二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?

ハタケシロ

第78話 文化祭7

「お待ちしていましたよ瀬尾くん」

「えーと確か……深夜…さん?」

「疑問形が気になりますが、……というかボロボロですね」

「ちょっと青春してたんで」

なんで、ここにコイツがいるのかはわからないが、早く押して帰ろう。
智和の怪我も気になるし。俺がボロボロにしたんだけどな。

「最後のスタンプなんですが、ここだけはほかのチェックポイントと違って、ゲームをやってスタンプを押すシステムなんです。本来ならスタンプラリー実行委員会の者とのゲームなんですか、今回は僕と君の対決ということでいいですか?」

「別にいいすけど、なんでですか?」

「僕の所属しているクラスから人員を引っ張ったあげく、この時点で文化王になれなくなった腹いせにですよ」

「?」

「まさかここで思い当たる節がないという反応をされるとは思いませんでしたよ」

そうは言われても思い当たることがないからしょうがない。
人員を引っ張った?何の事だ?
俺がこの何日かの文化祭でなにかしたと言えば、死にものぐるいで働いたくらいだぞ?
途中で真昼さんを拉致ってくるなんて事件が……

「あの!ポンコツぅううう!!!」

なんとなくだが、いやこれ絶対あのポンコツのせいだ!
全て繋がったぞまじで!

「あの……深夜さん?」

「なんですか?瀬尾くん。今更命乞いですか?」

命乞いなんてしねぇよ。
つか、たかがスタンプラリーで命をとる気なのかこの人は。

「いや、あなたが切れるべき人は俺じゃなくて」

「では行きますよ?」

「は……?」

ヒュン。
そうヒュンだ。
風を切る音。
そのヒュンって音が今、俺の耳もとでなった。

「まさか今のを避けるとは」

「まぁ、これでも影で鍛えてるんで」

「ここまでの身体能力とは恐れ入りましたよ」

「つか、深夜さん?」

ブルブルブルブル
めっちゃ足震えてるんですけど。
腰引けまくってるんですけど。

「今ので仕留めるつもりだったのですが、よよよ予定が狂いましたね」

あからさまに動揺している深夜さん。
つか、仕留めるってなんなんだよ。
スタンプラリーだよな?これ。

「くっ、こうなったら奥の手です!」

そう言うと、バンッという音と共にライトが何かを照らし出した。
最初シルエットでしか分からなかったが、残りのライトが何かを照らし出すとそこには、どこかで見たアイドル風の女の子がいた。

「いいですか瀬尾くん。僕はこう見えてオタクなんですよ」

いきなりどうでもいいことをカミングアウトしてくる深夜さん。
まぁ、確かにこの外見でオタクってのは意外感がある。

「彼女たちは僕の所属している3年A組のアニメが好きな女子9人を集めたユニット、Musicです!」

パクリじゃねーか!ってツッコミたい気持ちは抑えよう。

「そして僕はこんなシチュエーションにも憧れていたんですよ」

そう言うと、いきなり曲が流れ始めた。
俺でも知っている。いや、俺でもテンションが跳ね上がる曲が流れ始めた。

「アニソンの曲を歌ってもらいながら戦闘をするということを僕はしてみたかったんですよね」

「羨ましい」

素直に俺はそう思った。
3次元の女の子たちではあるが、歌を歌ってもらいながらの戦闘というのには憧れがある。
くそっ!これが人脈の差か!
深夜さんにはこれくらいのことができるというのか!

俺が心の中で力の差を痛感していると、聞き覚えのある。いや、テンションがガチ上がるBGMが流れ始めた。

「ほーしをまわ、ーせ!」

しかし、その歌声は本家とはかなりかけ離れた歌声で、お世辞にも上手いとは言えない歌声だった。けど、その歌声はどこか応援したくなるような歌声だった。

「って、セラフィじゃねーか!」

俺が大声で叫ぶと、俺に気づいたセラフィが軽くウインクをした。
いやいやいやウインクしたけどなんだよ!
下手すぎるだろ歌!マ〇ロスのライオンをそんな歌声で歌うんじゃねぇよぉおお!!

「陽向さーん!」

「霧咲!」

セラフィだけじゃない。
よく見れば、よく見なくてもあの派手なみてくれからは他の面子も分かった。どこに行ったかのか分からなかったが桃、柏木、霧咲、真昼さんって真昼さん!?

「陽向さまのためなら私、どんな相手でも陽向さまのはんりょ…味方になると決めているのよ!」

今なんて言った?
何も聞こえなかったことにしよう。

「陽向くん!さぁその人を倒してスタンプを押してください!」

「そうだ瀬尾。お前が決めろ!」

まさか、スタンプラリーがこんなにも熱い展開になるなんて思ってもなかったぜ。
ん?スタンプラリーだよな?これ。
なんで熱い展開になんてなるんだよ!

「まぁ、でもこんなにもいい気分で盛り上がれることは他にはない!」

三次元の女の子たちだが、俺の好きなアニソンを歌ってもらって戦闘する。
こんなこれからこの先体験できないようなことをさせてもらってんだ。
燃えないわけがない!

「たかがスタンプラリーと思ってましたけど、ここまできたらその最後のスタンプ押させてもらいます!」

「望むところです」

リト〇バスターズよろしく、どこからともなく放られる武器の中から俺はホウキと傘を手に取った。
いつのまにこんなギャラリーいたんだよ……。

「……ほう。二刀流ですか」

「懐中電灯で俺にかないますか?」

「これで十分ですよ」

両者の応援の歌姫たちが歌うアニソンが最高潮に盛り上がりをかけたところで俺は動いた。

「スターバースト・ストリーム!!」

俺の尊敬する二刀流使い、キリトパイセンに俺はなる!

「目くらましといきましょうか……って、ん?え、あ、あれ?あ、あれ?あちょちょっと待った、ちょっと待って電池が電池がぁあああ!」

俺の放ったソードスキルは深夜さんを宙に舞いあげた。

ドサっという音と共に歓声がわっと響いた。
こうして俺は最後のスタンプを押すことに成功した。

「スタンプラリーなんだよなぁこれ」

俺のつぶやきはこの歓声によってかき消された。
が、この思い出は伝説として残るだろうと俺は思った。

だって、すげぇ形相の先生が俺らを見てるんだもの。

「はぁ、あのバカ共は」

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