今日お姫様始めました

りょう

第11話 楽しいピクニック=絶体絶命

  第11話 楽しいピクニック=絶体絶命

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この国にやって来てついに一ヶ月が経ってしまった。慣れたくないはずのこの生活に、すっかり慣れ始めてしまった俺は、自分が何者か分からなくなってしまった(性別的な意味で)。本当は姫なんてやめたいのだが、方法がどこにもない。完全に手詰まり。さあ、困ったぞって思っていたある日、ステラがこんな事を言い出した。
「今日は天気がいいですから皆でピクニックに行きましょうよ」
最近張り詰めていた俺は、気分転換にいいと思っていたので、承諾。サラとミッシェルを連れて皆で楽しいピクニック! になるはずだった。
そう、なるはずだったんだ。なのに何で…。
「何でこうなるのぉぉ」
「姫、うるさいですよ?」
俺達は山の中で遭難していた。
雪山でもない限り遭難なんてしないはずなのに、俺達は道に迷っていた。
「ねえステラ?」
「えっと、こっちに行けば、あそこに出るはずだから」
「ス・テ・ラ?」
「でもこっちは北だし…。うーん…」
「ス・テ・ラ・さ・ん?」
「ひ、姫。変な殺気出さないでくれませんか? めちゃくちゃ怖いですよ!」
「お姉ちゃん達、喧嘩してないで早く歩こうよぉ」
「ユウさん、ステラさん早くしてください」
「「すいません」」
何でピクニックまでこんな目に合わなきゃならないんだ。ピクニックってのは、楽しむ為にあるものなのに、これじゃ楽しむ事すら出来ないじゃねえか。もう、俺はどこへ行っても不幸な人間だ。

「あのユウさん、私一つ思ったんですけど」
「何でしょうか?」
「一国の姫がこんな所で呑気に遭難してる場合なんでしょうか?」
道なき道をひたすら歩いている途中、ミッシェルがそんな事を聞いてきた。
「た、確かにそうかもしれませんが、遭難したのは私のせいではなく私のメイドのステラさんだと思いますよ」
「ああ、そうでしたね」
「そこの二人、会話が丸聞こえですよ」
原因は完全に彼女にあるのだから、実際俺は何も悪くはない。まあ、ピクニックに行くのは俺もノリノリだったけどな。
これ以上余計なハプニングが起きなきゃいいんだが…。
「あ、あれ?」
「どうしました? ミッシェルさん」
「サラちゃんがどこにも見当らないんですけど」
「え?」
う、嘘だろ。こんな所で迷子になんかなったら…。
「あ!」
更に不運は続く。
「皆さん、隠れてください!」
「え、あ、はい」
ステラに言われるがまま、俺とミッシェル近くの草むらに身を潜める。
「ど、どうしたんですか? ステラ」
「どうやらこれは、かなりの非常事態ですよ」
非常事態? 確かにサラの事は非常事態だが…。
「私達知らない間に敵国の領土に入っていたらしいです」
「え?」
今なんて?
敵国の領土って…。
「私達今見つかったら確実に殺されますよ。しかもあなたが姫だと知ったら尚更」
おいおい、嘘だろ? サラは迷子、今いる場所は敵国の領土、どう足掻いても絶望じゃねえか。
もう、どうして楽しいピクニックがこんな事にならなきゃいけないんだよ…。
                                         続く

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