ロジカリスト(白)
2日目C 考察一(前編)
ともかくあんなメールがあった後じゃ、誰も話なんて聞いてはくれなかった。しっちゃかめっちゃかになり、最終的には半ば強引に幕を閉めるかたちとなった。
すっかり温くなってしまったビシソワーズスープを飲みながら、僕はふとテーブルを見渡した。
今居るのは司さんと小河内さん、それにケイリーに戸塚さんとエレンさんだ。勿論僕もここに居るけれど。
「……何を調べているんだい?」
まず、僕はケイリーに問い掛けた。
「食事中には見ない方がいいと思うけど」
そう言ってケイリーはパソコンの画面を僕に見せてくれた。そこに映し出されていたのは、ずぶ濡れとなっていた女性の遺体だった。そして、その遺体は何処か干からびているようにも見えた。
つまりこれは――。
「彼女の、土生月日の死体」
ケイリーは表情を変えることはなかった。解ってはいたことだけど、解っていても解らないことだってある。一パーセントの『もしかしたら……』が現実に起きることだって。
「彼女の……死体」
「検死は既に済んでしまっているけれどね。犯行時刻は午前一時から午前三時……それでふと思い出したんだが、昨日地震が無かった?」
地震。
そんな揺れていなかったと思うけど、確かに揺れていた気がする。だからそこまで覚えていないけれど、確かに地震はあった。
「……確かにあったね。それが?」
「もしかしたらさぁ、地震と殺人が関係あるのかもしれないね。ずぶ濡れだという点も少し気になる」
「地震と殺人に関係性? まさか、有り得ない」
「ありえないことはありえないよ。もし、それが成立するならば今の技術はもっと衰退していたに違いないし。進歩もしていなかっただろうね」
そう言ってケイリーはパソコンを抱えて立ち上がった。
「おや、何処へ?」
「事情聴取……とは行かないけれど。まあ、自分の部屋で若干の調査って奴かな」
そう言って、ケイリーはひょこひょこと階段を昇っていった。
そうか。あくまでも。
彼女は今、探偵なのだ。
そして、僕は。
それを最大限サポートせねばならない。
だって、僕は付き添いの人間だから、ね。
◇◇◇
「状況を整理しよう」
ケイリーが部屋に戻って開口一番、そんなことを言い出した。
状況、とは。
即ち今までの全員のアリバイも含んだ形である。
「……えーと、つまりこういうことだよね」
そう言ってケイリーは名前を書き出していった。
神凪沙織……午前一時現在、自室にて熟睡。
エヴァン……同様
司源道……同時刻、小河内と縣らとの会議の後食堂にて作業。
鈴生九地……同時刻、古川エレンとともに酒を嗜む。
古川エレン……同様
小河内晃之……司とのアリバイと同様
縣博乃……同様
「さて、ここで十七人居ないとまずいのだが……」
「それなら僕が調べておいたよ」
ここからは僕の出番だ。
まず、一二三さんは昨日は眠っていたらしい。自分の部屋で、ということになるから明確にアリバイは存在しない。戸塚さんも同様だ。
あと小難しそうな坊主の人――名前は大西円行といい、やっぱりお坊さんであるらしい。彼はその時間ならお経を唱えていたとのことで、それは一二三さんが聞いていて寝る前のBGM代わりにしていたとのことだ。
産土さんは昨日は土生さんと一緒にいて……そう。ここがおかしいんだ。
「先に行ってくれ、といったことかな?」
「そうだ」僕はケイリーに先に言われてしまった言葉を、もう一度繰り返す。「先に行ってくれ、と言ったことだ。どうして、それを聞くことができるんだ? それなら、その時間に土生さんは生きていたということになる」
「つまり、産土明がうその供述をしていると?」
「可能性はあるね」
「ふむ。……それじゃ、続きを頼むよ」
すっかり温くなってしまったビシソワーズスープを飲みながら、僕はふとテーブルを見渡した。
今居るのは司さんと小河内さん、それにケイリーに戸塚さんとエレンさんだ。勿論僕もここに居るけれど。
「……何を調べているんだい?」
まず、僕はケイリーに問い掛けた。
「食事中には見ない方がいいと思うけど」
そう言ってケイリーはパソコンの画面を僕に見せてくれた。そこに映し出されていたのは、ずぶ濡れとなっていた女性の遺体だった。そして、その遺体は何処か干からびているようにも見えた。
つまりこれは――。
「彼女の、土生月日の死体」
ケイリーは表情を変えることはなかった。解ってはいたことだけど、解っていても解らないことだってある。一パーセントの『もしかしたら……』が現実に起きることだって。
「彼女の……死体」
「検死は既に済んでしまっているけれどね。犯行時刻は午前一時から午前三時……それでふと思い出したんだが、昨日地震が無かった?」
地震。
そんな揺れていなかったと思うけど、確かに揺れていた気がする。だからそこまで覚えていないけれど、確かに地震はあった。
「……確かにあったね。それが?」
「もしかしたらさぁ、地震と殺人が関係あるのかもしれないね。ずぶ濡れだという点も少し気になる」
「地震と殺人に関係性? まさか、有り得ない」
「ありえないことはありえないよ。もし、それが成立するならば今の技術はもっと衰退していたに違いないし。進歩もしていなかっただろうね」
そう言ってケイリーはパソコンを抱えて立ち上がった。
「おや、何処へ?」
「事情聴取……とは行かないけれど。まあ、自分の部屋で若干の調査って奴かな」
そう言って、ケイリーはひょこひょこと階段を昇っていった。
そうか。あくまでも。
彼女は今、探偵なのだ。
そして、僕は。
それを最大限サポートせねばならない。
だって、僕は付き添いの人間だから、ね。
◇◇◇
「状況を整理しよう」
ケイリーが部屋に戻って開口一番、そんなことを言い出した。
状況、とは。
即ち今までの全員のアリバイも含んだ形である。
「……えーと、つまりこういうことだよね」
そう言ってケイリーは名前を書き出していった。
神凪沙織……午前一時現在、自室にて熟睡。
エヴァン……同様
司源道……同時刻、小河内と縣らとの会議の後食堂にて作業。
鈴生九地……同時刻、古川エレンとともに酒を嗜む。
古川エレン……同様
小河内晃之……司とのアリバイと同様
縣博乃……同様
「さて、ここで十七人居ないとまずいのだが……」
「それなら僕が調べておいたよ」
ここからは僕の出番だ。
まず、一二三さんは昨日は眠っていたらしい。自分の部屋で、ということになるから明確にアリバイは存在しない。戸塚さんも同様だ。
あと小難しそうな坊主の人――名前は大西円行といい、やっぱりお坊さんであるらしい。彼はその時間ならお経を唱えていたとのことで、それは一二三さんが聞いていて寝る前のBGM代わりにしていたとのことだ。
産土さんは昨日は土生さんと一緒にいて……そう。ここがおかしいんだ。
「先に行ってくれ、といったことかな?」
「そうだ」僕はケイリーに先に言われてしまった言葉を、もう一度繰り返す。「先に行ってくれ、と言ったことだ。どうして、それを聞くことができるんだ? それなら、その時間に土生さんは生きていたということになる」
「つまり、産土明がうその供述をしていると?」
「可能性はあるね」
「ふむ。……それじゃ、続きを頼むよ」
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