王室から追放された。鬼の血なんか関係ないのに…、どうしても私は許せなかった。この国は絶対おかしいと。差別するこの国は腐っていると。だから…。
だからもう一度、時間を置いてあの場所に戻ってやると決めた。
ステラさんの為にも、この国の為にも。
2
「あんたは力が暴走しないと保障できるんか? もしもの事があったらじゃ遅いんや!」
「私は信じます彼女を! それにミッシェルさんには姫がいます!」
まだ続く説得。アルクさんの言う事はもっともなのかもしれない。けれど、私はユウさんを助けに行きたい。彼が私を救ってくれたように、私も彼を救いたい。
「戦わなくてもいいんです。私も連れて行ってください!」
私は必死に頭を下げた。
「……そこまで頭を下げられると、こっちも断りづらいやないか。 分かったわ、あんたを信じてみようやないか」
通じた。私の想いが…。初めて自分の血を信じてくれた。
「ありがとうございます!」
待っててくださいユウさん、必ず助けに行きますから。
3
「それでまた俺に何の用だ?」
「特に用はないわ。まあ一つだけ朗報があるわ」
捕まってから数日、再びあの腹立つ姫がやって来た。
「朗報?」
「あなたの国の軍が、あなたを助ける為に進軍を始めたわ」
「皆が?」
「ええ。だからあなたを今から処刑台に連行するわ」
「処刑台? 何で?」
「あなたを殺すからに決まってるじゃない」
そうか、俺は殺されるのか…。
「って、殺されてたまるか!」
「ぐふっ」
手錠を外された一瞬、ほんの一瞬の隙をついて奴の顎を思いっきり蹴り上げ、気絶させる。
「よし、まずはここから出るか」
俺はこんな所で殺されるわけにはいかない。ミッシェルと約束したのだから。絶対に死ねない。
                                         続く

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