桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第74話 ホワイトクリスマス

            第74話 ホワイトクリスマス

1
そしてやって来た約束の日。前日から雪が降り、僕にとって初めてのホワイトクリスマスになった。
「ゆーちゃん、雪が降ってるね」
「うん。雪が降ってるよ」
「こんな雪の中で桜が見れたら、本当に綺麗なんだろうな…」
窓から見える雪を見ながらそう呟く桜。彼女の体調は悪化する一方で、今日みたいな雪の日に連れ出したら確実に怒られるレベルだった。でも彼女の為なら…。
「という訳で、皆に手伝って欲しいんだけど」
「お前馬鹿なのか?」
まあそれでも、一人では危険なので皆に協力してもらう事に。
「結心さん、いくらなんでもそれはちょっと…」
「結心君、よく考えた方が…」
勿論皆に大反対されてしまった。「分かっているよ。ぼくがやろうとしている事が間違っているのも」
「だったらどうして?」
「約束したから…かな」
「約束?」
僕はこの前した約束を皆に話した。そしてそれに対しての自分の想いも…。
「ったく、お前はそういう事になると、何を言っても聞かないからな」
「そこまで言われちゃったら仕方がありませんね」
「本当結心君は変わってないんだから…」
「皆…」
本当は良くないことだって皆が分かってる。でも桜の為にやるしかない。皆それは同じ気持ちなんだ。
「じゃあ作戦実行は桜の誕生日会終了後、連絡は各自の携帯で」
『了解!』
十二月二十五日、雪の降る聖夜。僕達友人部による桜の為の一大作戦が今始まろうとしている。
2
病院での桜の誕生日会及びクリスマス会が終了し、就寝時間になった。桜を僕が連れて行くので、僕は病室で待機。あとは連絡を待つのみ。
「ねえゆーちゃん、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。僕や友人部の皆がついているから」
「ならいいんだけど…」
「どうしたの?」
「ねえゆーちゃん」
「何?」
桜は窓の外を眺めながらこんな事をつぶやいた。
「私死ぬのかな?」
「え? そ、そんな訳ないでしょ」
「でも残りの命が少ないって」
「それは…」
「自分でも分かるの。もう残りの命が少ない事が」
「だからって、今すぐってわけじゃあ…」
「私今日誕生日だし、死ぬなら今日なのかなって」
どうして桜はこんな事を言うのだろう。皆は生きる事を望んでいるのに、こんな事言うなんて…。
「そんなのってないよ…」
「ゆーちゃん?」
「皆が生きてほしいって願っているのに、桜だけそんな事思っているなんて…」
「べ、別に本気で言ったわけじゃ…」
「簡単に捨てていい命なんてないのに!」
                                             第75話 命 へ続く

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