桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第71話 退院と修学旅行と診断書

       第71話 退院と修学旅行と診断書

1
それでも何とか十一月に、体調がよくなった桜は退院する事になった。
「いやぁよかったよかった、無事退院してくれて」
「おめでとうございます」
「おめでとう桜さん」
「おめでとう桜」
「皆ごめんね、心配かけて」
ただ完全に良くなったとは言い切れない為、しばらくは自宅療養する事にらしいけど、とりあえず悩みの種が一つ消えた。あとはこのまま何も起きない事を願うしかない。

その帰り道、
「そう言えばさ、結心は修学旅行行くのか?」
和樹がそんな事を聞いてきた。そういえば来週末、僕達は沖縄に修学旅行へ行く事になっている。勿論行きたいのだが、体調の関係上行く事ができない桜の気持ちを考えると、僕だけ行く気が無くなってしまう。秋久さん達はどちらでも良いと言ってはいるけど、僕的には桜を置いては行きたくない。
「多分僕は行かないと思う」
「やっぱりそう言うと思ってたよ。どうせ桜の為だろ?」
「うん」
僕達の前でやたらと騒ぎながら帰っている桜達を眺めながら僕はそう呟く。
「ったく、いくら何でもそこまでしなくてもいいんじゃないのか?」
「まあ確かにそうだけど」
でも…。
「次いつ何が起こるか分からないから、やっぱり側から離れたくないんだよね」
「そんなに桜の体調は悪いのか?」
「うん…」
「そうか…」
和樹達にはまだ話ししていないが、正直な話桜の命はもう長くない。夏休みにそれを知ってしまった僕は、病気のことに関しては何も知らない桜にどう接すればいいか分からなかった。いつか話す時がくるのは知っているけど、その時桜はどんな反応をするのだろうか? またあのときとおなじように…。
僕はそれが怖くなってしまった。
2
一週間後、結局僕は修学旅行には行かずに桜と一緒に家で留守番をする日々を過ごすことになった。
その初日…。
「ゆーちゃん、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「何?桜」
桜は僕の部屋に入ってくるなり、ある紙を机に広げた。
「これはどういう意味なのか、教えてほしいんだけど」
それは病院の診断書。
そしてそこに記されているのは、桜の病名
「ど、どうしてそれを持っているの?」
「家を掃除していたら出てきたの。ゆーちゃん何か大切な事を隠しているでしょ?」
「別に隠してなんか…」
「答えて!」
ああ、ついに話す時が来てしまったのか…。
「分かったよ。僕が知っている限りのことを全て話すよ」
秋久さん、夏海さん、ごめんなさい。
                                  第72話 桜の病気 へ続く

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