桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第86話 罪の重さ

             第86話 罪の重さ

1
「ふーん、じゃあこの二人とゆーちゃんは中学校からの親友なんだ」
「うん。小雪と翔平って言うんだ」
「それで、何でその二人が桜島に居るの?」
「え、えっと、それは…」
とりあえず三人を自分の部屋に呼び、世間話でもと思った矢先、一番聞いてほしくない事を聞いてきた。
「あ、ゆりっちは知らないんだね。実はゆんゆんはね…」
「ちょ、ちょっと待ったぁぁ」
いきなり核心を話そうとする小雪を止める。
「何で止めるの?」
「え、あ、いや、だって…」
「私達を置いて行った罪は償ってもらわないと駄目だよ」
「罪? ゆーちゃんに?」
「そう。ゆんゆんはね…」
小雪が話を始める。
2
さっき小雪の目は明らかに怒りに満ちていた。僕が罪を償わなければならないのはよく分かる。それでも僕は、どちらかを選ぶ事なんて出来ない。
小雪達と共に地元へ戻るか
桜島へ残り続けるか
地元へ戻った所で、過酷な毎日が待ち受けているだけ。そんなの嫌に…。
(あ……)
僕はまた逃げようとしていないか。桜島で立ち向かう事の大切さを学んだのに、また逃げようとしている。
駄目じゃん、逃げ出そうとしたら…。僕は過去に立ち向かわなければ、何にも変われない…。
それを桜や桜島の皆が教えてくれた。
僕は逃げてる場合じゃないんだ。
前へ進まなきゃ…。
「ゆーちゃんがそんな事を…」
そんな事を考えている内に、小雪の説明が終わっていた。ゆりは驚きのあまり、次の言葉が出せずにいる。
「ほらゆんゆん、ゆりっち驚いちゃっているよ? それ程の事をしているんだよ」
「中村、お前分かってるんだよな? 罪の重さが」
「分かってるよ。僕は二人を置いて逃げ出した」
「だったら」
「だから僕は、桜島を出る事に決めた」
「え? ゆーちゃん、それはどういう…」
「僕はまた逃げ出そうとしていた。過去のイジメという現実から。二人から。それじゃあ何にも変われてない。桜島で学んだ事を何にも活かせてない。だから今度こそ逃げないって決めたんだ」
「でもそれじゃあ桜ちゃんが悲しむよ」
「いや桜は、寧ろ僕の背中を押してくれる。過去から逃げ出さないでって。だから決めたんだ」
「ゆーちゃん…」
「ゆんゆん…」
「中村…」
「桜島を出て、もう一度だけ立ち向かってみる。今度は小雪や翔平、凛々や愛華が僕のそばにいるから、もう怖くない。僕は沢山の仲間に支えてもらっているんだから」
                                                        第18章 完
                       第87話 揺るぎない決意 へ続く

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