今日お姫様始めました

りょう

第33話 ミッシェルの決意

           第33話 ミッシェルの決意
1
夢の中で見たサラは、恐らく本来の彼女の姿、つまり未来のサラだと俺は思う。そしてあの場所は、未来のウマンディア王国。あくまで推測に過ぎないのだが、絶望的な未来を変えたいと願った彼女は、あの部屋にあった装置を偶然発見したのだろう。そこからどういった手段で、タイムスリップしてきたのかは分からないが、無事この世界にやってくることができたが、そのリスクとして記憶を失ってしまう。体が小さくなったのもその影響であろう。
そう考えると色々辻褄が合うことがある。あの広場に倒れていたこと、子供とは思えない知識(一部欠けてはいるが)、それら全てに説明がつく。
「じゃあもしそれが本当なら…」
「ああ。俺達は彼女の為にも、早く記憶を取り戻して、この世界の未来を変えてあげなければならない」
「でもそれって、簡単な話じゃありませんよ?」
「分かっている。でも俺達がやらなくて誰がやるんだ? これは姫としてではなく、一人の人間として彼女を、未来を救ってやりたい」
「ユウさん…」
これは俺の本心だ。未来の彼女に、あんな想いをさせるくらいなら、俺達が変えてやればいい。
「そしてもう一つ、これはミッシェルに関わる問題なのだが…」
2
「この子の血筋は、実は鬼の血を引いてるんや」
「へ?」
アルクさんにその話を聞いた時は、つい素の俺が出かけてしまった。
「少し前にこの世界に、誰彼構わず人殺しをする鬼神と呼ばれる女がいたんや。その鬼神はウチらが討伐したんやけど、実はそいつ子供を作っておったんや。それが…」
「ミッシェルだというのですか?」
「そうや。だからこの子が王室から追い出されたのも、鬼の血を引いてるからって理由で国民から反感を買い、それがそのまま影響したんや…」
「そんな…」
そんなのミッシェルは何にも悪くじゃないか!
「だからこの子は、本当はもう一度姫として戻りたいんや。それを今の姫のあんたが手助けしてほしいんや」
「なるほど」
「ま、待ってくださいアルクさん、私はそんな事一度も言っていません!」
「言ってなくても行動に出てるんよ。戻りたいと望まない奴がいつまでもこの城に、いやこの国におるはずがないやろ?」
「そ、それは…」
「ウチが話せるのはここまでや。この後どうするかはあんた次第や」

先程の話を思い出した上で彼女に問う。
「で、お前はどうしたいんだ? ミッシェル」
「私は…」
しばしの沈黙。ステラも彼女の答えを待っている。それはそうだよな、ミッシェルの近くに一番いたのはお前だもんな。
「私は…もう一度戻りたい! この国を皆で変えていきたいです!」
                                         続く

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