転生ヒロイン、今日もフラグを折るために奮闘する

神無乃愛

バルトの独白


 ある程度の条件が整うと、アーデルヘイトはあっさりと帰っていった。
「……私の顔で怖がられたの初めてですよ」
「そうよね~。思った以上に変わった子だわ。でも要注意って思っちゃった」
「と、言いますと?」
「何て言うの? わざと私たちの印象に残るために、興味ないふりしたり怖がったりしてるのかしらって」
 母親の言葉に、バルトは少しばかり考える。
「母上の言葉が真実だとすると、彼女はわざと、、、生徒会役員を蹴ったり、王族が出張ったりするくらいまで我が侭を言ったと」
 それが本当だとしたら、稀代の悪女だ。
「その可能性も捨てきれないってこと。でも、魔力はすごく綺麗なの。だから違うとも思うんだけど」
 様々な人物を見てきた母ですら、迷う人物だというのか。
 確かに、彼女は不思議な部分が多い。燕王国で男性に施されているという『宦官』。これを知る人間かこの国にどれくらいいると思うのか。
 神殿にいるバルトたちと燕王国と密接なつながりのある一部の爵位持ちくらいだろう。

 どちらにも当てはまらないはずのアーデルヘイトが、それを知っていたのである。
 そして、燕王国原産の「タケノコ」。この調理方法を知っていたという事実。

 母親が燕王国出身なのかとも思ったが、どうやら違うらしい。

 怪しいと言えば怪しい。だが、父親は全く気にしていない。
 誰か、、を通じて彼女と面識がある。それが理由だ。そしてその人物を父親が明かすことはない。
「……王族にゆかりがある?」
 それも考えられなくはないが、だとしたらあえて学院で役員の話をしなくてもよかったはずである。
「バルちゃん。考える時の癖って、旦那様にそっくりよね!」
 うふふ、と笑う母親にバルトはため息をつく。

「兄上、彼女は風変りだから深く考えない方がいい」
 裏からこっそり見ていたカスペルが呆れていた。
「風変り?」
「うん。竹林近くのあばら家が彼女の寮。それに異を唱えることもないし、少しばかり裏手に畑を作っているという噂もあるし」
「……貴族令嬢だよね?」
「貴族令嬢だよ。一応。ヘルトの情報だと、走る馬車から飛び降りようとしたらしいし」
「……はぃ!?」
「止めなかったら本当に飛び降りていただろうって。『死にゃしない』って言いきったらしいし」
 その後別の機会になるが、アーデルヘイトは走っている馬車から飛び降りたという。

 それを人は規格外と呼ぶ。

「……面白そうな子ですね」
「兄上」
「バルちゃん」
 ああいう子はなかなかいない。たとえ計算ずくだとしても。

「やっば。兄上が興味持っちゃったよ」
「アーデちゃんが神殿に入ってくれるためにはいいんだけど、話してちょっと怖かったのよね」
「……だからお茶に誘ったんですか」
「そそ。そうすればアーデちゃんの性格ももっと分かるかなって」
「絶対謎が深まるだけですよ、母上」
 しみじみと母と弟がささやきあっていたが、バルトは無視した。


 そして帰ってきた父に「お前もか」と呟かれたこと自体が不思議だった。

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