桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第82話 春の嵐来たる

          第82話 春の嵐来たる

1
あれから二ヶ月が経ち三月になった。今日は終業式。春休みが終われば僕達は三年生になる。そして一年後には…。
「卒業後か…」
「それを考えるのはまだ早いんじゃない?」
すかさずゆりのツッコミが入る。敬語で話すのをやめたゆりに対して、最初は違和感を感じてしまっていたけど、今はすっかり慣れてしまった。
「そう言えばさ結心、春休みどこか空いている日ないか?」
「僕は毎日暇だけど何で?」
「春休みに皆で島の外を出て旅行に行こうって思ってんだけどどうだ? あの姉妹も呼んで」
「スキー旅行か…、でもこの時期にやっているスキー場なんてあった?」
「まだ東北地方とかはやってるようだから、そこら辺にしようかなと思ってるんだけど」
「東北って、金結構かからない?」
「そこら辺はご心配なく」
まあ恐らく和樹が何とかするのではなく、お金があるゆりが何かしらの手配をしてくれるのだろう。そうは思っても口に出す事はないけれど…。
「ふーん、まあ任せるけど」
凛々や愛華を呼んでスキー旅行か…。
面白い話かもしれない。
「とりあえずお前は行くって事か?」
「お金の心配がないなら、僕も行くよ」
ゆりやマリナも行くし、思い出作りには丁度いいかもしれない。
充実した春休みになりそうだ。
2
と思っていた昨日の自分が羨ましくなる。今の僕は、とっても最悪な気分になっていた。とうてい春休みを楽しめそうにない。
「おっす中村、久しぶり」
「ゆんゆん、お久しぶり」
原因はこの二人に会ってしまったからだ。
「小雪、翔平。ど、ど、どうして二人が、こ、こ、ここに?」
昼頃に店番をしている時に、やって来た客が、冬村小雪と竹田翔平という中学・高校では同じクラスだった二人。凛々達のことでどうしようもなくなっていた僕を救ってくれた二人でもある。普通なら再会を喜びたいけど、僕達は再会するべきでなかった仲なのだ。
「どうしてってそんなの決まってるよな冬村」
「そうそう。ゆんゆんも分かってるんじゃないかな?」
彼が言っている事に心当たりはあった。でも曖昧な答えを出す。
「まあ、何となくは」
本当はこのまま忘れていたかった。二人に会う事はないと思いたかった。だって…。
「お前を連れ戻して来たからだろ」
「うん」
二人にとって僕は親友でありながから、裏切り者でもあるのだから。
「僕を連れ戻しに?」
「連れ戻しにというよりは、お前自身が帰って来てくれるように頼むの方が近いかな」
「そうだな」
「ねえゆんゆん、とりあえず聞きたい事があるの」
「何?」
「何で私達に黙って転校なんかしたの?」
                                         第83話 迷い へ続く

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