今日お姫様始めました

りょう

第30話 過去の幸せ、今の幸せ

第30話 過去の幸せ、今の幸せ
1
「なあステラ、過去に自分の幸せを失ったんだよな?」
「はい。二年前の戦、そしてあなたが姫にくる前に起きたある事件によって、私のありとあらゆる幸せを奪われました。それが許せなくて、この王国を更に恨むようになって、姫を…」
「だったら、今度は俺達だけの幸せを作ろうぜ」
「え?」
ステラはキョトンとしている。ま、それも当たり前か。ちょっと言葉が変だからな。
「あ、勿論俺達ってのは、サラとミッシェルも含めての話だぞ」
「あ、ああ、はい」
「確かに過去に失われた幸せは戻ってこないし、奪ったこの王国が許せないのは別に構わない。だけど、お前が今しようとした事はその後の幸せなんて掴めやしないぞ。お前は人から幸せを奪ってどうするつもりだったんだ?」
「それは…」
「答えられないよな。その先の事なんか考えてないからそうなる。もしもう一度、幸せを手に入れたいと望むなら、今度は俺やサラ、そしてミッシェルと作っていけばいいじゃねえか。そうすれば未来だって変えられる」
「ひ…め…」
ステラは今にも泣き出しそうだ。仕方ねえな。
「今日だけウンと泣け。そして明日からはまた新しい毎日を始めよう。な?」
「うわぁぁん」
この日、ステラは今まで我慢してきたであろう涙を全て流した。俺はそれを、優しく見守っていてやった。
2
その日の晩、ミッシェルが突然俺の部屋にやって来た。
「お前、何で俺の部屋を…って、当たり前か」
「元は私の部屋ですから」
ミッシェルは適当な所に腰をかけ、俺はベッドの上に座った。
「で、どうしたんだよ急に」
「素のユウさんと話せるのはここくらいですから」
「まあな」
しばしの沈黙。
少し間が空いた後、俺が先に口を開いた。
「ステラの事か?」
「はい。彼女の側に居るあなたなら、すぐに行動に移ると思ったので」
「お前の言う通りだよ。俺は一晩考えた後、すぐに行動に移った。そこで俺は、お前の事とこの国の事を少し調べさせてもらった」
「それで?」
どうやら自分の事を調べられた事にはツッコミを入れないらしい。恐らく分かっていたのだろう。
「調べている途中にステラに見つかってしまったんだよ」
「え?」
俺は先程までの経緯を説明した。全てを聞いたミッシェルは、涙を流していた。また女性の涙を見る羽目になるのか俺は…。
「まさか…ステラさんが…そんな事を抱えているなんて…」
どうやらステラの過去については知らなかったらしい。それに追い打ちをかけるかのように、ある事件を起こしてしまった自分に罪悪感を覚えているのだろう。
(はぁ…)
この話はまだ終わりが見えそうにないな…。
                                        続く

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