今日お姫様始めました

りょう

第32話 この国の姫として

  第32話 この国の姫として
1
「ほらもっと気合い入れんかい!」
「すいません」
先程の事を引きずったままアルクさんとの特訓を開始した俺だが、全く力が入ってこない。理由は言わなくたってわかるだろう。
「ほら、隙だらけや」
「ぐほっ」
集中すらできない俺は、顔面にもろ喰らってしまう。
「どうしたんや! 自分から強くなりたいと言ったんやろ? だったらやる気みせんかい」
分かってるさ。しっかりしなきゃいけない事くらい。でもどうしても、修行に身が入らない。
「ユウさん…」
ミッシェルが心配そうに見ている。やべぇ、格好悪いじゃん俺。
「すいませんアルクさんに、気合い入っていませんでしたね私」
「そうや。この前の話を聞いて、もっとあんたには強くなってもらいたいんや。そこのもう一人の姫さんみたいに…」
「え?」
「あ、アルクさん!」
「あ、口を滑らしてもうた」
「ミッシェルさんも使えるんですか? 格闘術?」
「当たり前や。 でなきゃ生き延びてへんよ。それよりもあんた、何でこの子が元々姫だったのを知っとるん?」
「えっとそれは…」
俺は今までの経緯を説明した。
「なるほどな。あんたも知ってしまったんか、この子の秘密を」
「はい」
「じゃあもう一つ、あんたにも知っておいてもらいたい事があるんや」
「私が…ですか?」
「そうや」
「アルクさん!」
「ええんや。あんたがいつまでも一人で抱え続けるのを、こっちはいつまでも見てられへん。この子に助けてもらいなさいな」
2
その日の晩、風呂から出た後、ミッシェルとステラを部屋に呼んだ。
「どうしたんですか姫、こんな時間に呼び出して」
「悪いな二人とも。ちょっと話があって」
「話…ですか?」
「ああ」
アルクさんからミッシェルにまつわるある話を聞いた俺は、この国の姫として今やるべき事を見つけた。それをする為には、二人の協力が必要だ。
「俺はここ数日で、色々な事を知った。どれも俺が想像を超えるものばかりで、正直受け止めるのは辛かった。でもその中で俺は、自分が今すべき事を見つけたんだ」
「今すべき事?」
「ああ。まず一つ、サラの記憶を取り戻し、彼女を元の世界に帰す事」
「え?」
ここで驚いたのはステラ。まあ当たり前か。
「今日ミッシェルとあの部屋に行った時に俺は気づいたんだ。彼女も俺と同じく別の世界…いや、未来の世界から来た人物なんだって」
『み、未来?』
今度はミッシェルも驚いている。流石にここまでは予想できなかったか。
「これは一つの仮説にすぎないんだが…」
                                          続く

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