桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第83話 迷い

                      第83話 迷い

1
『二・三日ぐらい滞在するから、よく考えてほしい』
『私はゆんゆんが戻ってくれるって信じてるから』
パンを買うだけ買って二人が帰った後、僕はずっと考え事をしていた。
(これは親からの命令とかじゃないんだ。こんな僕を見捨てないでくれてる親友からの言葉なんだよね…)
桜島から離れたくないのは決まっている。けれど、一度あの二人を裏切ってしまった。それを罪滅ぼしという意味でも、今回の事はよく考えた方がいいかもしれない。
「どうしたんですか結心さん、元気がないですよ」
「お前にしては珍しく元気がねえな、どうしたんだ?」
夕飯の時に考えてしまっていたせいか、秋久さん達に心配をかけてしまった。
「すいません、心配しないでください…」
「昨日はスキー旅行に行くって盛りがってたのに、本当に大丈夫か?」
「本当に大丈夫ですから。ごちそうさまでした」
「あ、結心さん」
「おい結心」
下手に心配をかけたくない僕は夕飯をすぐに食べ終え、そのまま自分の部屋戻った。
(スキー旅行どうしよう…)
少なくともあと二日で答えを出さなければならない。スキー旅行に行くのは、一週間後だから僕の答えによって全てが変わる。
どちらを選んでも、必ず片方を傷つけてしまう。それが今一番怖いこと。だからといって、答えを出さなかったら凛々と愛華の時のように両方を傷つける。それだけはしてはいけないこと。でもあちらへ戻れば、凛々や愛華達とまた同じ時を過ごせるし、小雪達もいる。両親の事に関しては、何とかなるのかもしれない。ただ一つ問題は…。
(またいじめられるのが怖い)
それが原因で桜島に来たんだから、自ら戻るのはかなり勇気がいる。
「ああもう!」
思わず声を張り上げてしまう。
どうすればいいんだ僕は…。
2
その日懐かしい夢を見た。丁度僕と小雪と翔平が出会った時の事。
『私達三人が、修学旅行の班か…』
『だな』
凛々や愛華を傷つけ、一人ぼっちになってしまった中学二年生の秋、修学旅行の行動班で一緒になったのがキッカケだった。
「よろしく…」
僕は誰の班にも入れず、余った班に入れられた。班員は僕を含めて三人。
「冬村小雪って言うの、よろしくね」
「俺は竹田翔平。よろしくな二人とも」
他に班員はいない。どうやら彼らも…。
「僕は中村結心」
皆から省かれてしまった、同じ境遇の人のようだ。
(修学旅行か…。面倒くさいな…)
まさかこの三人がこの後仲良くなるとは思ってもいなかったけど。
               第84話 天才と凡人と変人と へ続く

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