今日お姫様始めました

りょう

第16話 最高の女友達

    第16話 最高の女友達

1
という事で二人で泉を眺めながら軽い昼食。前回のピクニックがまともに出来なかったから、その分らしい。
「ここ、結構落ち着く場所ですね」
「やはりそう思います? 私昔からこの場所が好きで、よく来ていたんですよ」
「へえ、そうなんですか」
ミッシェルと共に過ごす豊かな時間。この時間は本当に幸せで、思わず姿が女である事を忘れてしまう。これが本来の姿だったらどれだけ幸せの事か。でもそれは叶わない。彼女にいくら気持ちを伝えたくても、叶える事は不可能だ。だからある意味では不幸なのかもしれない。でもまあ今は、これでいいか…。
俺はゆっくり目を閉じて、穏やかな水の音を聞いた。
ああ、心地いいよな…。

……
………

「あ、ユウさん、寝てしまいましたね…」
あまりにのどかだったから、眠ってしまったのだろう。一人残された私は、彼女の寝顔を眺めた。何て可愛い寝顔なんだろう。
(でも、何か違うのよね…)
彼女は女性のはず、なのに何か違和感がある。彼女を見るたびに感じるこの違和感、そして胸の高鳴り。何だろう、彼女から男性の何かを感じてしまう。
(まさか…ね)
私は泉を眺めながら、とても静かな時間を過ごした。
2
折角のピクニックを睡眠で台無しにしてしまった俺は、帰り道彼女に頭を下げていた。
「謝らないでくださいよ。私も眠ってしまいましたし」
「それでもやっぱり」
「それに一つ、いい物を見させてもらいましたから」
「いい物? 何ですかそれは」
「ふふっ、内緒です」
「何か気になりますよ、その言い方」
こう彼女と会話をするのは楽しい。でも一つ、調子が狂う事がある。
「あのミッシェルさん」
「はい?」
「そろそろお互い敬語で話すのやめませんか?」
それはお互い敬語で話す事。
「え、でもユウさんはお姫様ですし」
「もう私達は充分友達ですよ? だったらもう敬語は必要ないのでは?」
出会ってから二ヶ月、充分仲良くなった。だったらもうそろそろ敬語は卒業するべきだと俺は思う。立場上俺は、なかなか難しいかもしれないが。
「友達? 私達が?」
「はい」
少し考えるミッシェル。ここまで悩まれると、ちょっとショックだよな。でも俺は、それを望む。少しずつでも彼女との距離を縮めたいから。
「友達…友達。そ、そうだよね。私達、もう友達なんだよね」
「はい、友達です」
どうやら分かってくれたらしい。よかった、これで…。
「最高の女友達だよね、私達!」
まだ解決しなきゃならない壁がありそうだ。
                                       続く

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