二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?
第63話 拷問の閉幕
「皆で見れるものにしたいが、セラフィ。何かみたいのある?」
「わたくしですの?」
「あぁ」
せラフィが見たいって言ったんだからどうせならセラフィが見たいものにしよう。
俺が選ぶとなると、どうしてもアニメとか特撮ものになると思うし。
「そう……ですわね」
そう言うとセラフィは、興味深そうに上映作品が貼ってあるポスターなり、予告映像なりを観て回る。
目は爛々としていて初めて映画館に来た幼女みたいだった。
しかし、その実態は初めて映画館に来た3次元(笑)の女子高生(笑)だ。
「セラフィさんはどういうの観たいですか?」
どれを観ようか迷っているセラフィに霧咲が声をかける。
初対面でセラフィ相手に怒鳴った霧咲だったが、体育館の時と言いコスプレ店の時と言い、霧咲はすぐに忘れるというか、切り替えが早いやつだ。
だからこうして怒鳴った相手に対しても霧咲はこうして話しかける事が出来るのだろう。
「せっかくなので、これぞ映画って言うものが観たいですわね」
「これぞ映画!ですか。うーん。そうですねぇ」
「出来れば人が死んだりするのは観たくは無いのですけど」
「そうですねぇ……迫力を求めるのならス〇ーウォーズと言ったSF物なんですけど、人がたまに死んじゃいますからね」
「霧咲さんはどう言った物を観られるんですか?」
「私ですか?私は……あっ!せラフィさん!」
「なんですの?」
「これぞ映画!ですよね?」
「はい。できれば……ですけど」
「カップルで観るのならこれがいいですよ!」
「か、カップル!?べ、別にわたくしとようたはそのような関係ではないですわ!」
「でも今日はデートなんですよね?」
「そ、そうですけど」
「これを見ればデートの定番!と言っても過言ではないです!」
「そうですの?」
霧咲が何か熱くセラフィに映画について語っている最中、俺は智和にゴスロリの格好をさせた張本人である柏木に深く事情を聞くことにした。
「どうして智和はゴスロリのコスプレをしてるんだ?」
「似合ってるでしょ?」
「…………」
まじまじとゴスロリのコスプレをしている智和を見る。
全身真っ黒な衣装で男特有のゴツイ身体のラインを隠していて、少し厚めの黒いストッキングが妙に色っぽい脚を演出している。
顔も俺なんかより美形だからか、少し化粧をしているその顔は知り合いじゃなかったら女の子と見間違えるほど可愛かった。
つまり……
「おい。まじまじと見るなよ!恥ずかしくだろうが!」
「めっちゃ似合ってる!!」
とてつもなく可愛いゴスロリの女装男子がそこには居た。
「でしょ?」
「姐さんまじパネェっす!!」
柏木の以外な才能だな。
普通の男子高校生をキュートでラブリーなゴスロリ美少女にさせるなんて。
これ普通に写メとか撮ったら売れるんじゃ……。
「おい陽向!なんだそのネットにでも上げればネットアイドルデビュー出来て売れそうだなっていう顔は!」
「い、いんや?そんな顔はし、してないぞ?」
「めっちゃ動揺してんじゃねーか!撮らせねぇからな!撮らせねぇ!」
「安心しろ瀬尾。バックアップは家に帰ったら速攻でやるから」
「え、ちょ柏木さん!?いつの間に!?」
スマホをドヤ顔で持っている柏木がゴスロリの格好をしている智和の写メを見せてくる。角度ポーズ、全てをとっても完璧な写メだった。
「流石だぜ!」
「陽向くん。さっきから誰と話しているんですか?」
「ん?柏木と智和だけど?」
「あれ柏木さん?」
「よ。篠原」
「今日遊べれなかったのは関くんと遊ぶためだったんですね」
「まぁね」
「でもあれ?その関くんは……」
「桃。これだよこれが智和」
「え?!この可愛らしい女の子が関くん!?」
「辞めて!俺を見ないで!篠原さん!!」
智和のゴスロリコスプレに驚きを隠せないのか、目を開きまくっている桃。
まぁ、その反応は分かる。
「よ、ようた!」
「ん?決まったか?」
「これを見ますわよ!」
セラフィが持ってきたチラシにはリア充共が観るであろう恋愛ものの映画だった。
☆
休日である今日は館内は混みあっていて恋愛物が上映される3番スクリーンも例外ではなく混んでいた。リア充共によって。
まとまった席を取れなかった俺たちは2人一組の形でそれぞれ席につくことに。
桃と霧咲ペア。柏木と智和ペア。そして唯一の男女ペアである俺とセラフィ。あっ智和は男だった。
「以外だなセラフィが恋愛観るなんて」
「ようたとわたくしは出会って間もないと思いますけど?」
「いんや恋愛ものを観るイメージが無くてさ」
「霧咲さんが勧めたんですわ。デートなら恋愛ですよ!と」
「霧咲らしいな」
「そして、恋愛ものなら必ずと言っていいほどキスシーンがありますから、いい雰囲気になっていたのであればようたとキスをしろとも霧咲さんから教えを……って何でですの!?」
まだ上映が始まってないとはいえ、静かな劇場内ではセラフィの声が響く。周りのリア充共が一斉に振り向いたぞ。
恥ずかしから辞めてくれ。
つか、おい霧咲。何を吹き込んでんだよ。
「まだ、付き合ってすらないと言いますのにいきなりキスだなんて!」
「そこ!?」
思わず声を出してしまった。
キスすること自体に抵抗はないのかよ!
「え?あ、ち、違いますわ!わたくしはようたのとなんかキスなんかしないですわ!」
「俺だってしたくねーよ!誰が3次元(笑)の女の子なんかと!」
「お客様。まだ上映は始まっておりませんが、もう少し静かにお願いします。他のお客様の迷惑にもなりますので」
アイスやパンフレットを売っていたスタッフの方に怒られた。
席が真ん中近くだからめっちゃ恥ずかしい……!!
「すみませんですわ」
「すみません」
「お似合いのカップルさんなので、喧嘩別れなんてしないようにして下さいね」
「「カップルじゃありませんわ(ねーよ)!」」
女性スタッフの気遣いのある余計な一言によってまたしても大きな声を出してしまった。
☆
「今日は楽しかったですわ」
「そりゃ良かった。エスコートしたかいがあったってもんだ」
「映画の後からは篠原さんが仕切っていましたけどね」
「……うるせぇ」
「でも楽しかったですわ!こうして同世代の方たちと遊べたのは!」
映画を見た後、桃の提案で近くの小洒落たカフェで映画の感想を言い合った後、アニメグッズが売ってある店に行き、最後にファミレスで晩飯を済ませた俺たちは別々に分かれた。
俺は成り行きでセラフィと帰ることになって、こうして帰っている。
今日の感想を嬉しそうに話しているセラフィは、本当に今日が楽しかったんだと分かるほどテンションが高い。
「またこうして遊びに行きたいですわね」
物悲しげに言うセラフィ。
さっきのテンションが高いのが嘘のようだ。
「行けるだろ」
そんなセラフィに俺はいう。
「でもわたくしは今まで……何でもないですわ」
きっとセラフィは昔の事を思い出しているのだろう。
せラフィ本人から聞いた嫌われてきた過去のことを。
「あいつらはお前のことは嫌いにならねーよ」
無責任にこういった訳では無い。
ちゃんと根拠があって、俺はこういった。
思い出すのは数時間前の小洒落たカフェでの仲良く話している女の子四人の姿。
どっからどう見ても友達と思える四人の姿を。
「何かしたら嫌いになるとは思うけどな」
「……そうですわね」
無言の時が流れる。
聞こえるのは俺の足音とセラフィの足音だけ。
「ようた」
「ん?」
「あの方たちと、仲良く……なれますか?」
「なれるさ。きっとだけどな」
「そこは言い切って欲しいのですけど」
「責任は持てないからな」
3次元の女の子の責任を持つなんて死んでもやだしな。
「責任は持てないが、うちの部に入らないか?」
「ようたたちの部活動に?」
「あぁ。なんだかんだでセラフィもアニメ知ってたしな。それに、あいつらと仲良くなりたいんなら手っ取り早いだろ」
「ようたたちの部活動に……わたくしが」
「まっ考えといてくれ」
「分かりましたわ」
セラフィが入ってくれるのであれば、部員も増えて晴れて文化祭に部として参加できる。
セラフィもあいつらと仲良く出来るわけだからwin-winな関係になれると思う。
「あ、忘れてましたわ!」
「何を?」
「今日はデートでしたわ!」
「そういやそんな事言ってな」
特にセラフィがだけど。
途中から人数が増えて完全に遊びになってたけど。
「わたくしをバカにしたようたを見返すデートでしたのに……!!」
「本題それだったのかよ」
「楽しかったのでいいですけど」
「それは良かった」
「今度は見返しますわよ!」
「え?またやるの?拷問を?」
「当然ですわ!ようた?拷問とは失礼ですわよ?」
だって俺にとっては拷問なんですけど。
「まぁいいですわ。ではようた今日はありがとうございました」
「おうじゃあな」
☆
「……今日は楽しかったですわ」
陽向と分かれてからもセラフィは今日一日のことを思い出してはニヤけていた。
初めてと言っていいほど同世代の女の子と遊び、同世代の男の子とデートをしたのだから。
「ようたはほんとにわたくしどころか女の子に興味がないのですね。絵の女の子ばかりずっと見ていましたし」
今日一日の陽向を思い出し、イラッとする反面、プレゼントをもらった時のことも思い出しては何とも言えない気持ちにセラフィはなっていた。
「ほんとに不思議ですわ。ようたは」
「ねぇお嬢さん」
「はい?」
「今から遊ばない?」
(またナンパですの?多いですわね)
いつものように断ろうとしたセラフィだったが、今回のナンパ相手もしつこい。
仕方なく、来た道を引き返そうとしたのだが、セラフィが居る場所は細い路地で四人組の男達に囲まれてしまった。
人通りも少なく、暗いせいかいつもより恐怖心が増したセラフィは、初めて男が怖いと思った。
「ねぇ、ほら遊び行こうよ」
「い、いや!離してください!」
「いいじゃん。楽しいからさ。ね?」
「やめて下さい!」
「痛……おい!舐めてんのか!?こっちが下手に出てりゃいい気になりやがってよ!」
「めんどくさいから強引に連れてこうぜ」
「だな」
「辞めて……離して!」
セラフィの声は虚しくも誰にも届かない。
近くにいるのはこの四人組だけ。
「(ようた……!助けて!)」
セラフィが心の中で頼った陽向も今はいない。
朝とは違ってさっき別れたばかりだったのだから。
しかし。
「はぁーーー」
深いため息を俺はついた。
「3次元の美少女って言うのは、路地で絡まれやすいスキルでも持ってるのか?」
俺が目にしている光景。それは、強引に引っ張られているセラフィの姿だった。
よっぽど怖かったのか、目は涙を流している。
「せっかくさっき行ったアニメショップで、みんながいた時には恥ずかしくて買えなかった嫁のグッズを買いに行こうと思ってショートカットしてみたら……」
知らない男ども四人組が俺のことをなんだコイツって目で見ているが関係ない。言いたいことは言わせてもらおうじゃないか。
「そこ、邪魔なんですけど?(すみません道を開けてくれないですか?)あと離せ(可哀想なんで離してやって下さい)」
「あん?お前この女のなんだって言うんだ?」
四人組の1人が聞いてくる。
俺はただ道を塞いでいるから退いてくれと頼んだだけなのに。
「なんだって、俺は」
人間関係なんてのは1日やそこらで変わるって言うのを俺は知った。
「その女の子が所属する予定の部の部長だけど?」
「は?何言ってんの?」
「コイツ頭おかしいぜ」
「だな。警察呼ばれる前にやっちまおう」
「くたばれ!」
なぜか、襲ってきた四人組の男達に臨戦態勢を取る。暴力は怖いからやめて欲しいんだけど。
「しょうがない。……すたーばーすとすとりーむ!!」
棒アニメキャラの二刀流奥義で応戦する。
早く……早く…!!もっと!もっと早く!!
的確に急所を付いた俺は、なんなく四人組を倒した。
「大丈夫か?」
腰が抜けたのか、地べたに座っているセラフィに声をかける。
「ようた……!」
「うおっ」
勢いよくセラフィは俺の足に抱きついてきた。
「怖かった……!怖かったですわ!!」
セラフィが泣き止むまで、付き添っていた俺は、アニメショップには行けなかった。
☆
休日の明けの放課後。
友人部の部室にノックが響いた。
「どうぞ」
桃が応対し、ノックの主を中へと入れる。
「失礼しますわ」
「セラフィさん?」
「ふぅ。わたくしこの部活動に入りますわ……!」
そう高らかにセラフィは宣言した。
女子3人は部員が増えたことに喜び、さっそくせラフィを席に着かせてはいろいろと聞いていた。
チラリとセラフィが俺を見たが、すぐにそっぽを向いた。なんだよ。
なんだかんだで友人部の部員が一人増えた。
「わたくしですの?」
「あぁ」
せラフィが見たいって言ったんだからどうせならセラフィが見たいものにしよう。
俺が選ぶとなると、どうしてもアニメとか特撮ものになると思うし。
「そう……ですわね」
そう言うとセラフィは、興味深そうに上映作品が貼ってあるポスターなり、予告映像なりを観て回る。
目は爛々としていて初めて映画館に来た幼女みたいだった。
しかし、その実態は初めて映画館に来た3次元(笑)の女子高生(笑)だ。
「セラフィさんはどういうの観たいですか?」
どれを観ようか迷っているセラフィに霧咲が声をかける。
初対面でセラフィ相手に怒鳴った霧咲だったが、体育館の時と言いコスプレ店の時と言い、霧咲はすぐに忘れるというか、切り替えが早いやつだ。
だからこうして怒鳴った相手に対しても霧咲はこうして話しかける事が出来るのだろう。
「せっかくなので、これぞ映画って言うものが観たいですわね」
「これぞ映画!ですか。うーん。そうですねぇ」
「出来れば人が死んだりするのは観たくは無いのですけど」
「そうですねぇ……迫力を求めるのならス〇ーウォーズと言ったSF物なんですけど、人がたまに死んじゃいますからね」
「霧咲さんはどう言った物を観られるんですか?」
「私ですか?私は……あっ!せラフィさん!」
「なんですの?」
「これぞ映画!ですよね?」
「はい。できれば……ですけど」
「カップルで観るのならこれがいいですよ!」
「か、カップル!?べ、別にわたくしとようたはそのような関係ではないですわ!」
「でも今日はデートなんですよね?」
「そ、そうですけど」
「これを見ればデートの定番!と言っても過言ではないです!」
「そうですの?」
霧咲が何か熱くセラフィに映画について語っている最中、俺は智和にゴスロリの格好をさせた張本人である柏木に深く事情を聞くことにした。
「どうして智和はゴスロリのコスプレをしてるんだ?」
「似合ってるでしょ?」
「…………」
まじまじとゴスロリのコスプレをしている智和を見る。
全身真っ黒な衣装で男特有のゴツイ身体のラインを隠していて、少し厚めの黒いストッキングが妙に色っぽい脚を演出している。
顔も俺なんかより美形だからか、少し化粧をしているその顔は知り合いじゃなかったら女の子と見間違えるほど可愛かった。
つまり……
「おい。まじまじと見るなよ!恥ずかしくだろうが!」
「めっちゃ似合ってる!!」
とてつもなく可愛いゴスロリの女装男子がそこには居た。
「でしょ?」
「姐さんまじパネェっす!!」
柏木の以外な才能だな。
普通の男子高校生をキュートでラブリーなゴスロリ美少女にさせるなんて。
これ普通に写メとか撮ったら売れるんじゃ……。
「おい陽向!なんだそのネットにでも上げればネットアイドルデビュー出来て売れそうだなっていう顔は!」
「い、いんや?そんな顔はし、してないぞ?」
「めっちゃ動揺してんじゃねーか!撮らせねぇからな!撮らせねぇ!」
「安心しろ瀬尾。バックアップは家に帰ったら速攻でやるから」
「え、ちょ柏木さん!?いつの間に!?」
スマホをドヤ顔で持っている柏木がゴスロリの格好をしている智和の写メを見せてくる。角度ポーズ、全てをとっても完璧な写メだった。
「流石だぜ!」
「陽向くん。さっきから誰と話しているんですか?」
「ん?柏木と智和だけど?」
「あれ柏木さん?」
「よ。篠原」
「今日遊べれなかったのは関くんと遊ぶためだったんですね」
「まぁね」
「でもあれ?その関くんは……」
「桃。これだよこれが智和」
「え?!この可愛らしい女の子が関くん!?」
「辞めて!俺を見ないで!篠原さん!!」
智和のゴスロリコスプレに驚きを隠せないのか、目を開きまくっている桃。
まぁ、その反応は分かる。
「よ、ようた!」
「ん?決まったか?」
「これを見ますわよ!」
セラフィが持ってきたチラシにはリア充共が観るであろう恋愛ものの映画だった。
☆
休日である今日は館内は混みあっていて恋愛物が上映される3番スクリーンも例外ではなく混んでいた。リア充共によって。
まとまった席を取れなかった俺たちは2人一組の形でそれぞれ席につくことに。
桃と霧咲ペア。柏木と智和ペア。そして唯一の男女ペアである俺とセラフィ。あっ智和は男だった。
「以外だなセラフィが恋愛観るなんて」
「ようたとわたくしは出会って間もないと思いますけど?」
「いんや恋愛ものを観るイメージが無くてさ」
「霧咲さんが勧めたんですわ。デートなら恋愛ですよ!と」
「霧咲らしいな」
「そして、恋愛ものなら必ずと言っていいほどキスシーンがありますから、いい雰囲気になっていたのであればようたとキスをしろとも霧咲さんから教えを……って何でですの!?」
まだ上映が始まってないとはいえ、静かな劇場内ではセラフィの声が響く。周りのリア充共が一斉に振り向いたぞ。
恥ずかしから辞めてくれ。
つか、おい霧咲。何を吹き込んでんだよ。
「まだ、付き合ってすらないと言いますのにいきなりキスだなんて!」
「そこ!?」
思わず声を出してしまった。
キスすること自体に抵抗はないのかよ!
「え?あ、ち、違いますわ!わたくしはようたのとなんかキスなんかしないですわ!」
「俺だってしたくねーよ!誰が3次元(笑)の女の子なんかと!」
「お客様。まだ上映は始まっておりませんが、もう少し静かにお願いします。他のお客様の迷惑にもなりますので」
アイスやパンフレットを売っていたスタッフの方に怒られた。
席が真ん中近くだからめっちゃ恥ずかしい……!!
「すみませんですわ」
「すみません」
「お似合いのカップルさんなので、喧嘩別れなんてしないようにして下さいね」
「「カップルじゃありませんわ(ねーよ)!」」
女性スタッフの気遣いのある余計な一言によってまたしても大きな声を出してしまった。
☆
「今日は楽しかったですわ」
「そりゃ良かった。エスコートしたかいがあったってもんだ」
「映画の後からは篠原さんが仕切っていましたけどね」
「……うるせぇ」
「でも楽しかったですわ!こうして同世代の方たちと遊べたのは!」
映画を見た後、桃の提案で近くの小洒落たカフェで映画の感想を言い合った後、アニメグッズが売ってある店に行き、最後にファミレスで晩飯を済ませた俺たちは別々に分かれた。
俺は成り行きでセラフィと帰ることになって、こうして帰っている。
今日の感想を嬉しそうに話しているセラフィは、本当に今日が楽しかったんだと分かるほどテンションが高い。
「またこうして遊びに行きたいですわね」
物悲しげに言うセラフィ。
さっきのテンションが高いのが嘘のようだ。
「行けるだろ」
そんなセラフィに俺はいう。
「でもわたくしは今まで……何でもないですわ」
きっとセラフィは昔の事を思い出しているのだろう。
せラフィ本人から聞いた嫌われてきた過去のことを。
「あいつらはお前のことは嫌いにならねーよ」
無責任にこういった訳では無い。
ちゃんと根拠があって、俺はこういった。
思い出すのは数時間前の小洒落たカフェでの仲良く話している女の子四人の姿。
どっからどう見ても友達と思える四人の姿を。
「何かしたら嫌いになるとは思うけどな」
「……そうですわね」
無言の時が流れる。
聞こえるのは俺の足音とセラフィの足音だけ。
「ようた」
「ん?」
「あの方たちと、仲良く……なれますか?」
「なれるさ。きっとだけどな」
「そこは言い切って欲しいのですけど」
「責任は持てないからな」
3次元の女の子の責任を持つなんて死んでもやだしな。
「責任は持てないが、うちの部に入らないか?」
「ようたたちの部活動に?」
「あぁ。なんだかんだでセラフィもアニメ知ってたしな。それに、あいつらと仲良くなりたいんなら手っ取り早いだろ」
「ようたたちの部活動に……わたくしが」
「まっ考えといてくれ」
「分かりましたわ」
セラフィが入ってくれるのであれば、部員も増えて晴れて文化祭に部として参加できる。
セラフィもあいつらと仲良く出来るわけだからwin-winな関係になれると思う。
「あ、忘れてましたわ!」
「何を?」
「今日はデートでしたわ!」
「そういやそんな事言ってな」
特にセラフィがだけど。
途中から人数が増えて完全に遊びになってたけど。
「わたくしをバカにしたようたを見返すデートでしたのに……!!」
「本題それだったのかよ」
「楽しかったのでいいですけど」
「それは良かった」
「今度は見返しますわよ!」
「え?またやるの?拷問を?」
「当然ですわ!ようた?拷問とは失礼ですわよ?」
だって俺にとっては拷問なんですけど。
「まぁいいですわ。ではようた今日はありがとうございました」
「おうじゃあな」
☆
「……今日は楽しかったですわ」
陽向と分かれてからもセラフィは今日一日のことを思い出してはニヤけていた。
初めてと言っていいほど同世代の女の子と遊び、同世代の男の子とデートをしたのだから。
「ようたはほんとにわたくしどころか女の子に興味がないのですね。絵の女の子ばかりずっと見ていましたし」
今日一日の陽向を思い出し、イラッとする反面、プレゼントをもらった時のことも思い出しては何とも言えない気持ちにセラフィはなっていた。
「ほんとに不思議ですわ。ようたは」
「ねぇお嬢さん」
「はい?」
「今から遊ばない?」
(またナンパですの?多いですわね)
いつものように断ろうとしたセラフィだったが、今回のナンパ相手もしつこい。
仕方なく、来た道を引き返そうとしたのだが、セラフィが居る場所は細い路地で四人組の男達に囲まれてしまった。
人通りも少なく、暗いせいかいつもより恐怖心が増したセラフィは、初めて男が怖いと思った。
「ねぇ、ほら遊び行こうよ」
「い、いや!離してください!」
「いいじゃん。楽しいからさ。ね?」
「やめて下さい!」
「痛……おい!舐めてんのか!?こっちが下手に出てりゃいい気になりやがってよ!」
「めんどくさいから強引に連れてこうぜ」
「だな」
「辞めて……離して!」
セラフィの声は虚しくも誰にも届かない。
近くにいるのはこの四人組だけ。
「(ようた……!助けて!)」
セラフィが心の中で頼った陽向も今はいない。
朝とは違ってさっき別れたばかりだったのだから。
しかし。
「はぁーーー」
深いため息を俺はついた。
「3次元の美少女って言うのは、路地で絡まれやすいスキルでも持ってるのか?」
俺が目にしている光景。それは、強引に引っ張られているセラフィの姿だった。
よっぽど怖かったのか、目は涙を流している。
「せっかくさっき行ったアニメショップで、みんながいた時には恥ずかしくて買えなかった嫁のグッズを買いに行こうと思ってショートカットしてみたら……」
知らない男ども四人組が俺のことをなんだコイツって目で見ているが関係ない。言いたいことは言わせてもらおうじゃないか。
「そこ、邪魔なんですけど?(すみません道を開けてくれないですか?)あと離せ(可哀想なんで離してやって下さい)」
「あん?お前この女のなんだって言うんだ?」
四人組の1人が聞いてくる。
俺はただ道を塞いでいるから退いてくれと頼んだだけなのに。
「なんだって、俺は」
人間関係なんてのは1日やそこらで変わるって言うのを俺は知った。
「その女の子が所属する予定の部の部長だけど?」
「は?何言ってんの?」
「コイツ頭おかしいぜ」
「だな。警察呼ばれる前にやっちまおう」
「くたばれ!」
なぜか、襲ってきた四人組の男達に臨戦態勢を取る。暴力は怖いからやめて欲しいんだけど。
「しょうがない。……すたーばーすとすとりーむ!!」
棒アニメキャラの二刀流奥義で応戦する。
早く……早く…!!もっと!もっと早く!!
的確に急所を付いた俺は、なんなく四人組を倒した。
「大丈夫か?」
腰が抜けたのか、地べたに座っているセラフィに声をかける。
「ようた……!」
「うおっ」
勢いよくセラフィは俺の足に抱きついてきた。
「怖かった……!怖かったですわ!!」
セラフィが泣き止むまで、付き添っていた俺は、アニメショップには行けなかった。
☆
休日の明けの放課後。
友人部の部室にノックが響いた。
「どうぞ」
桃が応対し、ノックの主を中へと入れる。
「失礼しますわ」
「セラフィさん?」
「ふぅ。わたくしこの部活動に入りますわ……!」
そう高らかにセラフィは宣言した。
女子3人は部員が増えたことに喜び、さっそくせラフィを席に着かせてはいろいろと聞いていた。
チラリとセラフィが俺を見たが、すぐにそっぽを向いた。なんだよ。
なんだかんだで友人部の部員が一人増えた。
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