今日お姫様始めました

りょう

第9話 お風呂場パニック

  第9話 お風呂場パニック

1
名前も分からないという事で、皆でサラと呼ぶことにした。由来は彼女の髪がサラサラしているという単純な理由だ。とりあえず彼女はしばらく国で預かる事にして、今日は解散した。
で、今俺は…。
(今更だが、何で風呂までこのツラつけなきゃならないんだ)
夜中一人風呂をしていた。夜中に入るのは、誰かが入ってくるような事故が起きない為、ツラはその備えだ。
(一度もそんな事件起きてないのになぁ)
ツラは絶対必要ないだろうに…。
ガラガラ
(げっ!)
と思った矢先、誰かが入ってきた。
「あれ? ユウさん、こんな時間に」
しかもそれが、絶賛片思い中のミッシェルという。
「こ、こんばんわ。ミッシェルさん」
外見は女とはいえ、中身は男だ。顔を合わせられない。それに…。
(今湯船から上がったら、完全にばれないか?)
顔は女、身体は男な俺を(普段は服を着たりしているので、誤魔化せてるが)彼女が見たら、一発で分かってしまう。ここはこっそり…。
「そんなに慌ててどうしたんですかユウさん」
ピーンチ! タオルで隠しているとはいえ限界がある。でも焦るわけにはいかないので、冷静に…。
「わ、私もう長い間入っていたので、お先に出ますね」
「え? もう出るんですか? よかったらお話しましょうよ。色々聞きたいですし」
「じゃ、じゃあ私外で待ってますから、そこでゆっくりと…」
「折角ですから湯船に浸かりながらにしましょ?」
うぅ、そこまで頼み込まれると断れないぞ俺…。仕方ない、強行手段だ。
「ご、ごめんなさい!」
「あ、ちょっとユウさん!」
俺は彼女を無視して、お風呂を出るのであった。
(今度謝るから許してくれミッシェル)
2
風呂を出て、部屋に戻る途中俺はある部屋の電気がついている事に気づいた。
(あの部屋って…)
サラの為に用意した部屋だよな? こんな時間に起きてて大丈夫なのか?
気になった俺は、部屋に入った。そこに居たのは、寝ているサラとステラだった。
「お前こんな時間まで子守りしてたのか?」
「あら姫、お風呂の帰りでしょうか?」
「ああ」
入口付近のドアに寄りかかりながら答える。
「この子、結構可愛いですよね」
「ああ」
「まだこんなに小さいのに、記憶がないなんて可哀想…」
「ああ」
確かにこんなに小さい子なのに、名前も分からないなんて、以前彼女の身に何かあったのだろうか? 気になるだろうけど、焦っても仕方がない。
それにしても…
(ステラがサラに向けている目が、まるで母親みたいだな…)
サラをすでに寝かしつけている彼女の目はすごい愛情がこもっていた。本当…
「お前って本当面白い奴だな」
「え? 何ですかいきなり」
「何でもねえよ」
まあ、こいつらしいか…。
                                                                続く

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