ロジカリスト(白)
2日目B 事情聴取(中編)
つまりは古川さんのアリバイもあるわけだ。
お互いがお互いを潰すことは、まあ有り得ないだろう。
「……次は私か。一応自己紹介だ。私は戸塚めぐみ。昨日は……そうだな、直ぐに寝たよ。彼らに会ってね」
そう言って僕らの方を指さす。
確かに、あの時出会った。時間は午後十時くらいだったと思う。犯行時間が何時かは知らないが、それも充分なアリバイとなる。
……そうだ。
「そうだ、それよりも殺された時間って何時だか解らないんですか? ……ほら、あの死亡推定時刻は」
「それなら私が既に確認した」
それを言ったのは一二三さんだった。
「私はこれでも医者でね。恐らく死後三時間程は経っているものだと思われるが……」
うん? 言葉を濁したのはなんでだろう。
「どうして、そこで言葉を濁すんだ?」
言ったのは、ケイリーだった。僕もそれを言いたかったけれど、恐らく僕だったらちゃんと答えてくれないような気もする。
「……血がなかったんだ」
「は?」
その言葉に全員の目がまさに点となった。
つまり……どういうことなんだ?
「血が完全に抜き取られていた。完全にだ。完全に血が抜き取られた人間を君達は見たことがあるか? ……すごいぞ、肌が白いというレベルではない。透明なんだよ。もうまるで透けているんだ。肌が白いとは、骨の色の意味かとも思っていたが、否早! そうではなかったんだ」
「ええと、つまり、吸血鬼がこの中にいると?」
「冗談じゃない!」
僕が言った言葉に鼻を鳴らしたのは鈴生さんだった。
確かに冗談を言ってるように見えるかもしれない。
けれど、これは冗談じゃないというのは誰にだって分かっているはずなのに。
「吸血鬼? そんなファンタジーのようなモノが居てたまるか!」
「いいや、吸血鬼はいるよ」
一二三さんに助け舟を出したのはケイリーだった。ケイリーは自分の持ってきたノートパソコンに何かを入力していた。
ケイリーの持つパソコンはまさにエンサイクロペディアである。僕はそれを『エレクペディア』って読んでいる。まさに電子の百科事典だ。だったら電子辞書じゃないかって話だけど、電子辞書よりははるかにマイナーな単語も入ってるし、詳しく載っている。いったいどこから集めたんだ、っていうくらいに。
「吸血鬼はよく燕尾服を着ているとかシルクハットをかぶっているだとか、赤ワインを血のイメージとしているとかあるけど、今の吸血鬼はそんなイメージを覆しちゃう程のものなんだよ。エヴァン、それってなんだと思う?」
「それを僕に聞くのか」
「そうだよ。いいから、さ。なんだと思う?」
こう言われてはもう止まらないので、言わなくてはならない。答えなくてはならない。
「えーと……昼でも活動できる、とか?」
「ぴんぽーん。大正解」
ケイリーは微笑んで、パソコンの画面をスクロールさせていく。
「ただしいろいろ限界はあるけどね。色んなギミックを用いた結果がそれだから、随分とめんどくさいものには変わりないよ」
「……さっきから何をペラペラと。要は、いるのか、いないのか」
「居るよ」
鈴生さんの言葉にあっという間に答えてしまう。それにはリアクションが出来ないくらいのスピードで、だ。僕は慣れているからいいかもしれないけれど、こういう反応って普通ダメだよなあ。
「……この中に吸血鬼が居る、っていうのか?」
「そう。えーと……執事の。だれだっけ?」
「小河内です」
「そうそう、小河内さん。この屋敷に人はどれくらいいる?」
「えーと、そうですね」
小河内さんはすこし右上を見て、言った。
「確か……亡くなった土生様を含めて十八人だったと思います。付き添いの方も含めて、の話ですよ」
「解りました。ということは今ここに十七人居ないとおかしいわけですね」
数える。
確かに、十七人居る。嘘は付いていないようだ。
「……本当だね?」
「私は嘘をついたことはありません」
小河内さんがそう言うと、そうかい、と言ってまたパソコンをスクロールし始める。
「……ケイリー、話のオチがついてないよ」
「え? ……ああ、そうか。話を戻すね。つまりここにいる十七人の内の誰かが……血を欲する吸血鬼な訳なんだ。さっきも言ったけどいろいろと制約があってね。例えば『夜』をイメージした物を常に身に付けていないと行けない、とかね」
夜。
どんなものをイメージ出来るだろうか。
例えば、星や月。夜になると空に輝く。
例えば、黒。色的な意味ではあるが、これもイメージとしては正しいのではないか。
「つまり、そういうことなんだよ。……この中に吸血鬼は必ず居る。そして、土生さんを殺した犯人も、ね」
お互いがお互いを潰すことは、まあ有り得ないだろう。
「……次は私か。一応自己紹介だ。私は戸塚めぐみ。昨日は……そうだな、直ぐに寝たよ。彼らに会ってね」
そう言って僕らの方を指さす。
確かに、あの時出会った。時間は午後十時くらいだったと思う。犯行時間が何時かは知らないが、それも充分なアリバイとなる。
……そうだ。
「そうだ、それよりも殺された時間って何時だか解らないんですか? ……ほら、あの死亡推定時刻は」
「それなら私が既に確認した」
それを言ったのは一二三さんだった。
「私はこれでも医者でね。恐らく死後三時間程は経っているものだと思われるが……」
うん? 言葉を濁したのはなんでだろう。
「どうして、そこで言葉を濁すんだ?」
言ったのは、ケイリーだった。僕もそれを言いたかったけれど、恐らく僕だったらちゃんと答えてくれないような気もする。
「……血がなかったんだ」
「は?」
その言葉に全員の目がまさに点となった。
つまり……どういうことなんだ?
「血が完全に抜き取られていた。完全にだ。完全に血が抜き取られた人間を君達は見たことがあるか? ……すごいぞ、肌が白いというレベルではない。透明なんだよ。もうまるで透けているんだ。肌が白いとは、骨の色の意味かとも思っていたが、否早! そうではなかったんだ」
「ええと、つまり、吸血鬼がこの中にいると?」
「冗談じゃない!」
僕が言った言葉に鼻を鳴らしたのは鈴生さんだった。
確かに冗談を言ってるように見えるかもしれない。
けれど、これは冗談じゃないというのは誰にだって分かっているはずなのに。
「吸血鬼? そんなファンタジーのようなモノが居てたまるか!」
「いいや、吸血鬼はいるよ」
一二三さんに助け舟を出したのはケイリーだった。ケイリーは自分の持ってきたノートパソコンに何かを入力していた。
ケイリーの持つパソコンはまさにエンサイクロペディアである。僕はそれを『エレクペディア』って読んでいる。まさに電子の百科事典だ。だったら電子辞書じゃないかって話だけど、電子辞書よりははるかにマイナーな単語も入ってるし、詳しく載っている。いったいどこから集めたんだ、っていうくらいに。
「吸血鬼はよく燕尾服を着ているとかシルクハットをかぶっているだとか、赤ワインを血のイメージとしているとかあるけど、今の吸血鬼はそんなイメージを覆しちゃう程のものなんだよ。エヴァン、それってなんだと思う?」
「それを僕に聞くのか」
「そうだよ。いいから、さ。なんだと思う?」
こう言われてはもう止まらないので、言わなくてはならない。答えなくてはならない。
「えーと……昼でも活動できる、とか?」
「ぴんぽーん。大正解」
ケイリーは微笑んで、パソコンの画面をスクロールさせていく。
「ただしいろいろ限界はあるけどね。色んなギミックを用いた結果がそれだから、随分とめんどくさいものには変わりないよ」
「……さっきから何をペラペラと。要は、いるのか、いないのか」
「居るよ」
鈴生さんの言葉にあっという間に答えてしまう。それにはリアクションが出来ないくらいのスピードで、だ。僕は慣れているからいいかもしれないけれど、こういう反応って普通ダメだよなあ。
「……この中に吸血鬼が居る、っていうのか?」
「そう。えーと……執事の。だれだっけ?」
「小河内です」
「そうそう、小河内さん。この屋敷に人はどれくらいいる?」
「えーと、そうですね」
小河内さんはすこし右上を見て、言った。
「確か……亡くなった土生様を含めて十八人だったと思います。付き添いの方も含めて、の話ですよ」
「解りました。ということは今ここに十七人居ないとおかしいわけですね」
数える。
確かに、十七人居る。嘘は付いていないようだ。
「……本当だね?」
「私は嘘をついたことはありません」
小河内さんがそう言うと、そうかい、と言ってまたパソコンをスクロールし始める。
「……ケイリー、話のオチがついてないよ」
「え? ……ああ、そうか。話を戻すね。つまりここにいる十七人の内の誰かが……血を欲する吸血鬼な訳なんだ。さっきも言ったけどいろいろと制約があってね。例えば『夜』をイメージした物を常に身に付けていないと行けない、とかね」
夜。
どんなものをイメージ出来るだろうか。
例えば、星や月。夜になると空に輝く。
例えば、黒。色的な意味ではあるが、これもイメージとしては正しいのではないか。
「つまり、そういうことなんだよ。……この中に吸血鬼は必ず居る。そして、土生さんを殺した犯人も、ね」
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