今日お姫様始めました

りょう

第2話 もう嫌だこの国

           第2話 もう嫌だこの国

1
ステラというメイドに案内されて、俺は一応自室へと向かった。その間にも散々ステラにドレスを着る事を勧められたが、俺はとにかく断り続けた。男の俺がドレスを着るなんて嫌に決まっている。てか、一生着ない。
で、ステラに案内された部屋はというと、
「完全に女の子の部屋じゃねえか」
「そんなの当たり前じゃないですか姫」
「姫って呼ぶな!」
最悪だ。とにかく最悪だ。俺の人生完全に終わった。
「まあまあ、怒らないでくださいよ」
「いや、怒るに決まってんだろう」
理由もなくこの世界に呼び出されて、いきなり姫呼ばわりされたら怒るだろ。
どうすればここから脱出できるんだ。
「よし決めた、俺死ねばいいんだ」
丁度近くに扉がある。ここから飛び出せば…。
「姫! ここは…」
ステラが止める声が聞こえるが、もういいんだ。姫として暮らすぐらいなら…。さあ、飛び出そうじゃないか、あの大空へ!
「ここは一階ですよ!」
「ぐほっ!」
地面はすぐそこだった…。
2
「痛ぅっ…」
「もう無茶しないでくださいよ姫」
空へ飛び出す事に失敗した俺は、顔面を思いっきり打ち、口の中を切るわ、足を怪我するわでもう最悪な事だらけだ。
「服が汚れちゃいましまね。これでようやく….」
「お前はしつこいよ!」
本当にしつこい。
「なあカステラ、一つ聞いていいか?」
「私はステラです。名前くらい覚えてくださいよ姫」
「覚えてほしいなら俺を姫と呼ぶな」
「じゃあ何て呼べばいいんですか!」
いやそこでキレるなよ。
「それはお前、普通に名前で呼べばいいだろ?」
「名前? 姫には名前があるんですか?」
「当たり前だ!」
こいつ俺の名前自体を姫だと思ってやがる。仕方がない、教えてやるか。
「いいかカステラ、俺の名前は…」
自分の名前を名乗ろうとした時、突然城の外から爆発音が聞こえた。
「ば、爆発?」
「姫大変です。敵国の襲撃です。直ちに出撃準備をしてください」
「分かった…って、今なんて?」
「ですから出撃準備です。これから姫には戦線に立って、戦ってもらいます」
「は?」
出撃?
「何で姫が戦いに出るんだよ!」
「それがこの国の決まりなんですよ」
「どんな決まりだよ!」
あっ、今何となく俺がこの世界に呼ばれた意味を理解した。まさかこの国の姫って、毎回戦いに出されて死んでばかりだから、男の俺を呼んで、姫になってもらったとか…。まさかな。
「なあカステラ」
「さっきスルーしかけたんですけど、その呼び名やめてくれませんか?」
「だが断る」
「ひぇぇ、姫酷すぎです」
俺を姫扱いするお前らの方が、十分酷い気がするが、まあそれはいい。それより、
「俺が国に呼ばれた理由ってさ…」
先程考えた事をカステラに話した。その答えは…。
「大正解~、流石姫です」
「おい!」
何だその不順な動機は。それって明らかにお前らが悪いじゃん。
どうかしてやがる、この国。
                                         続く

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