ダークエルフさん、俺の家で和まないでください! ~俺はガチャを回しただけなのに~

巫夏希

エピローグ 戦いの続きといきましょう

 ファンタジア北西に位置する魔王城。
 そこにはダークエルフ、堕女神、戦士、そしてプレイヤーの化身である勇者が魔王の間、その目の前に立っていた。
 扉をゆっくりと開けて、魔王の間へと足を踏み入れる。

「……長かったな、ここまで」

 勇者が言葉を紡ぐ。
 それを聞いたダークエルフは笑みを浮かべる。

「ええ、ほんとうに長かったわ。あの世界から戻ってきて時間がかかったけれど……、何とかここまでやってくることが出来た」

 そう言ったところで、その経験を知らない勇者は解らない。
 勇者はゲームのプログラム通りにしか発言をしないのだから。
 そして魔王の間で待ち構えていた魔王と神官も、それを知っていた。
 ダークエルフと堕女神がやってくることを知っていた。
 魔王は椅子に腰かけたまま、話し始める。

「……ルイスにマリア、久しぶりね。あの世界から戻ってきて以来だから……、どれくらいぶりかしらね。いずれにせよ、この世界に戻ってから私はまた鍛えなおした。この世界を、より良いものにしていくために! それを、どうして理解できないのかしらね。人間は」
「……私もあなたも、プログラミングされた存在だからよ。魔王は勇者に倒される。そうして物語は終わる。物語が終わるまでは、魔王は勇者と戦って、魔王が死ぬまで戦い続けなければならない。……今思えば、あの時、扉を開かないことが正解だったのではないかしら。魔王メイル」
「……それもそうかもしれないね」

 溜息を吐いて、魔王メイルは呟いた。

「でも、そうであったとしても、私の考えは変わらない。この世界を、より良いものにしていく。たとえ創造主が、魔王を勇者が倒すまで物語が終わらないというのであれば、私はそれに抗い続ける。何度でも、何度でも、立ち向かってあげる。それがきっと、新たな物語の始まりだと信じて」




 そうして、魔王と勇者の戦いが幕を開けた。
 あの世界での戦いの続きであることは、勇者は知らない。
 そうして、この戦いの結末がどうなったかということも、今語るべき内容では無い。

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