桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第92話 桜華麗に舞い落ちる

          第92話 桜華麗に舞い落ちる

「結心、凛々ちゃん達が迎えにきてるわよ。早くしなさい」
「ふわぁ、今行くよ」
遠くから母親の声が聞こえる。相変わらず我が家は広いため、声を聞き取るのも難しい。
「あ、桜満開じゃん」
ふと窓の外の桜が満開に咲き誇っているのを眺める。
(何か桜島の桜を思い出すな…)
あそこの桜は本当に綺麗だった。冬に見たあの夜桜も…。
「よし、行こう」
僕は一年ほど着ていなかった制服に着替え部屋を出た。
あれから数日が経ち、僕は今日転入生として元居た学校へと登校する。
「ごめん二人とも、待たせた?」
「おっそい結心、新学期早々待たせるなんていい度胸してるわね」
「お兄ちゃん、遅い」
「本当ゆんゆん、人を待たせるの好きだよね」
「だな」
「二人じゃなかった!」
あの学校に戻ることは本当は怖いけど、今の僕には仲間が居るから不安にはならない。
「あなた私の結心を変な呼び方するのやめて欲しいんだけど」
「えー、そんな事言われてもぉ、ゆんゆんは私のものだもん」
「お、お兄ちゃんは私のものですよ!」
「あの、三人とも、そろそろ遅刻しそうなんだけど…」
「「「今はそんなの関係ない(です)!」」」
「いやいや関係はあると思うけど…」
こうして笑ったりふざけあったりする仲間が。勿論和樹やゆりやマリナも大切な仲間なわけで…。
「お前も色々大変だな中村」
「うん…」
今僕はとても幸せな環境の中で生活しているんだって気づかされた。
桜が亡くなって絶望の淵に立たされていた僕を皆が救ってくれた。あれが僕一人だけだったら絶対に乗り越えられなかった。凛々や愛華や小雪や翔平にだって、何度も救われた。そう僕には仲間が居なければ…。
『ゆーちゃん、頑張って!』
「え?」
ふと桜の声が聞こえたやような気がした。
「気のせい…かな」
でも本当かもしれない。だって桜は、いつだって側に居てくれるのだから。
「あ、ゆんゆん、勝手に行かないで~」
「ちょっとお兄ちゃん、待ってよ〜」
「あ、ちょっと二人ともまだ話が終わってな~い」
騒がしい朝の登校道、僕は桜が舞っている青空を眺めながらそんな事を考えていた。
「皆勝手すぎだよ」
「「「あんたが言うな!」」」
今日も明日も明後日も、こうして笑顔で皆が居られる事を心の奥で願いながら…。
 『 桜舞う丘の上で2nd Season』
                                                                    完

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