桜舞う丘の上で2nd Season

りょう

第69話 認め合う心

          第69話 認め合う心

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「私…私…」
泣き続ける桜にどう対応したらいいのか分からない僕は黙っていることしかできない。
「私は一切文化祭に参加できなかったのに、こんなパーティに誘ってくれるなんて思ってなかった。私がしっかりしていれば、クラスの皆や友人部、そしてゆーちゃんに迷惑をかけなかったのに」
「それは違うよ桜」
「どうしてよ? 私が過去を乗り越えていたら、ゆーちゃんは部活を抜けなかったし、謹慎にもならなかった。あの日素直に帰っていれば、体調を崩す事もなかったのよ」
「だから違うってば。誰も迷惑だなんて思ってないよ。体調崩したのはただの偶然だし、謹慎に関しては、桜を守りたくて起こした行動だから、何一つ悪い事なんてない」
「ゆーちゃん…」
それは本当だった。どれも僕自身が桜を守るためにやった結果なのだから、桜に悪い事なんて一つも無いに決まっている。部活を抜けたのだって、僕がとった自分勝手の行動だし…。
「皆だって同じ想いだと思うよ?」
僕がそう言うと、皆は一斉に頷いた。それを見た桜は、更に泣き出してしまう。
「皆…ごめんなさい…ごめんなさい」
「そういう事なら…」
マリナは桜の目の前に立った。何をするつもりだろうか?
「私も、ごめんなさい」
「え?」
何故か謝罪した。あまりに突然の謝罪に皆が理解できずにいる中、、マリナはそれを気にせずに言葉を続けた。
「私ちょっと勝手な事ばかりしすぎちゃった。だからごめんなさい」
「マリナ…」
至って簡易的な謝罪。でもその言葉の中には、これまでの事全てが含まれている様な気がした。
「一つお願いしていいかな?」
「何?」
「私を友人部に入れてください」
マリナは一週間前に勝手に入部宣言をしておきながら、一度も部室には行かなかった。彼女も分かっていたのだろう。自分のやり方が間違っていたと。だから改めて桜に頼んだのだと思う。
それに対して桜の返事は…。
「うん。いいよ」
当然のようにOKだった。
「ありがとう、桜さん…」
二人は握手を交わした。
拒んでばかりでは何も始まらない。大切なのはお互いを認め合う心。桜自身、マリナを拒む理由があった。でも今こうして彼女は、マリナという一人の存在を認めたんだ。これで友人部に起きていた問題も無事解決し、明日から新しい日々が始まるはずだった…。
「あれ? ゆーちゃんはまだ抜けたままだけど戻るの?」
「それは愚問だよ。そんなの戻るに決まってるじゃん」
「あ、そうだよね……」
フラフラ…
バタン
「え?」
桜がこの時倒れさえしなければ…。
「桜!」

この日桜は病院に連れて行かれ、そのまま入院する事となった。
僕のせいだ…。僕が桜を連れ出したから…。命が残り少ない彼女を…。
                                                         第14章 完
                                         第70話 責任 へ続く

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