桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第72話 桜の病気

                     第72話 桜の病気

1
桜の抱えている病気、それは…。
病名不明
「え? それは…どういう事なの?」
「僕もそれを聞いた時はビックリした。医者が色々説明してるのを、秋久さん達と一緒に聞いたけど、全く理解できなかったし…」
桜が入院している時に、改めて桜の病気について説明を受けた(桜が原因不明の病気である事は、夏休みに秋久さんから聞いている)が、全く意味不明だった。でもその中でただ一つ、分かったことがあった。それは…。
「ここまでの症状になると、残りの命も長くはないんだって」
「それってつまり…」
「遠回しに余命宣告されたようなという事」
「そんな…」
桜には言えないが、医者からは次倒れたらもう退院できないかもしれないと言われた。それは悲しずきる現実。信じられるはずもない事。だから僕は…。
「私嫌だよゆーちゃん…死にたくないよ…」
「桜…」
桜に笑っていてほしい。そう思っている。なのにどうして…。
「怖いよゆーちゃん…えっぐ」
そんなに泣かないでほしい。こっちまで…。
「桜…大丈夫だから…僕が側にいるから…」
「ゆーちゃん…」
「だから…頑張ろう…」
「うん」
泣けてくるじゃないか…。
僕だって桜を失いたくない。いつまでも一緒にいたい。病気なんて無くなってほしい。
「桜…」
「ゆーちゃん…」
この日僕と桜は、秋久さん達が帰ってくるまでずっと泣き続けていた。
2
それから更に一週間が経ち、和樹達も修学旅行から帰って来たある休日、僕は不吉な夢を見た。
その夢には、いつも側にいる彼女が居なくて、僕は一人だった。なのに、普段通りの生活をしている。何も変わらない日々を繰り返している普通の夢だ。でも、普通じゃない。そこには彼女がいなかった。僕の大切な存在である桜が…。
「はぁ、はぁ」
どうしてこんな夢を見たのだろうか?何かを予言しているのかもしれない。
「はっ!」
急に不安になった僕は、慌てて部屋を出て桜の部屋に入る。そこには普段通りぐっすり眠っている姿があった。
「はぁ、よかった…」
一安心して部屋を出ようとしたその時、
「ゆーちゃん…助け…て…」
背後から桜の声がして振り向くと、ふらふらになりながらこちらへやってくる桜が居た。
「桜?」
僕が彼女の方へ向かおうとした瞬間、桜はまた力尽きたかのように倒れてしまった。
「桜!」
夢が現実になるのは嬉しい。でも悪夢だけはなってほしくなかった。これは何かの予兆なのだろうか?
「秋久さん、夏美さん!」
僕は倒れた彼女を背負って、慌てて二人を呼んだ。しかし反応がない。
(またどこかへ出かけちゃったのか…。なら僕一人で連れて行くしかない)
秋久さん達はたまに朝早くから出かけている。場所は分からないけど、後で連絡すればすぐに来てくれるはずだ。
僕は着替えを済ませ桜を背負い、病院へと走り出した。
                                                        第15章 完 
                  第73話  桜島の伝説と約束 へ続く

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