俺が少女になる時に

山外大河

8 ミッションスタート

 一時間後、会議室にはギルドの構成員の九割程が集まっていた。
 これ程の人数が集まるのは見た事が無い。
 それほど……今回の事態が深刻ということだろう。

「恐らく伝達で皆知っていると思うけど、この町にアポカリプスが現れる」

 そう言うと周りがざわめきだした。
 当然だ。自覚していても、改めてそう言われると、嫌でも口に出したくなる。

「でもみんな落ち着いて! 今回はあの時とは違う。ちゃんと……勝算もある」

 頑張ってどうにかなるような暴走精霊じゃないって言ってたアポカリプスに……勝算?
 場の更にざわつき加減は更に増す。
 その場に居なかったにしても、アポカリプスの脅威は皆が知っている事だ。
 そうなるのは当たり前だと思う。
 そうしてざわつくギルドの面々に、藤宮はこう語る。

「あの時アポカリプスは、幾つかの魔法具を落として行ったわ。その中の一つがみんなも知っている通り、記憶操作の魔法具。そして二つ目以降も、他に類を見ない様なレアリティーの高い魔法具だったわ。私は、その魔法具のいくつかを受け取っている」

 参戦した人への報酬といった所だろうか。

「その魔法具を使って以前から、対アポカリプス用の魔装具を作成しているわ……それも、アポカリプスに致命的なダメージを与えられる程の一品をね」

 それを聞いて、辺りから歓喜の声が上がる。

「私の貰った魔法具だけじゃなく他のギルドに要請して、保管していたアポカリプスの魔法具や、他のレアリティーの高い魔法具を受け取って作っているから威力は保障するわ。まあ宮代君の魔法少女の魔装具を見れば分かるでしょ?」

「え? 俺の?」

「そうよ。宮代君の魔法少女の魔装具は、対アポカリプス用の魔装具を作っている時に不用になった魔法具の残骸を集めて作った物よ」

「だからあんなに強いのか……」

 っていうか残骸でアレかよ。じゃあメインで作っている魔装具は、藤宮の言うとおりアポカリプスに致命傷を与えるほどほど強力な物なんだろう。
 それにしても、自分達の持っている魔法具を明け渡すねえ……それほど対アポカリプスは、この業界の人達の取って重要な事なんだろうか。
「だから安心して。その魔装具は運良くタイミングが合ってくれたおかげで、出現日時の前には出来上がるから……私達はアポカリプスに勝てる!」

 歓喜の声が大きくなる。
 アレに勝てるっていうんだから、当然だ。

「で、藤宮。俺達を呼んだのは、これを伝える為か?」

 ギルドの構成員の中の一人がそう尋ねる。

「まあ、それもあるんだけど、もう一つ伝える事があるわ」

 もう一つ……恐らく、時雨木葉の事だろう。

「三日後、私達は時雨木葉と接触を試みる」

 藤宮がそう言うと、場が再びざわめきだす。

「あっちが呼び付けたのは宮代君。私達は交渉に出た宮代君をサポートするわ。今日はその作戦会議よ」

 そう言って藤宮は、ホワイトボードに呼び出し場所と思われる所周辺の地図を書き始めた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「じゃ、行きましょ、宮代君」

「分かった、何かあったら頼むぜ」

 作戦当日。学校の七限授業が終わり、俺達は呼び出し場所に向かって歩き出す。
 学校から出る前に折村さんと中村さんも合流したが、三人とは途中で分かれる事になる。
 作戦はいたって単純だ。
 俺が時雨木葉と単独で接触して相手の要求を聞きながら、霊界に負の感情を送りこむのを止めるように説得する。
 危ない状況になったら、俺を助けるために、近くに隠れているギルドのみんなが助けに来て、武力行使で時雨木葉を捕まえる。
 本当に単純……でもこういう単純な作戦が一番効果的なのかもしれない。

「宮代君。危なくなったら絶対に助けるから」

 藤宮達には、ポケットに忍ばせた魔法具を使って危険を知らせる。
 これを使えば、周りの人間にサインを送る事ができる。
 ちなみに普段このポケットには魔法少女の魔装具が入っているんだが、どうせ使わないし、荷物になるから、ミホちゃんにメンテナンスを頼んでおいた。
 あと、随時状況を伝えるためや、アッチの判断で突入する為に、超小型のインカムも一応付けてあるが、ジャミングされる可能性もあるし、あまり期待はしていない。
 おそらくあの時にジャミングしたのは黒竜ではなく時雨木葉だからな。でないと、黒竜出現前にジャミングされてた事に説明が付かないし。
 多分今回もジャミングされると考えて間違いないと思う。
 四人で作戦の確認を行いながら歩いていると、別行動を行う地点まで辿り着いた。

「じゃ、俺はもう行くよ。なんかあったら頼むぜ」

 俺は別れ際にそう言った。

「おう、任せろよ」

「任せてください」

「すぐ助けに行くわ」

 そう言ってくれると、なんだか心強い。

「サンキュ。じゃあこっちも頑張るよ」

 俺はそう言って、駆け足でその場を離れた。
 いざとなったら皆が助けてくれる……だから俺は自分の仕事を全力でこなせ。
 気合い入れろ……宮代椎名!

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