今日お姫様始めました

りょう

第7話 義妹

                 第7話 義妹

1
『ねえねえ祐兄』
『何だよ紅葉』
俺には守りたい人がいた。
名前は桜井紅葉。俺の義理の妹。彼女はいつも活発的で明るい性格で、誰からも好かれていた。
『私の事好き?』
『なっ、いきなり何を言い出すんだよ』
『だって私は祐兄の事が好きだもん』
『そ、そうか』
紅葉は俺にとって自慢の妹で、彼女も俺の事を好いていた。血の繋がっていない兄妹なんて関係ない。俺達は本当の家族だったんだ。
だからこそ…。
『お、おい、今何て…』
『だから紅葉ちゃんが…』
もっと早く気づくべき事に気づけず、守るべき者を守る事ができなかったことが、俺の心をどん底に落としてしまった。

「はぁ…」
またあの夢か…。
この世界にやって来てから頻繁に見るようになった、前の世界での記憶。しかも一番思い出したくない事。忘れちゃいけないのは分かっていても、どうしても目を背けたくなる現実。
(紅葉…)
俺の頬には、一粒の涙がつたっていた。
2
この国にやって来てから間もなく二週間が経とうとしていた。相変わらず姫として扱われている俺は、なかなかミッシェルに会える回数が少なく、毎日訳が分からない仕事ばかりをこなしていた。そんなある日、俺は気晴らしにちょっと城の外に出かけていた。言うまでもないが、女装で。
(この姿になれてきた自分に、若干恐怖を覚えるよな…)
かれこれ二週間この姿でいると、次第に体が馴染んできてしまっている。俺は男だってのに。
(ん? 何か騒がしいな)
適当に散歩していると、街の広場が何やら騒がしかった。
(何かあったのか?)
俺は走ってその場に向かった(姫という立場上、放置するわけにはいかないので)。
「何かあったんですか?」
「あ、姫様。実は人が倒れていて、ピクとも動かないんです」
「人が?」
人混みをかき分けて、現場に入る。そこにはうつ伏せで倒れている女の子が倒れていた。まだ子供だろうか?
(ん? 何処かで見た事があるような…)
俺は慌てて少女にかけより、身体を起こしてあげた。そして、その少女の顔を見た瞬間、
「え? も、紅葉?」
俺は今は亡き義妹の顔があった。
「な、何で…?」
子供だからか若干顔が幼いが、どう見ても紅葉だった。
「こ、この子は一旦王国が引き取りますので、皆さんはお戻りになってください」
とりあえず対応策を取り、野次馬を解散させるが、俺はかなり動揺していた。ただ似ているだけなのに…。
「紅葉…」
俺は少女の顔を見ながら、そう呟いた。
まさかこんな所で、会えるとは思っていなかったよ…。
                                         続く

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