桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第70話 責任

                          第70話 責任

1
文化祭が終わってから一週間が経ったが、桜の容態は良くなる事はなかった。
「ごめんねゆーちゃん、げほっ、毎日お見舞いに来てもらって、げほげほ」
「辛そうだから喋らなくていいよ。それに謝るのはこっちの方だし」
「どうして?」
「だって…」
僕が桜の体調を悪化させたと言っても過言ではないからだ。あの時秋久さんの言う通りにしていれば、桜の体調が悪化する事はなかった…。そう、僕は間違ったことをしたのだ。
「ゆーちゃん、どうしたの?」
「あ、いや。何でもない…」
病は気からと言うように、桜に余計な心配をさせたくないので、本人には言えるはずがない。言えるとしたら…。
「あの、秋久さん、夏海さん」
「ん? どうした?」
「どうしました?」
「お二人に話したいことがあるんです」
桜の両親だ。
2
「ああ? 責任だぁ?」
見舞いを終えて宮崎家に帰宅してすぐに、僕は二人に今の僕の心情を全て話した。
今僕は、これまでの事全てに責任を感じてしまっていること。そして、しばらくは学校を休んで少しでも桜のそばに居たいこと。それら全てを…。
「馬鹿かお前は!」
当然のように秋久さんに怒られることになってしまったけど。
「側に居たいってのは分かるが、それが責任を取るためとかだったら俺は許さねえぞ。確かにお前がこの前とった行動は間違いだったかもしれねえ。でもそれは、お前があいつの為にと思ってとった行動だろう。いちいち後悔とか責任とか言ってないで、今自分があいつの為に何が出来るか考えろ」
「秋久さん…」
今自分が桜にできることなんて一つしかない。だったらそれをやればいいだけ…。
「桜はあなたが来ると、必ず笑顔になります。ですから、学校を休んでもいいですから、桜の側に居てあげてください結心さん」
「夏海さん…」
思わず泣きそうになってしまう。でも泣いちゃ駄目なんだ。僕が強くなければ桜が…。
「まあなんだ、完全に休むってわけにはいかないだろうが、なるべくあいつの側に居てやってくれ」
「はい!」
僕はこの時願った。桜の体調が早くよくなってくれる事を。そしてそれは皆の願いでもあった。
3
しかし十月の後半になっても桜の体調は一向に良くならず、毎日のように咳をして高熱を出す日が多く、僕も面会する回数が少なくなってきてしまった。そんなある日の午後、僕は久しぶりに部室に行った。
「え? 僕が現部長なの?」
「この前お前が居なかった時に決めたんだ。よろしくな部長」
「そ、そんな無茶なぁ」
そこで僕は何故か部長代理に任命されてしまった。
桜の事があって忙しいのに…。
       第71話  退院と修学旅行と診断書 へ続く

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品