転生ヒロイン、今日もフラグを折るために奮闘する

神無乃愛

ゲーム内容を回想してみる

 思い出してみようか。あの難易度の高いゲームを。そもそも、前世で一度もプレイしていないゲームである。妹がゲームをやりながら一喜一憂するのをそばで見ていただけだ。
「お姉ちゃんは恋愛に疎い」
と言ってくれた妹をアーデルヘイトは懐かしく思い出す。どうせなら、己もやっておけばよかったと。

 アーデルヘイトこと、アーデルヘイト・ファン・フェーレンは主人公の名前だったと記憶している。そして、平民の母と貴族の父親を持つということで、平民出身からも貴族出身からも疎まれていた。
 異母姉とは数ヶ月しか歳は離れておらず、同じ年に魔法学院に入学する。異母姉や貴族子女からの嫌がらせもあったが、不思議だったのは平民出身の女生徒からまで嫌がらせを受けるという、どうしようもない設定だったはずだ。「よほど性格の悪いヒロインじゃないの?」と妹に言って、かなり怒られたのは懐かしい記憶である。一応、主人公の性格は「健気」だったはずである。

「健気」にも女生徒からの嫌がらせを耐え、恋愛していくというシナリオだったはずだ。
 しかも恋愛対象は生徒だけに留まらず、教官や騎士に王侯貴族、果ては一介の商人や留学生まで多岐に渡る。勿論性格も様々で、妹曰く「ヤンデレ、ツンデレ、ショタにテンプレまで色々おるでよ」との事だった。
 しかもこの乙女ゲー、アーデルヘイト編の隠しシナリオを含む全てのシナリオをオールクリすると、前回嫌がらせの主犯に近かった異母姉コーネリア編を楽しむことが出来、それをクリアするとリンダという平民のシナリオも遊べるという。そして、その三人全てをクリアすると三人それぞれのハーレムルートを楽しむことが出来るという、乙女ゲーファンを狂喜乱舞、もしくは泣かせる仕様となっていた。
 とどのつまりは「嫌いなキャラクターも操作しないと、お楽しみが見れないよ」という事なのだ。

 恋愛偏差値は幼稚園児並みと言われた前世の記憶。だったら、恋愛せずにのんびり進もうか、そんなことをアーデルヘイトは思った。


 ゼルニケ王国とその周辺、それからこの世界観に関してアーデルヘイトは必死に思い出す。
 ゼルニケ王国は前世で言うところの「オランダ」に似たところがあり、春になればチューリップが街中を彩る。中世ヨーロッパに似た街並みを彷彿とさせるが、下水など衛生管理は現代に近かった。そして、周辺の国はそれぞれ、フランス、イタリア、イギリス、ドイツ、中国に似た国があったが、留学生が関わるくらいでそこまで描かれていなかった。
 ヨーロッパに近い雰囲気なのに、何故か竹林があったりと頭を傾げた記憶がある。

 魔法に関しては、誰しもが使えるものとして記載されていた。ただ、平民のほとんどが土、もしくは火属性の魔法しか使えないのだが、王侯貴族は光や闇、といった魔法も使える。
 魔法は土、火、水、風、光、闇、の六属性があり、王族は最低でも三種類に適応でき、平民はほとんどが一属性で、稀に二属性持ちがいるくらいだ。
 子供が十歳になると適応属性を調べることが義務付けされており、これを怠った場合は最悪は牢獄行きとなる。
 二属性以上の適応がある者は十五歳になると「王立魔法学院」への入学が許される。
 平民は授業料免除となるが、将来は王家のために働くこととされている。

その魔法学院と社交界や王都を舞台に、三年かけて恋愛を楽しむはずだ。

 ざっと思い出しただけでこんなものである。

 そして、現在アーデルヘイトは七歳。人生の分岐点その一だ。最悪の分岐点を選んでしまったと後悔しているが。
 何せ、分厚い「恋愛指南書」とされる攻略本の中で、アーデルヘイトは七歳の時に孤児院から父親に引き取られることになってる(つまり、この状況こそ、話の始まりともいえる)。使用人や義家族からの嫌がらせを受けながらも「健気」に育った心優しい少女、という設定だ。
 これ、おかしいじゃん。そう妹に突っ込みを入れたのは懐かしい思い出である。そんな家庭環境でひねくれずに育つ人間は聖女だと。

 この世界でのアーデルヘイトはひねくれ者に決定、と。
 己のことでありながら、アーデルヘイトはそう結論付けた。

 今まで思い出したことが正しいとするならば、現在アーデルヘイトがいる場所は王都のはずである。出身は王都、育ちは王都の外れにある小さな孤児院である。
 アーデルヘイトの家は王都に一箇所と領地に一箇所、そして別荘が三箇所だ。とするなら、王都の家にアーデルヘイトは世話になるのだろうと思っていたら、領地の家に行くという。
 外聞を気にしたのかと思っていたが、田舎暮らしを嫌う異母兄姉が住んでいるため連れて行かなかっただけだというのはあとで知ることになる。

 おんぼろ馬車に揺られること一月、やっとアーデルヘイトは領地の館へ到着した。

 あとは、野となれ山となれ。そう思って屋根裏部屋の粗末なベッドに横になった。

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