転生ヒロイン、今日もフラグを折るために奮闘する
フラグその2 フェルフーフ兄弟 1
入学式も近づく頃には孤児院と何度も行き来し、それなりに充実した生活を送るようになっていた。
「お前か。四属性も持ち、しかも闇属性持ちは」
「? それが何か?」
「闇とは忌々しい。あのような穢れた属性魔法など……」
「お言葉を返すようですが」
いきなり言いつけた男を、アーデルヘイトは睨んだ。
「光あれば闇が出てきて当然じゃないんですか? 馬鹿なこと言わないでください。それとも『安らぎ』が要らないと仰るのですか?」
「な!?」
「幼年学校でも習う基礎でしょう? 幼年学校からやり直したらいかがですか」
それだけ言うと、アーデルヘイトはその場を去った。
孤児院の子供たちに次は何を教えようか。それを考えるだけで、アーデルヘイトは楽しかった。
後姿を睨みながら、アンドリース・レクス・エーヴェ・フェルフーフは思わず舌打ちをした。
今年の入学試験で、本来であれば一位はあの、アーデルヘイトだったという事実を突きつけられたのは、つい最近だった。己の家が侯爵位をもつからこそ、新入生代表挨拶はアンドリースになっただけだと。
「レクス」
「兄上!」
「今のはお前の方が悪い。闇属性が嫌われるのは、死者への福音を施せるのが闇属性持ちにのみ許された特権だからだ。そして、王家の力を抑えることの出来る唯一の属性。だからこそ、王家と神殿から逃れることが出来ない。
……闇属性もちはただの生贄だ」
「しかしっ!」
アンドリースの兄、ドミニクスはそんな弟を見てため息をついた。
「お前は稀有な四属性持ちと言われ、ちやほやされすぎだ。数百年に一度、王家には五属性持ちも産まれる。それと比べられたいか?」
「それとこれとは違いますっ」
「同じだよ。彼女の母は平民出身らしいし。フェーレン家の人間でなければ新入生挨拶は彼女だっただろうね」
「……フェーレン家の娘は一人だけでは?」
「あぁ。あのコーデリア嬢か。アーデルヘイト嬢はこの学園に入るためだけに認知された少女だよ」
呆れたようにドミニクスが言う。
「私はあの子を追うよ。どこに行ってるか気になるしね」
そして、ドミニクスはいなくなった。
やはり、孤児院の子供たちと一緒にいると、時間が経つのを忘れてしまう。
アーデルヘイトは夕飯をご馳走になったあと、門限のために慌てて帰ることになった。
ヤンも卒業生ということで、そのあたりは詳しいらしく「片付けはいいよ」と優しく言ってくれた。それに甘える形だが、仕方あるまい。
「走っていたのでは、門限に間に合いませんよ。お嬢さん」
高貴そうな男が孤児院の敷地を出てしばらくしたところで、声をかけてきた。
「朝は弟が失礼しました。私はレクス、アンドリース・レクス・エーヴェ・フェルフーフの兄、ドミニクス・ヘルト・エーヴェ・フェルフーフと申します。いきなり声をかけてしまいましたが、当家の馬車であれば、門をあっさり通してくれますから乗ってください」
「お断り……」
「門限を破ってしまえば、こちらにこれなくなる可能性がありますよ? 不本意かも知れませんが、どうぞ」
そう言って無理矢理アーデルヘイトを馬車に乗せた。不本意なのは、そちらだろう。アーデルヘイトはそう思った。そう感じさせるだけの不服感が御者などからひしひしと伝わってきた。
「お前か。四属性も持ち、しかも闇属性持ちは」
「? それが何か?」
「闇とは忌々しい。あのような穢れた属性魔法など……」
「お言葉を返すようですが」
いきなり言いつけた男を、アーデルヘイトは睨んだ。
「光あれば闇が出てきて当然じゃないんですか? 馬鹿なこと言わないでください。それとも『安らぎ』が要らないと仰るのですか?」
「な!?」
「幼年学校でも習う基礎でしょう? 幼年学校からやり直したらいかがですか」
それだけ言うと、アーデルヘイトはその場を去った。
孤児院の子供たちに次は何を教えようか。それを考えるだけで、アーデルヘイトは楽しかった。
後姿を睨みながら、アンドリース・レクス・エーヴェ・フェルフーフは思わず舌打ちをした。
今年の入学試験で、本来であれば一位はあの、アーデルヘイトだったという事実を突きつけられたのは、つい最近だった。己の家が侯爵位をもつからこそ、新入生代表挨拶はアンドリースになっただけだと。
「レクス」
「兄上!」
「今のはお前の方が悪い。闇属性が嫌われるのは、死者への福音を施せるのが闇属性持ちにのみ許された特権だからだ。そして、王家の力を抑えることの出来る唯一の属性。だからこそ、王家と神殿から逃れることが出来ない。
……闇属性もちはただの生贄だ」
「しかしっ!」
アンドリースの兄、ドミニクスはそんな弟を見てため息をついた。
「お前は稀有な四属性持ちと言われ、ちやほやされすぎだ。数百年に一度、王家には五属性持ちも産まれる。それと比べられたいか?」
「それとこれとは違いますっ」
「同じだよ。彼女の母は平民出身らしいし。フェーレン家の人間でなければ新入生挨拶は彼女だっただろうね」
「……フェーレン家の娘は一人だけでは?」
「あぁ。あのコーデリア嬢か。アーデルヘイト嬢はこの学園に入るためだけに認知された少女だよ」
呆れたようにドミニクスが言う。
「私はあの子を追うよ。どこに行ってるか気になるしね」
そして、ドミニクスはいなくなった。
やはり、孤児院の子供たちと一緒にいると、時間が経つのを忘れてしまう。
アーデルヘイトは夕飯をご馳走になったあと、門限のために慌てて帰ることになった。
ヤンも卒業生ということで、そのあたりは詳しいらしく「片付けはいいよ」と優しく言ってくれた。それに甘える形だが、仕方あるまい。
「走っていたのでは、門限に間に合いませんよ。お嬢さん」
高貴そうな男が孤児院の敷地を出てしばらくしたところで、声をかけてきた。
「朝は弟が失礼しました。私はレクス、アンドリース・レクス・エーヴェ・フェルフーフの兄、ドミニクス・ヘルト・エーヴェ・フェルフーフと申します。いきなり声をかけてしまいましたが、当家の馬車であれば、門をあっさり通してくれますから乗ってください」
「お断り……」
「門限を破ってしまえば、こちらにこれなくなる可能性がありますよ? 不本意かも知れませんが、どうぞ」
そう言って無理矢理アーデルヘイトを馬車に乗せた。不本意なのは、そちらだろう。アーデルヘイトはそう思った。そう感じさせるだけの不服感が御者などからひしひしと伝わってきた。
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